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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
1年生
44/103

44.鬼互

 妖神学園の冬休みは師走の第四土曜日から始まる。

 なので、今年の二十五日はギリギリ登校日。そして終業式。





「ぃやったァ! 冬休みだァー!」

「特になんもねぇだろ」

「冬休みよりクリスマス喜こぼーよー?」

「滅べ聖夜祭。キリストを取り入れるならクリスマスぐらい祝日にしろッ……!」

「あーあリア充爆散しねぇかな」




 イライラした様子でパソコンを叩く火光と月火に生徒三人が顔を引きつらせていると、バチくそにリア充を罵倒していた月火がふと顔を上げた。



「リア充爆散のTシャツ……?」

「やめろ炎上するぞ」

「月火なんでそんなリア充爆散とか言ってんの? 炎夏も火音先生もいるじゃん」

「玄智ちょっとこっち来い」


 火光に耳をちぎられながら退場した玄智を見送り、月火はストレスで歯ぎしりをする。



「クリスマスだからプレゼント〜じゃねぇんだよ買うなら毎日買って尽くせそれなら許すこんな日にこそ仕事増やすな畜生ッ……!」

「荒んでるぅ!」

「月火ちゃん糖分だよ糖分! 晦先生にお菓子もらったよ!」




 月火が呪いを吐きながらチョコを食べていると、ふらっとやってきた火音が窓を開けて月火の頭を掴んだ。



「呪いを吐くなせめて頭を空にしろ。仕事が手に付かん」

「だァってだってだってッ! 火音先生はクリスマスだからプレゼントとか言わないでしょうッ!?」

「クリスマスにプレゼントは知らんけどお前クリスマスに誕プレ買ってんじゃん。他社の社長に同じことやってんだろ」

「やってませんよ自分で自分の首絞めてるんですぅ! あークッソッ!」



 何故か半ギレの月火はスマホをいじりながら教室を出て行き、火音はそっとパソコンを閉じた。たぶん企業秘密。




「あの、火音先生……? 月火さん……」

「ほっとけ」



 火音と話をしていた鬼互(おにたが)は引きつった顔で月火が歩いて行った廊下を眺め、火音は盛大に溜め息をついた。



「……火光は?」

「月火のリア充爆散発言に火音先生出した玄智を連れてった」

「あーそ……」

「あとで俺も口引き裂く予定」

「わー炎夏君ッ!? 駄目だよ!?」

「好きにしろ」

「教師ィッ!」



 結月の怒鳴り声も無視して、火音は月火と少しコンタクトを取るとまた溜め息をつきながらスマホを見下ろした。



「……おい水月」

『何』

「妹ちゃんが泣いてんぞ」



 火音は発狂する水月との通話を切ると、窓を閉めて鬼互とともに廊下を歩き出した。





「火音先生、終業式の準備終わったみたいです」

「ぼちぼち移動させるかー……」



 火音は時間を確認すると、鬼互とともに放送室に移動した。


 毎年、一時間目に冬休みのなんたらを配り二時間目に大掃除。終業式は三時間目で、終業式が終わったら皆瞬間遊びに行く。



 その終業式に集めるのは教師の役目。




「俺触れないからお前言えよ」

「えッ」

「はいこれ。三角に今年の日付と丸に誘導学年」



 火音はタブレットで学年を見せると、鬼互は席に座って時間ピッタリに放送を始めた。


















 終業式なんてなんも書くことない。強いて言うなら麗蘭が失神したぐらい。





 集まって、生徒会長月火様の話聞いて、各学年生徒指導の話を聞いて、冬休みの注意事項を聞いて、終わり。解散。




「さー帰ろ!」



 玄智が元気に手を振り上げると、炎夏が月火の頬をつついた。


「月火、夜出掛けるぞ」

「誕生日会があるんですが」

「六時には終わらせるじゃん」

「どうせ呑むでしょう?」


 炎夏と話している間に隣にやってきた火音を見上げると、火音は首を傾げた。



「お前の部屋あんの?」

「あるわけないでしょう何歳だと」

