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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
1年生
52/103

52.初詣準備

 風呂から上がって、タオルを首にかけて居間に戻ると居間では皆が廻醒(かいせい)と月火のパソコンで紅白を見ていた。



 月火がいないと思えば、ダイニングで火音のタブレットで見ているらしい。




 居間からダイニングに行くと月火が火音の食事の前に座ってタブレットを見ていた。




「気分どうですか」

「まぁまぁ」

「ご飯温めますね」



 火音は月火からタブレットを取り返すと、ラップを外す月火にそう言えばと声をかけた。



「お前夏ぐらいに紅白の招待来たっつってたけど。結局断ったんだな」

「よくよく考えれば正月にテレビなんかに出てる暇ないなぁと」

「お前大丈夫かよ」

「いやぁ瀕死ですね」



 ケラケラと笑いながらお盆を持ち上げると、二人の会話に廻醒が反応した。



「ツキちゃん紅白出る予定やったん!」

「お誘いだけですよ。翌日には断りましたので」

「えぇ勿体ない! 動画めっちゃバズってるやん!」


 私がバズらせたんじゃないもん。




 月火は内心で変なアテレコをする火音の腕をつねった。




 火音は月火と交代で座ると、うるさい廻醒を黙らせるように扉を閉めた。



 火音はタブレットで絵を描き始める。




 五分ほどすると月火が戻ってきて、火音はご飯を食べ始めた。




 月火は机に肘を突くと、眠い目を起こす。



「風呂入ってきたら? まだ時間あるし」

「……お年玉下さい」

「いきなりだな」

「お年玉下さい。資金調達が」

「個人で貰った金を会社に当てるな」

「自分で使う分を増やしたいのでお年玉下さい」

「とりま風呂行ってこい」




 風呂の中で寝ないか心配だなぁと思いながら、火音は豆ご飯を食べた。









 案の定風呂で寝たので黒葉に起こさせ洗面所まで迎えに行く。



 とりあえず着物だけ着たらしいので、中に入って帯を結んだ。



「ねむぅい……」

「だからって俺にやらすな」

「なんで、結び方……」

「常識かと」



 火音は月火を抱き上げると、洗面所から出た。

 月火は火音の腕の中ですぐに眠り、火音は呆れる。




 月火の本部屋に連れて行き、白葉の上に寝かせた。




「今十一時半……十五分したら起こしに来る」

「はぁい」



 襖を閉めると、足元に黒葉が出てきた。



「お前はこっちか」

「報連相大事でしょ?」



 黒葉は腰ほどの大きさになると火音について行き、火音は食器をシンクに戻した。

 てか、これもう戻らないと時間間に合わねぇな。



 この屋敷は一番手前の(くりや)から奥の月火本部屋まで行くのに歩いて十五分かかる。






 火音は小走りで部屋に戻ると、月火を起こした。



 月火は眠いのか背を向けて頭を抱え、火音はその手を剥がす。



「年明けるぞ。戻らないと」

「ねむぅぅぅい……!」

「明けたあとに寝ろ」

「良い子は寝る時間ですよ……」

「クソ餓鬼は夜更かし得意だろ」

「失敬なッ」



 火音が月火を抱き上げると、月火は火音の首に腕を回した。



「……なんか眠気覚まし持ってません?」




 火音は月火の手を取ると、それを月火の首まで持っていった。


 月火はビクッと体を震わせ、手を弾く。



「冷たぁい……!」

「自分の手だろ」

「冷え性なんですやめてくださいいじめないで」

「コーヒー淹れて」

「話を聞け」

「うん。淹れて」



 月火を厨まで運ぶと、火音は上がり框の上にしゃがんで待つ。



 その後ろ姿を撮って、やっぱ絵になるなぁと思っていると戸が開いた。




「月火さん、初詣行きます?」

「どうします」

「どっちでも」


 眠いんじゃなかったんかい。



 眠いけど皆がいないのに一人残ったら稜稀が怖いと思っていると、火音は呆れながら立ち上がった。




「俺は合わせますよ」

「皆さん行くんですか?」

「はい。初詣のあとに初日の出見に行こうって」

「火音さん初日の出見たことありますか」

「任務で散々」

「悲しいなぁ。では私たちも行きます」

「俺車で待ってていい?」

「背中にコーヒー入れますよ」







 一時に出るらしいので、月火は火音にコーヒーを渡すと自分もカップを持ちながら居間に向かった。


 居間では起きた水月が水哉に甘え、火光が廻醒の首に手をかけ、それを稜稀が殴っていた。



「あ、月火、冬休みの課題追加」

「は?」

「火音だよ。僕悪くないもん」

「間違えた範囲で許可出した火光に言え」

「……どこですか?」



