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妖神学園 改正版  作者: 戯伽
2年生
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25.願

 月火、水月、火光、玄智、炎夏が一斉に投稿したことで即トレンド入りの、ネットがとんでもないことになってきた。



 神々社社長の月火は半ギレだけど冷静に、副社長の水月は一応報告という感じで、特級妖輩として名高い火光はちょっと煽り口調で、玄智はブチギレ、炎夏は疑問形で。





 火音の連絡網がえげつないことになり、そっとスマホを置いた。



「あ緋紗寧さん反応してる」

「ま……あの人フォロワー多ッ!? えぇ!?」

「あー、映画の広告とかやってんだ。……クソ有名人だ」

「天は何物を与える気かね」



 炎夏と玄智は寝転がって緋紗寧のSNSを確認している間、火音は火光に首を絞められる。


 一応腕は一本挟んでるけど、折られそう。




 月火が寄ってきたので助かると思ったら、頬を挟まれた。



「分かりましたね」

「ごめんなさい」

「よろしい。兄さんもういいですよ」



 やっと解放されたと思ったら、火光に横腹を蹴られのたうち回った。





















 夜になって、ソファに寝転がった火音が返信に目を通すのに億劫になって一括既読をして無視を怒るメールでさえ無視していると、月火がソファに座った。


 皆が帰ったので二人きり。



 そのまま、火音の胸の上に顔を伏せる。



「どしたん」

「……皆が誤解してるの知っててなんで教えてくれなかったんですか」

「面倒くさかった」

「次やったらぶっ叩きます」

「もうやらんよ。約束」



 火音が頭を撫でると、月火は小さく頷いた。


























 七月に入り、すっかり梅雨も晴れた頃、校庭に馬鹿でかい氷筍(アイススパーク)ができた。




──妖心術 七人御先(シチニンミサキ)()──




 校庭に炎の幻影が出て、氷麗がぶっ倒れる。



「あいつ暴走癖できてきたな」

「さっさと直せばいいのに」




 制御できないから暴走なのであって、直せないから癖なのであって。



 至極当たり前のようにそう言った玄智に二年ズ四人がドン引いていると、三年が気絶した氷麗を抱っこしてやってきた。



「ちょっとどっかで休ませてやってー」

(こと)、なんでいるの?」

「特級に耐えた精神力の伝授を頼まれてさ!」

「それ俺も聞きに行こ。脳筋じゃないやつの精神力の話は貴重」

「私も行く!」

「そんなん僕が教えてあげるのに。まる二日特級と対峙する精神力」



 火光が月火の頭に肘を置くと、炎夏と結月はとても教師に向けるとは思えないような目を火光に向けた。


 何も信用していない、何も期待しない目。



「え今すっごい胸が引き裂かれたんだけど。失血で死にそう」

「琴、精神力はそうとしてどうやって特級消してたん?」

「あ、私まともに話すの初めてかも。結月って言います! 一年の夏に入ってきました!」

「スカウトで転入」

「叩き上げだっ怖い!」





 月火に腕を払われた火光は大泣きで玄智にすがりついた。

























 麗蘭と向かい合って、早速差し出されたその封を開け中を読んだ。




「……麦兄妹の退学願いねぇ」



 特級発生の第一原因と、特級の目的になってしまった者としての、自責の念。



「あの二人は一般家庭からの入学だ。それでここまで来るなら、手放すには惜しい人材だ」

「それはそうですよ。現高等部生で二級上位。妹は火光先生(特級)から一級昇格の推薦貰えそうですし」



 圧倒的人材不足の今、絶対に手離したくない存在。





 とは言え、自責の念と言われてしまっては知るか拒否するとは言えない。後々不安でミスされても困るし、事実二人の存在を不安視している生徒教員もいる。



「……麗蘭的にはどうしたいですか」

「手離したくないです!」

「それは分かりましたので」

「手離したくないというのは妖輩としてだけじゃない。高等部三年生。全員がリーダーになり得る素質を持ってる」



 閏間(うるま)洸壱(ほのかず)、退院後入部二年目で身体能力と人柄の良さ、リーダーシップで火音が見ている陸上の部長。


 閏間(きゅう)、二年生からの遠征で大学部、一級を差し置いてチームリーダーに抜擢。その才能で遺憾無くチームを導き、フランスから死傷者を出さず帰ってきた。


 麦(こと)。特級怪異をその身に宿してなお、その精神力で妖心として抑え込める妖力耐性と精神力。それを後輩に教える指導力。




「琴に関しては後輩からも慕われてる。……今の三年生は、絶対に手離したくない。琴一人抜けるにしても、指導者がいなくなるのは後々影響が出てくる」

「……いっそ火光先生スタイルでやらせますかねぇ」

「教師コース取ってたな。……だが、やってくれるだろうか」

「……分かりません」



 月火はソファにもたれると天を仰ぎ、二枚の紙を見つめた。



 涙で滲んだ文字、震えた線、ヨレた紙。


 兄妹揃って優しい人たちだ。自分を押し殺してでも、人の気持ちを推し量ってしまうだろう。




 人の気持ちなんて分からない。どう対処するのが正解なんだろう。



「……妹、琶音(わね)の方はどうする?」

「あー、それに関して一つ提案があって」









 二人であーだこーだじゃあそーだどーだ話して、ある程度の案を出してから後日麦兄妹を交えて話すことになった。




「……よし。じゃあ連絡は私からやろう」

「私は何も知らないということで。よろしくお願いします」

「あぁ」



 月火はパソコンを片付けると、荷物を持って立ち上がった。



「それじゃ」

「……月火」

「はい?」

「人の気持ちに正解なんかない。他人が理解できるなど有り得ないことだ。……人の気持ちに悩むのはお前だけじゃない、不安がるな」

「さすが校長、教師の鏡ですね」

「何千年生徒を見てると」

「担任したことないくせに」

「カメラは古くからあるんだぞ! あと私の耳は全校に張り巡らされてるからなッ!」

「はいはい」



 月火はぷりぷり怒る麗蘭を軽快に笑いながら、麗蘭を見て少し笑みを深めた。



「それでも、さすが校長です」

「……ふん! さっさと帰れ問題児」

「照れてる〜」

「さっさと帰れ問題児ッ!」







 二人の悩みを抱えながら帰ると、先に帰っていた火音が廊下に丸まっていた。



 突如の出現にビクッと震えたが、のろっと顔を上げる。



「……おかえり」

「た……ただいま……」

「遅かったな」

「麗蘭と話を……。こんなところでどうしたんですか?」

「遅かった」

「すみません、中行きましょう」




 月火は火音を連れて中に行き、着替えると髪の毛をまとめてご飯の用意をした。


 今日はちょっと遅くなりそう。



 火音に火光から行っていいかと連絡が来たので、三人分かな。水月は今日会議でいないので。






 タブレットがないせいで精神不安定の火音はソファにのたうち回っている。最近よくのたうち回っている。元気なようで何よりだが。




 そのうち火光がやってきて、のたうち回っている火音の動画を撮って、部屋に引っ込んで行った。

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