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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
1年生
24/103

24.盗撮魔・兄

 撃沈した火音は廊下の隅で丸まり、月火はその横でスマホをいじる。


 今は校長の麗蘭(りら)と人事部長の麗湖(りこ)一菜(かずな)の処分を下している最中。




「……気持ち悪い……」

「もう分かりましたから。部屋帰ります?」


 なんなんだよ。なんで入りたがらないくせに部屋帰るか聞いたら拒否すんだ。意味不明なんだが。




 月火は首を横に振った火音を見下ろすと、片腕を掴んだ。


 指をちょいちょいっといじってピースをさせ、写真を撮る。




「二人とも見て! 火音さんのピース写真!」

「送って〜!」

「お前何やってんだ」



 炎夏は嬉々として乗っかる玄智にも、嬉々として送る月火にも呆れた。


 一応刺激しないように誰も火音の傍に近付かないようにはしてるが、月火が離れて大丈夫か。




 と思っていると、火音がやってきて月火の肩に額を置いた。



「邪魔なんですけど」

「死ぬ……」

「はァ?」

「月火、あと僕らでやっとくからそれ部屋に置いてきたら?」

「いても邪魔になるだけだろ」

「じゃお言葉に甘えて」



 月火は火音の腕を掴むと引っ張って、自分の部屋まで降りた。



 妖輩は高学年になるほど緊急時に早急性が求められるので階が低くなる。






 部屋に帰って、しがみついてくる火音に着いたぞと言っても聞かない。



「……教師が生徒に甘えないでください。まったく……」



 月火は人以上サイズの白葉の上に火音を押し倒すと、狐サイズの黒葉を抱っこさせた。




「しばらく寝ててください。カメラがあっても狐で隠れるので。じゃ」



 月火はそう言い残すと、踵を返した。



 妖心は怪異とは異なりカメラに映る。

 怪異とは魂と負の感情の入り交じった不安定なものだが、妖心は言わば人の分身のため、まぁめっちゃはっきり映る心霊写真とでも思ってもらえばいい。


 ちなみに実体化した怪異も同じぐらいくっきり映るようになる。





 月火はいまいち読めない火音の思考に疑問を覚えながらも、さっさと皆の場所に戻った。














 少し移動して、次は大学部一年の妖輩の場所。

 妹は妖力なしで補佐コース生だったが、兄は父と同じ妖輩者。



 月火が下に降りて向かうと、喧騒の声が聞こえた。




 なんだなんだと慌てて降りると、そうか大学一年生、暒夏(せいか)と同じ。炎夏と暒夏がはちあわせたか。




「玄智……!」

「あ、お疲れ。始まったよ、水神名物」

「笑ってないで撮りますよ」

「やるよね〜」



 だいたい暒夏が煽って炎夏が手を出して、口が上手い暒夏と体術が上の炎夏でいい感じの喧嘩になる。




 二人で撮っていると、騒ぎを聞き付け遅れてやってきた火光が走ってきた。



「炎夏ッ! 離れて離れて……!」

「離せクソ火光ッ!」

「あは、教師に抵抗できないチビ」

「暒夏も黙って」




 頬を殴られた暒夏は口の血を拭い、炎夏は火光を蹴り飛ばして暒夏に向かって妖心術を使おうとする。前に、襟首掴まれ引っ張られた。


 火光の何とかなだめようとするような感じとは違う、有無を言わさぬ圧。




 見上げると、やっぱり。




「……水明様……」

「楽しいかい」

「はい!」

「兄さん下ろして下ろして」



 嬉々として返事し殴られた炎夏は本気で頭を抱え、ヤバい音がしたと月火と玄智も心配する。


 水明は暒夏も殴り、水虎は暒夏を心配した。




「大丈夫? 口の中切ってるみたいだし……」

「痛い」

「保健室行こうか」

「水虎、そのまま暒夏の部屋も見てきて」

「はい」



 水虎は暒夏を保健室に連れていき、炎夏は二人に支えられながら立ち上がった。




「……マジ脳震盪起こしそう」

「大丈夫顔色いいから」

「起こしたら吐いてくださいね。分からないので」

「いや……ムズいぞ?」

「大丈夫炎夏ならいけるいける! ほら!」

「起こしてねぇよッ!」

「大丈夫なんじゃん」



 炎夏は玄智の首を絞め、玄智は月火に助けを求めた。

 月火は二人の耳を引っ張って牽制する。




「目的忘れてませんよね?」

「だって校長まだ来てないよ?」

「水月もまだだし」

「待つのとふざけるのは違いますよ」

「すみません」



 三人とも水明が怖いのに変わりない。



 覚えているだろうか、狐面後の療養期間、月火が発熱した時のこと。その時に、月火が「稜稀(いづき)は水明よりマシ」と言ったこと。それに炎夏も否定しなかったこと。



 つまり、そういうことだ。



 あくまでも月火は二人を牽制して、二人は馬鹿やって素直に怒られる生徒でいること。



 それが水明に違和感を覚えさせない役割。





