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桜の都と少女の恋  作者: 久野真一
第三章 京都紀行
13/28

第13話 デート前の会話

 ゴールデンウィークを数日後に控えた四月二十六日(月)の夜。

 僕は、ネットで見つけたサイトを見て、悩んでいた。

 ページタイトルは「嵯峨野(さがの)トロッコ列車」。

 レトロなトロッコ列車に乗って、移動できるらしい。


(めぐみ)ちゃんを誘っていきたいなあ……」


 見れば車内もかなりいい雰囲気だし。

 ただ、かなり人気らしく、事前に席予約がほぼ必須らしい。

 というわけで、予約サイトを開いたのだけど、残席残りわずか。

 一応、五月三日にどこか行こうということにはなっている。


 しかし、通話してOKか聞いてからだと、売り切れるかもしれない。

 仕方ない。多少値は張るが、先に二人分買ってしまおう。

 プランがおじゃんになったら、二人分のチケット代二千円が無駄になるだけだ。

 社会人になってから、お金は貯めているし、これくらい何でもない。


「恵ちゃん、今度の五月三日のデートなんだけど」


 少しだけ緊張しながら、電話越しに話を切り出した。


「ひょっとして、どこか行きたいところ、見つかりました?」

「うん。保津峡(ほづきょう)ってところで、トロッコ列車で行けるんだけど」


 と言いつつ、ページへのリンクを送る。


「レトロでいいですね。行きましょう!あ、でも、予約必須みたいですよ?」


 ああ、当然、そう来るよね。


「今から、大急ぎで予約するから。ちょっと待ってて……」

「あ、はい。予約出来なかったら、無理しなくていいですからね?」


 電話口の向こうからは心配そうな声。

 悪い意味ではないとはいえ、騙している事に罪悪感がある。

 予約操作をするフリをして、しばらく無言でカタカタとキーボードを叩く。

 

「よし!予約出来たよ!」

「さすが、ITエンジニアですね。凄く早いです!」


 少し興奮気味の恵ちゃん。うう。事前に予約しといたとか言い出しづらいな。


「はい。予約票送っとくね」


 ネットで発行された予約票の画像を送っておく。

 よし、とりあえず、これで、一見落着。と思ったのだけど。


「あの、裕二君。これ、発行日時が二十分くらい前なんですけど」


 しまった。予約票にタイムスタンプが書かれていたか。

 

「裕二君が電話してきたの、十分くらい間ですよね。どういうことです?」


 ああ、しまった。余計な小細工を弄したのが裏目に出た。


「ごめん。実はさ……」


 と、正直に、先取りして予約しておいた事を伝えた。


「裕二君、案外見栄っ張りなところあったんですね」


 電話口の声は楽しそうだ。


「ああ、もう。どうせ、見栄っ張りですよ」


 ああ、もう。恥ずかしいやら何やら。


「でも、嬉しいです。そんな小細工してまで、頑張ってくれたんですよね」

「ま、まあね。怒ってないの?」

「怒れるわけないですよ。というか、むしろ申し訳ないくらいです」

「そっか。とにかく、当日は楽しもうね」

「はい。ところで……今度は、期待していい、んですよね?」


 少し小声で、何やらぼそぼそとしゃべっている。

 期待って……ああ、そういうことだよね。


「うん。デートの後、僕の家に寄ってってよ。その……ちゃんとするから」


 僕も一人の男として、彼女とそういうことをしたくないかといったら嘘になる。

 だから、今度はちゃんとしたい。


「はい。じゃあ、デートも、その後も、期待してますから」

「あ、そうそう。保津峡からは、結構歩くから、歩き易い服装で来てね」

「ひょっとして、山道ですか?ハイキング用の服がいいでしょうか」

「道路は舗装されてるみたい。動きやすい服で来てくれば大丈夫」

「それなら、スカートでも大丈夫そうですか?」

「マップスの写真見た限りだけど、大丈夫かな」


 しかし、何故にスカート?パンツルックの方がいいと思うんだけど。


「良かったです。じゃあ、当日を楽しみにしていますね」

「ああ、僕も楽しみにしてる」

「それじゃ、おやすみなさい。大好きです、裕二君♪」

「あ、ああ。僕も、大好きだよ、恵ちゃん」

 

 電話の後に「大好き」を言うのに、もう照れがないのにふと気がつく。

 それもこれも、彼女がガンガンアタックしてくるせいだ。


「さーて、当日のデートプラン練らないと」


 トロッコ列車での移動時間は二十分に満たない。

 その後は、景色を見ながらの散歩が主だ。

 

「帰りに、なんか、いい感じの喫茶店でも入れたいな」


 などと、寝るまで、デートプランについて考えたのだった。


「しかし、デートよりも、その後だよなあ」


 もう彼女とは何度かデートしている。

 今更、気まずくなる心配はないだろう。

 ただ、その後のあれこれはまた別だ。


(年上として、リードしないと)


 そんな事が出来るのかどうか。

 それはわからないけど。

 予習もたっぷりしておかないと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 策士策に溺れる まあ、そんな抜けている部分もいいんでしょうね
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