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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
1年生
27/103

27.新任教師

「で休みなの?」

「有給使い切ったって嘆いてました」




 月火が引っ越して一週間。

 火音の体調は戻ったものの、動けなかった数日間で溜まった火神の仕事の処理に追われてここ数日間は休み。


 他の教師、と言っても二人だが。フォローに入れる人数ではないので授業は全て自習だしプリントも何もない。





「そっか、家の仕事では公欠にならないもんね」

「あ、二人来た」



 炎夏の声に廊下の方に振り返ると、珍しく怒られていない火光と怒っていない晦が二人で歩いてきた。


 今にも死にそうな顔で、真っ青と言うか真っ白な顔色で教室の窓を開け、火光は月火の肩を掴んだ。




「月火、給料削っていいからほんとに人員増やして。死ぬ」

「月火さん……! 健康を、健康を考えさせて下さい……! ほんとに……!」



 火光に強く肩を振られた月火は苦笑いをして、二人を落ち着かせた。



「わ、分かってますよ。今月頭に試験をやったので来週頭には五人来ますからッ…………酔うッ……!」



 月火はさらに揺さぶってくる火光から救出してもらい、息を整えた。



「ほんとに……五人……!?」

「火音先生がいるので人員選別に苦労するんです。去年が豊作で四人は新人ですが一人は初等部上がりの方なので大ベテランの……晦先生より先輩の方です……」

「マジ!?」

「と言ってもずっと初等部を持ってもらっていたので高等部に慣れるには時間がかかると思いますが。五人のうち二人は中等部時代から高等部教師志望を突き通していたので比較的早く戦力になれると思います。新人教育大変でしょうがお願いします」

「やったーッ!?」



 火光と晦は顔面真っ白のまま手を振り上げて大喜びし、月火はホッと息をついた。

 火光から救い出した炎夏は月火の肩をさすり、玄智は机に手を突いた。



「ほんとに増えるの?」

「ほんとに増えますよ。中途採用だから選別にめっちゃ苦労したの……」



 こっちもこっちで魂が半分抜けている月火を炎夏と玄智で介護し、これは駄目だと炎夏が月火を抱き上げ玄智が荷物を持ち、二人で月火の寮に向かった。


















 月曜日、既に三日ほど職員室に連泊している火光が栄養補助食品と名高いゼリーを吸っていると職員室全体に電気が点いた。



「うわっ!? 火光先生今日も泊まったんですか!?」

「うーん……おはよう」

「お、おはようございます……」

「火音今日も休み?」

「連絡まだ……五時ですし……」





 晦と二人で無言で仕事をしていると、七時になったらしい。敷地全体に七時のチャイムが鳴って、学校の廊下全体に電気が点いた。


 カラカラと扉が開き、月火が顔を覗かせた。



「失礼しまーす」

「どうしたの」

「今日、月曜日ですよ〜」

「……今日月曜だっけ!? 授業なんも確認してない!」



 勢いよく立ち上がった火光に思っていた反応と違った月火は眉を寄せ首を傾げながらも、中に入ってきた。




「教師の鏡で結構ですが。忘れてません? 新入り五人」




 二人でハッとすると、月火に続いて五人が入ってきた。



 女二人と男三人、例の大ベテランは、晦より上と言っていたがまだ五十路ぐらい。



「自己紹介お願いします」

「じゃあ私から! 紅野(こうの)実煉(みのね)、二十五歳です。誕生日は五月二日、好きな物は甘いもの! 妖心術はドクソなので刀で戦ってました、よろしくお願いします!」