 火音が脳内ワークをめくると、月火も自分の脳内ワークをめくった。



「あできてますね」

「思考共有って便利だねぇ!?」

「火音、月火に変なこと教えこまないでね」

「コイツ既に変」



 火音に笑って圧をかけ、火音はすまんと謝った。



「……前から思ってたけどさぁ。火音って月火を月火って呼ばないよね」

「そうか?」

「コイツとかお前とかあれとかアイツとか。僕呼んでるの聞いたことない」

「……普通に呼ばれてる気がしてたんですが……」



 よくよく聴覚から入ってきた思考を考えてみれば、確かにそうかもしれない。いや二人なら普通に呼ばれる時もあるな。



「なんで呼ばないんですか?」

「伝わればいいじゃん」

「…………まぁ頭の中の文章では月火ですもんね」

「うーん……無意識?」

「口調が雑な証拠ですね」


 すみません。



「昔から呼ばれすぎて名前呼びが嫌になった可能性はある」

「それは分かるなぁ……」

「鬱陶しくなる」

「私は私一人なんだからそんな呼ばなくても分かるっていう」

「変なあだ名も嫌だから結局おいとかお前になるって言う」

「なるほど!……ということらしいです」

「ちょっと超人感覚で喋られても」



 二人で分からないかと首を傾げていると、火光は首を振ったが水月が反応した。




「火光は人覚えるのが得意だから別の人から呼ばれたら別のカウントが増えるんだよね。ちなみに僕はそれ分かる」

「御三方は顔がいいからじゃないですかねー?」

「お前ロリコンと瓜二つって自覚しろよ」

「あれ俺変なレッテル貼られてない?」

「僕ロリコンじゃないんですけど」

「顔の話だよ。火光は聖人君子だからね!」

「聖人君子とは」



 仰向けに寝転がった火光の上に水月が寝転がり、二人で十時の形になった。火光は重苦しそう。



「水月吐く……」

「あー気持ち悪い」

「お前もかよッ!?」


 火光は水月を起こし、水を飲ませた。





 コーヒーを飲み終わった火音は月火にマグカップを渡す。



「着替えなくていいの?」

「着替えた方がいいですか?」

「振袖だろ」

「じゃあ着替えます」



 月火は少し残ったコーヒーを火音に渡すと去っていき、火音はそのコーヒーを飲み干すと洗い物に出して月火のあとを追い掛けた。









 部屋の中に入ると、月明かりだけで照らされた部屋に月火は白に赤い牡丹と金のが描かれた振袖を着ていた。



「あ、ちょうどよかった。助けてください」

「そこまで来たらもう無理だろ。解け」



 帯を後ろで結んでいた月火は一気に腕を下ろし、肩を回した。



「やってください」

「前でやって回せば?」

「無理ですね」




 月火に頭で指示されながら、頑張って帯を結ぶ。



「……さっきのとこつまんで引っ張りながら捻る」

「ムズすぎる」

「でしょう?」

「普通のふくら雀とか巾着でいいじゃん」



 何故かジト目で睨まれたので仕方なく帯の結び方を検索した。



 月火に見せて、好きなのを選ばせる。




「……あ、これがいいです」

「やり方は?」

「さぁ?」



 動画を見て、手順を覚えてから帯を結んだ。





「……はい」

「おぉ」

「帯締めは?」

「どっちにしようかなと思って」



 白に赤と金の振袖、金の帯まではいいのに、なんで帯締めが赤か金になるんだろうか。せめて二色か紫かピンクだろ。



「駄目ですか。帯締め選ぶの苦手なんです。火音さんやってください」

「おいアパレルブランド社長」

「商才さえあれば社員に任せられるんですよ」



 火音は濃い紫の白の帯締めを選ぶと、それを花のように結んだ。


 男は帯締めがないので初めて結ぶが。



「……まぁいいだろ」

「ありがとうございます。じゃあ火音さんも着替えてください」

「え俺?」

「私、振袖なんですよ?」



 袴に着替えてこいと言われた火音はおとなしく着替えた。





 部屋に戻って、月火の髪を結んで簪ともう一種類、髪飾りを挿す。


「はいできた」

「……派手すぎません?」

「顔には勝てん」



 髪をしてもらっている間にメイクを済ませた月火は立ち上がると、一応刀を二本持った。




「……あれ私スマホどこにやりました?」

「さぁ」



 月火はしばし行動を停止して考えたが、思い出せるところまでは持っているのに次の場面ではもうない。


「鳴らしてください」

「鳴るん」

「スマホ〜……」



 火音が電話をかけると、居間の方から水月の声が聞こえた。


 居間に置きっぱなしだったらしい。



 すぐに行こうとする月火を止めて、先に荷物を準備させた。慌ただしい。

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