「えー飲めないじゃん」

「ね〜火光先生!」



 月火が火光に声をかけると、火光は晦との話を切ってこっちにやってきた。


「なーにー月火ちゃん」

「ワイン持ってくるでしょう?」

「うん」

「ほら」

「じゃあ飲む」

「てことで無理です」

「……えなんで火音が出てくんの? 毎年部屋に籠ってるじゃん」

「火音先生の誕生日でもあるんですよ今日。びっくりですよね偶然偶然」



 つっても月火は去年時点で知ってたけどな。社員、御三家、上層部、教師陣の誕生日等の色々は去年一年をかけて暗記した。



「お前去年サボってたってことか」

「今年祝われるだけ感謝しなさい」

「別に祝えとは言ってねぇ」

「楽しみなくせに」

「はいはい」



 月火が火音の足を踏んでいると、いきなり火光と炎夏が叫んだ。



 体育館に二人の声が響き渡り、月火と火音は耳を塞ぐ。



 体育館に残っていた皆がなんだなんだとこちらを見て、その注目された中で火光と炎夏は火音の誕生日が今日であることに驚いた。




 体育館がざわめき、女子達が悲鳴を上げる。火光達よりも数段うるさいやつ。



「なんで教えてくれなかったの!? 毎年毎年部屋に籠って! はぁ!?」

「なんで今さら言い出したわけ? 月火と同じ誕生日……!?」

「いーなー月火ちゃん! ロマンチックだね!」

「これがカップルならね。ただの居候なんですよ」

「共鳴相手でしょ!」

「別にロマンチックとかありませんね。私が求めるロマンは海底に広がる秘密機関……!」

「漫画でも読んどけ」



 月火は火音の脛を執拗に蹴り、火音は月火の腕を掴むと上にあげた。


 首を傾げる月火を見下ろしたまま、だんだん上にあげていく。


 そのうち身長差のせいで月火のかかとが浮いて、つま先立ちギリギリになっても火音は引っ張る手を止めない。



「痛い痛い! すみませんって! ちぎれる!」

「次耳な」



 月火はハッとして火音側の耳を押え、火音がソッと手を伸ばすと月火は逃げて行った。


 代わりに火音の耳が引き裂かれんばかりに引っ張られる。



「痛い痛い痛いッ! 痛い火光離してッ! 火光ッ!」

「誕生日プレゼント何がいいかな盗撮魔」

「火光のアルバム! 痛い痛いッ!」

「罪悪感の欠片もなさそう」



 実は火音の誕生日を知っていた玄智は頭の後ろで手を組むとはははと高らかに笑った。



「玄智君は知ってたんだね」

「まこれでも甥ですから?」

「お前妹の誕生日知らないじゃん」

「知ってますぅ! 祝ってないだけですぅ! 火音先生と一緒で!」

「せめて火音先生ぐらい祝えよ」

「どーせ煙たがられるだけだよ」
















 火音と火光が職員室で仕事をして、学園中が誕生日の話題になったのを聞き付けた綾奈と知衣が火音をからかっていると職員室に水月がやってきた。



「かこ〜ハピバ〜」

「僕が誕生日みたいに言わないでよ」

「火光は設定上永遠の二十歳だもんね!」

「まだ二十歳だけど永遠ではねぇ。言うなら歳取っても顔変わんない火音に言って」

「言われてんぞ綾奈」

「火光喉元注意しろ」



 火光は自分の喉元に手を当てると殺気の籠った目で見下ろしてくる綾奈を見上げ、冷や汗をかいた。



 綾奈も幼い頃から顔が変わらない。

 歳取っても顔変わらずと言うなら火音よりも綾奈が当てはまる。




「……綾奈は若く見えるじゃん?」

「お、そうか?」

「嘘でしょ」



 鼻で笑った水月が綾奈に連行されて行き、職員室が静かになっているとまた誰かやってきた。と思ったら、月火だ。




「失礼しまーす。廻醒(かいせい)先生ハピバ〜」

「明日なんですが」

「明日もここで仕事するつもりですか」

「ありがとう受け取っておきます」



 小さな紙袋を持って入ってきた月火は仕事をしていた鬼互にそれを渡した。


 皆が目を丸くして驚くのを気にせず、二人は少し世間話をする。




「ご両親と妹ちゃん元気ですか?」

「お陰様で。あでも父は死にそうな顔してました」