「戦ってたって」

「あ、研修先で! 人が少ないと教師が戦うので……!」

「大学部の研修の事ね。あれ大変よね」

「はい!」

「次」



 時間がないので月火がバッサリ切って、次に進めた。

 二人目の女性、かなり気弱そうな感じだが、どこか知っている雰囲気だ。



「あ、えと、神水溜(かみたまり)龍桜(りゅうさく)です。こんな名前ですが一応女です。好きな物……は、駄菓子好きです。よろしくお願いします」

「水神の分家の子か! 見たことあると思ったら!」

「炎夏さんのいとこ違いに当たる方ですね」

「は、初めまして……」

「あーなんか似てると思ったら」

「次」

「喋ってんのに」



 火光の言葉を無視して、次は生真面目そうな男の人。なんか、教師になりたかったんだろうなぁって感じの。



須賀原(すがわら)啓銉(けいいち)です。二十五歳、誕生日は十一月十一日、好きな物は寿司。よろしくお願いします」

「関西弁だ」

「実家が京都の方です」

「京都人のあの見下す感じがとても嫌いです」

「言い切った」

「次」



鬼互(おにたが)廻醒(かいせい)です。よろしくお願いします……」

「うーわ漫画で見る根暗」

「教師として有るまじき失礼さですよ?」

「次」



芦鉢(あばち)浩夫(ひろお)、前は初等部の教員をしておりました。高等部は初めてなので、ご迷惑をかけるかもしれませんが何卒よろしくお願いします」

「自己紹介終わりです」

「よし! 晦あと任せた諸々は放課後! じゃ!」



 自己紹介の間に荷物をまとめていた火光は終わった瞬間全てを持って飛び出していき、晦もハッとした。


 一瞬で荷物をまとめ、お菓子箱からお菓子を鷲掴みしてポケットに入れ、立ち上がる。



「ちょ、ちょっと、説明……!」

「私やっておくのでいいですよ」

「ありがとう女神!」



 月火は飛び出して行った晦を見送ると、五人の席を案内して火音の席には近付かないようにと、一応ある校長の席も説明しておいた。

 校長の席は全職員室にあるんだがな。



 あとは時間ギリギリまで職務の色々を説明して、とりあえず今日は見学に。

 今年の一年生は特殊だし三年は進級に向けて特殊になってくるので見学。




「じゃんけん一回で勝ち組負け組に別れてください。勝ちは三年、負けは一年です」

「最初はグー!」



 須賀原の声で皆が反応し、負け組は神水溜と鬼互に決定した。



 勝ち組は晦を追いかけさせ、月火は二人を連れて教室に向かった。




「……あの、月火様は」

「生徒なので月火でいいです」

「月火さんは、教員の職務も覚えているんですか?」

「上層部、学園、御三家に関する職務なら基本的に頭に入れています。本職ではないので多少カバーに入れる程度ですが」

「す、すごい……」



 歩いている途中でチャイムが鳴ると、月火は顔を跳ね上げた。



「教室の場所分かりますね!? 私は先に行きます! あでも一時間目体育なので外!」



 瞬間いなくなった月火に呆然とする。




「…………あ、えっ……と、とりあえず……外……?」

「ホームルームあるんじゃないですか」

「あ、あ! じゃあ急がないと!」













 開いていた窓を飛び越え中に着地すると、バインダーで頭を叩かれた。




「怒らないから扉から入ってきなさい」

「すみません」

「五人は?」

「二人見学に来ます」

「おっけー。じゃ、とりあえず挨拶しようか」




 教室で神水溜(かみたまり)鬼互(おにたが)と合流し、火光が着替えに行ったので、生徒四人と後ろに見学二人を連れて廊下を歩く。




「月火、あの教師って有名な人だよね……?」

「そうなの? 芸能人とか?」

「いやちげぇ」

「教師コースも取ってたんだ」

「意外ですよねぇ。まさか自ら希望するコースがあろうとは」

「そんな無欲な人なの?」

「えぇ。火光先生に漫画で見る根暗と言わしめたほど」

「わぉ」




 外に降りると既に火光が準備運動をしていて、四人は歩きながら体や腕を伸ばした。




「始めるよー」

「しゃーす」

「昨日……じゃないか。前回の続きから! 玄智一番」

「はーい」

「見学! これ持って掛け声お願い! あと記録!」




 今やっているのは、限られた範囲内で10分間で何回倒し倒されるかと言うもの。負けは場外または転倒で。ほぼ体術で特級に上がった火光から10分間で何本取れるかと言う勝負。

 二人とも身体強化なしの素で。



 残り三人は10分間でトラック何周走れるか。




 本来なら体力が下がっていくんだろうけど、二時間やったあとの二時間は身体強化ありの体力作りになるため体力の底はほぼ来ない。




 一番の化け物は身体強化なしで四時間、一級化け物一人と二級化け物二人、体術一級を絶えず相手する火光かな。










「終わりー! はー疲れた!」

「炎夏! 記録上置いといて!」

「おーす」




 炎夏は見学二人から記録とストップウォッチを預かると教室に戻った。


 月火が制服に着替えている間に炎夏がストップウォッチとバインダーを片付けに行き、玄智は結月(ゆづき)と昼の用意をする。





「あー腹減った!」

「炎夏、お使い行ってきてよ。理科教えてあげるから」

「火音せんせーに聞くんでー」

「あー動画にアイコン入れるの忘れそーだなー」



 炎夏は玄智の首に手刀を入れると玄智の財布を持って出ていき、玄智が首を押えて結月が心配しているうちに月火が帰ってきた。



「あれ一人足りない」

「誰が足りない」

「誰か。いただきまーす」

「誰か……?」

「月火、先生は?」

「麗蘭に引きずり回されてました。違う引きずり回してました。すぐ戻ってくると思いますよ。……先生方もどうぞ好きなところで食べてください」




 月火は結月とご飯を食べ始め、二人とも炎夏が帰ってきた頃には食べ終わった。



 炎夏は玄智にパンを投げつけ、二人で仕事をする月火の邪魔にならないよう小声で話す。






 昼休みが終わる直前、火光は相変わらずの菓子パンをくわえながら麗蘭を片手にやってきた。


 相当引きずり回されたらしい麗蘭は引きつった顔で月火に助けを求める。



「げ、月火……」

「校長様が新人の前でいい恥晒しですね」

「泣くぞ!? 私が泣いたら子供を泣かせたって倫理観的にアウトだぞ!?」

「僕餓鬼嫌いなんだよ。餓鬼を自称するなら出てって」



 火光は麗蘭を外に捨てると、新しいパンの袋を開けた。



 火光も仕事をしながら、ついでとばかりに見学二人を呼んで仕事内容を教えた。

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