第4話 私のやりたかったこと(上)
『そういえば
ルイスさん…ユイナで大丈夫ですよ
今はただの一般人ですし様付けなんてしないで大丈夫ですよ』
「えっ…
さすがにそれは…」
ルイスはユイナの言葉に戸惑った
ユイナ自身はあまり様付けに関してあまり気にしていないようだったけど
この国では幹部様は王の次に上位の立場でありそれに元とはいえ就いていた身だ
それにユイナ自身は貴族出身のお嬢様だったからだ
ただユイナ自身は前世の記憶を思い出し自身が貴族出身のお嬢様であることと現在リーチェ家の当主というっ子とは
頭からすっかり忘れていた。
「ユイナ様…
ユイナ様は現在リーチェ家のご当主だったわよね…」
『…!!』
ユイナはその言葉を聞き自分が貴族出身で両親を亡くしたことで自分が当主だということを思い出したが
前世のことを考えるとユイナは自分の名前に様を付けられることに違和感しかなかった
『(…忘れていた
お父様、お母様が亡くなったことで城に幹部として住み込みで働いていたから
現当主ということ忘れていたわ
まぁでも亡くなったときに家以外の爵位などは返上し、当主とは名ばかりだし…
何なら城から追い出されたことで間違いなくただの一般の人と一緒ということよね)』
『あの…
私は城から追い出されている身ですし
ルイスさんと何も変わらない一人の人間ですし気にしないでください』
その言葉にルイスは少し驚いたようだったけど
笑顔になって「わかったわ」と返した
ルイス自身ユイナの人となりは会話をしていて身分に関してはあまり気にしない性格だとは思っていたが
貴族出身のお嬢様で様付け以外で呼ばれるのは城の重臣や同じ爵位、また幹部たちのみだと思っていた
「じゃあ "ユイナちゃん"って言わせてもらおうかしら」
『はい!!』
ユイナはとてもうれしそうに笑いながら返事をした
「ユイナちゃん
もう体調は大丈夫かしら??」
『はいもう頭が痛いのもおさまってきてるので
大丈夫だと思います』
「そう?
ユイナちゃんはこれからどうするの??」
『そうですね…』
ユイナはこの後どうしようか正直少し困っていた
自分の家はあるが長年住んでいない家であるはたして現在も暮らせるのかどうかわからないのだ
ただお墓参りにはいきたいと思っていた
そのあとはまだ考えていなかったしばらくは日雇いでの仕事を探して行こうかなと思っていた
『一度両親の墓参りに行ってからどこかの町で仕事を探してみようかと思っています』
「あっ…
ユイナちゃんのお父さん、お母さん
リーチェ前当主様と奥方様も亡くなられてたわよね
ごめんなさい…」
ルイスはとても申し訳なさそうに眉尻を下げどこか泣きそうになりながら
ユイナにそう返した
『気にしないでください!!
もう父も母も亡くなったのは結構前のことですし…
寂しいと思うこともありますが大丈夫ですので』
「…っ」
ルイスはユイナの言葉を聞きながら言葉を詰まらせ
少し思いつめた顔をしながら窓を見つめて話し始めた
「…ユイナちゃんは強いわね」
『えっ…?』
そう一言つぶやくとルイスは窓を見つめていた
ユイナはその視線の先に目を向けると小さな十字架のついたお墓が目に入った
『あっ…』
「ごめんなさいね…
少し前に娘と夫を瘴魔獣の事故で」
瘴魔獣とは瘴気をまとわせながら襲ってくる魔獣のことでその瘴気に充てられた人間を狂わせ
人間が人間を襲うようになる病気のことだ瘴魔獣自身も厄介だが人を狂わせて人を襲うようになるため
城では大いに警戒をしている
出現したらルルの率いる魔法部隊で攻撃を止めながら私たち戦闘部隊が魔獣を駆除するようになっている
ただ最近は瘴魔獣の出現が活発化して瘴魔獣の被害にあう国民が増えていた
ルルは世界では珍しい光の魔法を使用し一部では聖女の再来とまで言われている人間だった
そのためルル自身は幹部に入り魔法部隊をまとめていた
「夫は瘴気でおかしくなった人に襲われそうになっているのを娘がかばったみたいでね
娘を何度も何度も刺そうとするのを夫が止めようとしたけど夫も…」
泣きそうだけど泣かまいとしながら話すルイスは
見ているこっちも泣きそうになるくらい辛そうで痛そうで
ユイナは自分の父や母が亡くなった時のことを思い出しそうになり目頭が熱くなった
『(私にも魔法があったらこんな風に苦しんでいる人を助けたりできたのかな
ルルが魔法で止めている間に魔物を駆除するしかできないのはどうしてなの?
私に今できること何かないの…)』
『お墓に行ってきてもいいですか?』
「…えぇ
こんな話ごめんなさいね…
ユイナちゃんやお城の方たちだって守ってくれているのに」
ルイスは悲しい表情を浮かべながら弱々しい声で返した
最初にあった時の元気は空元気だったのではないかとユイナは思った