23.盗撮魔・妹 後編
「これ、全部盗撮か……!?」
部屋にカメラを仕掛けた犯人一、一菜の部屋の不自然なコルクボードを返し火音の後ろにいた麗蘭は唖然とした。
大量の手紙で埋め尽くされたコルクボードの裏は大量の写真で埋め尽くされていた。
割と最近のものから、数は少ないものの小、中、高等部の写真も。
高等部で大卒の資格を取った火音は大学部までは進級していないためこの歳での教師だが、これは相当なオタクってかストーカーだなもうここまでいくと。
「盗撮は覚悟してたが、まさかこんな数を……」
「弁護士通すまでもないな。……気持ち悪い帰る」
「は? ちょっと気分屋が過ぎませんか」
「野性的に生きてるんで」
「野生と気分屋は違うんですよ」
「同じにしとけ」
「嫌です。俺が守ってやるよってキメ顔で言ったくせに」
「ボケで処理したのはお前だろ」
「言った本人が本気だったんなら守ってくださいよ危ないのこっからなんですから」
「狐に頼め!」
月火は火音の腕を掴み、火音はギャーギャー嫌がる。
それを見て微笑ましそうな炎夏と玄智とは別に、一菜は額に青筋を浮かばせ目に怒りを宿した。
妖力が揺れ、炎夏と玄智が押さえる前に妖心が現れる。
──妖心 死人憑──
──妖心術 萼壁──
火音が月火を庇うと同時に二人の前に花びらのような壁が現れ、防いだかと思うと黒葉が出てきた。
牙を剥き出しにし、威嚇する狐に怯えても戻ることの許されない妖心は主を守ろうとしながらも狐に押される。
「黒葉、戻って」
『嫌よッ! 主様を殺そうとするなら殺される前に殺すわ!』
「殺そうとはしてないでしょう……」
「やーやー火音君。妹の護衛ご苦労さん」
「あかこ……ぅ……」
にこやかな火光は火音の後ろから抱き着くように腕を掛け、ごく自然に首に腕をかけた。
「俺が守ってやるよってカッコイイね。その顔だったら尚更」
「冗談じゃん……?」
「冗談は困るなぁ。この腕の説明が付かなくなるよ」
「だって月火が怪我したら衣食住が危うくなるし……火光も悲しむし……?」
「全部自分のため故の守りだもんね?」
「二人とも邪魔」
火光は火音を連れ出して行き、水月は中に入ると何かの機械を確認して深さのある引き出しを確認し始めた。
「……誰か薄っぺらい硬いもの持ってない?」
「こんなところに鉄の定規が」
「なんで持ってんの」
パッと取り出した炎夏に玄智が訝しむ目を向け、炎夏ははははと笑っておく。さっき化学の補習だったとだけ言っておこう。だから制服。
水月は引き出しの本来なら底に当たる部分の隙間に薄い定規を差し込むと、てこの原理で板を押し上げた。
その下にあるのはドローン操縦機のようなカメラ操縦機。画面に映像が映り、カメラの角度や明度をリアルタイムで調整できるもの。
「月火、これ改造されてる」
「まぁ他人の手に渡ってないなら法律でどうこうはできませんが。悪質ですよねぇ、あと二個見つかってないカメラさえ覗いてるなんて」
一つの端末で複数のカメラを見れるようになっている。相当な技術者がいるなこれ。
「水月、その機械何?」
「ん?」
炎夏と玄智は水月が持っていたその機械を見下ろし、水月はあぁと二人に渡して見せた。
「うちの製品だからね。無線の電波をハッキングしてカメラと本体の場所探すの」
「へー、こんなのも……」
「うちの製品じゃありませんね」
「へ?」
「違うの?」
三人で水月を見上げると、水月は当たり前だと言うように笑って首を傾げた。
「うん? 昨日の夜思い付いてさっき作ってきた。十分かけて探すなんて時間が無駄でしょ?」
「つ……作れるんだ……?」
「うん。電波キャッチして……」
「そーゆー説明僕分かんないからいいや」
「俺も」
「私も興味ないです」
月火は炎夏から製品を受け取ると、妖心の首や腕、腰を執拗に噛みちぎっている黒葉を抱き上げた。
「そんな汚いもの喰わないで。吐きなさい」
『や!』
「じゃあ戻りなさい」
『いや! 主様守るの! 火音じゃ頼りにならないわ!』
途端、月火の真正面に雷神が出てきて月火とぶつかった。
黒葉は月火から飛び降り、巨大化してまた喧嘩モードに。
肉体だけでなく名誉さえ守ろうとする妖心達の諍いは置いといて、月火はその機械が示すカメラも見に行く。この寮の中にあるみたいだし。
リビングは火音が使っている家具と同じもの、大量のぬいぐるみは赤と紫で統一されている。
「そっちは……!」
「火光先生に仕掛けたのも貴方ですか。いやぁよくもまぁ入り込めましたね。まぁあの方寮に滅多に入らないので警備はずさんでしょうけど」
月火が机に置いてあったパソコンを開けると、水月が自分のパソコンと繋げた。
ハッキングして、データを抜き取る。
その間に月火はソファに山積みにされるぬいぐるみを漁って、カメラが仕込まれているぬいぐるみを火光に渡した。
「……火音の部屋と、月火の部屋に仕掛けられてる十個前後もここだね」
「ストーカーして私の部屋に頻繁に出入りしてるのを見たからなんでしょうけど。まさか男三人が居候してるとは思いませんよねぇ」
「すみません」
「貸してください」
月火は日付別のデータを探すと、火音の鬱の会話が入っているデータをいくつか自分のUSBに移した。
会話の日付ぐらい覚えている。
「月火、どうしたの?」
「バックアップってどこにありますか?」
「そこ開いて……」
月火は火光から逃げて入ってきた火音に色々と確認し、バックアップは消して本データはUSBに。あとは元々入っているUSBを抜き取った。
「はいどーぞ」
「気持ち悪いッ……!」
火音は手を袖で包んで受け取ろうとせず、月火はちょっと本気であとは意地悪でちょいちょいと押し付ける。
「自分で来たんですから自分で持ってください」
「お前が来いつったんだろ! 無理!」
「火音先生が来るって言ったから引っ張ってきたんですよ!」
「無理! 吐く!」
「それ言えばなんでも許されると思うな!」
「思ってねぇけど無理ッ!」
二人の喧嘩を炎夏と玄智で止め、水月は月火の手からUSBを抜き取った。
「どうすればいいの?」
「私のものに移した方はデータ見ずに完全消去を。他はまぁ警察に出すでもなんでも」
「消去?」
「他人に聞かれると宜しくない会話が沢山入っていますので」