 仕事上であれば心配ないが、今は保護者と生徒だから。大人と子供だから。





「……ちょっと端っこ行こう」

「うん……」




 火光は隅に移動した三人に呆れながら、スマホを取り出して火音に連絡を入れた。



 既読はつくものの返信が来ない。と思っていたら、いきなり火光にとっての自画像が山のように送られてくる。




「月火! 火音が壊れた!」

「元々半分損壊してるようなもんでしょう」

「ひっでー言い様」

「あんなにいい顔なのにね」

「外と内側の話だろ?」

「火光先生がいなくて寂しいんですよ。行ってきたらいいんじゃないですか?」

「えやだ」

「じゃそう言っときます」




 火音とはメールアプリじゃなくてショートメールの電話番号で連絡を取り始めた。

 たぶんどっかしらの場面で交換するタイミングはあったんだろうが、完全に逃したので電話番号で。




「……あもしもし火音さん?」

『火光連れてこい絞め殺す』

「あはは元気が戻って何よりです!」

『剥製にする』

「元気になったんなら降りてこい有言不実行にも程がある」



 いきなりかかってきた電話がいきなり切れて、月火は額に青筋を浮かべた。



 腕にしがみついてくる火光を連れて、階段から眺めていた水月に渡しに行く。

 水月は部屋にピンやブルーシート、スプレーを取りに行っていた。




「ほら兄さん、あげます」

「いらない。火音は?」

「帰りました」

「そう。あれ水明」

「お久しぶりです。さすがに甥たちにも被害が及んだとなると黙ってはいられず」

「うーん、まぁ好きにしな?」



 水月は月火を連れて、寮のインターホンを押した。




 三度押していないことを確認すると、スペアキーで勝手に開けて中に入る。



「兄さん……」

「ああ本人に許可は貰ったよ」



 飛んできたスマホのメール履歴を見ると、完全に大学生ノリで。そういえば、同い歳か。あぁ同い歳か。




「そう言えば同い歳でしたね……?」

「まーね。僕火光しか見てなかったからほとんど喋ったことないけど」



 相手からすれば大好きな月火の兄だ。こっちから関わったら即取り入れた。



 水月は中に入ると月火だらけの寮の中に入った。



 他の皆を部屋の前に待たせて、一人で壁にブルーシートを貼る。同級生や教師と言えど妹のプライバシーを侵害させるつもりはない。





 さっさとブルーシートで全面の写真を隠してから、リビングの端に置いてあったパソコンのデータを抜き取った。



 麗蘭に通報させたのでそろそろ警察が来る。




 データを抜き、パソコンに残った月火に関する情報を消して破壊してから部屋を出た。




「火光、パソコン貸して」

「いいけど、自分のあるじゃん」

「ウィルス感染した」

「えッ僕のッ……!」

「僕のパソコンウィルス広げないから大丈夫だよ。ただデータ飛ぶってだけで」

「飛ぶの……!?」

「あぁ全部これに入ってるからご安心を」



 水月は寮の隣の階段に腰掛けると、水月のパソコンを通して安全になったデータを火光のパソコンで確認した。が。



「どう?」

「これは他人に見せられるものじゃないなぁ……」

「え何。写真?」

「……婦警呼んどいてよかった」



 水月は火光が覗こうとしたパソコンをそっと閉じ、データを切断すると火光のパソコンの閲覧履歴を全て削除した。



 ウィルスも大丈夫そうだし、うん、終わり。




「月火、引っ越し予定あったよね?」

「今月末頃を考えてますが……」

「もう部屋あるなら今すぐ引っ越しな? たぶん壁も改造されてるから」

「不法侵入と器物破損でいけるな……」

「これはお兄ちゃん達に任せて、今すぐ荷物まとめて引っ越して。マジで」

「は、はい……」



 水月の本気の目に、月火は小さく頷くと手伝うという炎夏と玄智とともに自室に帰った。




「火光、任せていい?」

「いいけど」

「念押してね。僕お使い行ってくるよ」

「何買うの?」

「独立セキュリティの(モト)














 部屋に帰ると黒葉が元気に走ってきて、リビングを見ると火音が白葉の傍で眠っていた。


 ブランケットは黒葉がかけたのか雑。



「火音先生って子供っぽいとこあるよね〜」

「精神年齢が割かし幼いですからね」

「さっさと荷造り始めるぞ」




 月火の部屋の中は会社の試供品で溢れている。まずはそれの区別から。


 捨てたら既に廃番になっているものもあるため、分別は実家に置いておく用、会社に送る用、玄智にあげる用の三つ。




 それをぽいぽいっと分けて、その間に二人は教科書やら本やら趣味用品やらをダンボールや紙袋にまとめた。



「棚とかどうするの?」

「近いうちに業者呼びます。さすがにベッドとか無理なので。ソファだけ分解して狐に運ばせます」

「便利な妖心だね」

「間違った使い方だろ……」

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