「それはそれは。私がとても喜んでいたと伝えてください」

「毎年ありがとうございます」

「いえいえ。歯車が壊れると困りますからねぇ」

「別にこれで修理されることはありませんよ。毎年毎年接着剤入ってますけどッ」

「恒例でしょう?」



 鬼互は呆れながら紙袋を机に置き、荷物の中から似た紙袋を取り出した。



「ではどうぞ」

「まさかのダブり」

「そうでない事を願います。ダブったら新しいのください。金持ってるでしょう日本一の資産家」

「持ってませんよそんなに〜。税金にかっさらわれてるですから。ま、被ったらまた渡しに来ますよ」

「期待しておきます」

「被ったらです……」

「お疲れ様でした」



 月火は颯爽と職員室を出ていき、火光は火音に関係性を聞く。



「何何何御曹司!? 社長!? 分家!? 誰!?」

「本人に聞けよッ……!」

「水月誰ッ!」

「知らないよ何が」



 水月は火光が指さしたその男を見て、首を傾げた。



「漫画に出てくる根暗男だ……!」

「水月君火光先生と同じこと言ってる失礼ッ!」

「すみませーん」



 勢いよく立ち上がった晦に指さされた水月は適当に謝り、火光のスマホを覗き込んだ。

 名前を調べている。




「……神々の神三下(かさんか)分家。あぁ分家の子」

「普通分家より先に一級上位が出てくるけどな」



 火音の小さな呟きに、職員室の全員が頷いた。

 しかし火光と水月は悪びれる様子なく首を傾げる。


「上位って何位よ?」

「御三家抜いた一位の三位だよッ」

「僕特級なんで〜?」

「僕、月火、その人? 火音抜かされてるよ?」

「月火、俺、鬼互な。お前下半期四位に下がってたぞ」

「……事務仕事しすぎたな〜」



 火光は水月の業績を鼻で笑い、水月は火光の首を絞めた。




 妖輩は一級は一級で、二級は二級で実力順位が付けられる。闘争心による技能アップと仕事の正確なレベル割り振りが目的。


 毎回月火が堂々の一位、水月と火音が競って、四位は鬼互が定例だった。のに、今回は水月がサボったプラス火音の狐戦が評価され水月が一気に四位まで下がった。




「ま、次の上半期には二位戻れるように頑張れよ」

「応援してくれるなんて珍しいね〜?」

「俺と月火は特級試験受たんで。お疲れ様でしたー」

「俺も帰ります。お疲れ様でした」



 火音は終業とともに出ていき、鬼互は終業とともにパソコンを閉じた。



 水月はうずくまり、火光は鬼互を見上げる。



「終わったの?」

「い、一応……」

「火光先生圧力やめてください。火光先生より三倍は早いですよ」

「いやっ、そんなことは……」

「僕だって早いですぅー」

「じゃあさっさと終わらせてください」



 火光がまた言い返そうとした時、鬼互のスマホに緊急連絡が入った。




 鬼互はそれに応答すると耳につける。



「俺これから任務……」

『お疲れ様です廻醒さァんッ! 二位ならさっさと祓ってくださいねぇ!』



 普通の通話モードのはずがスピーカー並みに漏れた声でそれが聞こえ、廻醒は勝手に切れた電話を見下ろした。




「……水月様やります?」

「やりません。今日は終業時間です」

「そんなん言ってるから追い抜かされるんだよ」

「火音と月火が上がったら火光も三位だかんな!?」

「特級になれない僻みかなァ!? 水月君妖心術終わってるもんねぇ!?」

「お前だってさして使えねぇだろうが!」

「僕が一級に上がってから校舎どこも壊れてないの知ってますぅ!? 君のモノホンがいないと使えないコピーと違ってぇ!」



 振り返った火光が満面の笑みで煽っていると、頭にガッと衝撃が走った。


 火光は頭を抱えてしゃがみこみ、水月は口を塞ぐ。




「仕事、しろ。早く」

「……すみません」



 教科書で火光を殴った晦の圧に火光は仕事に戻り、水月は逃げるように職員室をあとにした。

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