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終末にはゾンビと銃撃戦を  作者: タコの人
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第2話 モール その2

実在の銃は、初登場時にメーカー名を合わせて書くことにします。今思いついた。

つまり、メーカー名がなく、名前だけポンと出て来た銃があれば、それらは私の脳の産物です。


あと、この世界の人達は、大体みんな護身用で拳銃を持ち歩いていたが、平和な世の中で使う機会がなかった、ってことにしときます。

因みに、ここにはスミスもウェッソンもヘッケラーもコッホもコルトもブローニングもレミントンもいました。同名の別人か、異世界転生した結果かは皆さんのご想像にお任せします。

「これは.40S&W…。でこっちは…お、.380ACPだ。よし、これで全部だね」

 サヤとジョーが様々な弾薬を取って店から出て来ました。

 その目に、倒れて動かないゾンビの身体を探っている、しゃがんだ小柄な少女の背中が映りました。

「ちょ…カレンちゃん? 何してるの!?」

「あ、もう終わったんですね」

「よいしょ」と呟きながら立ち上がったカレンは、拳銃と、そのマガジンを握っていました。ゾンビの上着の内ポケットに入っていた物のようです。

「もしかして、それを…?」

「はい。もう、この人は使わないので…」

 カレンは、ついさっき自分が左目を撃ち抜いたゾンビを、哀しげに見つめます。

「そ、そう…」

 サヤには死体を漁るという発想がなかったので、ただただ驚いていました。

 よく見ると、そこら中に拳銃が散らばっています。カレンがマガジンだけ抜き取った跡でしょう。

「丁度これで最後です。行きましょう」

 カレンは手の中の拳銃を投げ捨て、マガジンをバックパックに放り込むと、改めて自分の拳銃をホルスターから抜きました。

「分かった。じゃあ、私が先頭ね。二人は横に並んでついてきて」

 サヤが、45口径の拳銃を片手に持って歩き始めます。

 カレンもジョーと一緒に続きました。もうこの階にゾンビの影は見えませんが、それでも一応、周りを警戒しながら。

 さて、差し当たっての危険がなくなると、カレンは気になっていたことを思い出しました。ので、歩きながらジョーに聞きます。

「そのアサルトライフル、なんて言うんですか?」

 ジョーが両手で持っているのは、M4カービンに似た、しかしハンドガードが真っ直ぐなライフルです。

「これか? これはヘッケラー&コッホ社の『HK416』だ。M4カービンを改修して作られた銃だよ」

「ああ、見たことあるシルエットだと思ったら…」

 次にジョーは、わざわざリボルバーをホルスターから抜いて、カレンに見せてくれました。

 指に合った形のグリップは黒。ステンレスのフレームが銀に光っています。

「スミス&ウェッソン社の『M629 クラシック』。一時は世界最強だったリボルバーの、派生モデルさ」

 ジョーは笑いたかったのでしょうが、顔が引き攣っているようにしか見えませんでした。悲しいかな。

「ついでに、サヤの銃も紹介しよう。あいつのは、中々面白い」

 真顔に戻ったジョーは、サヤの背中に吊られて揺れているショットガンを指します。

 角張ったフォルムの、近未来的な印象を受ける銃です。

「UTASマキナ社の『UTS-15』。ポンプアクション式のショットガンだ」

 ポンプアクション式というのは、銃身下部に付いているフォアエンドを動かして散弾を薬室に装填、同時に撃ち殻を捨てるシステムのこと。大抵は、銃に固定された筒状のマガジン(チューブラーマガジン)に一発ずつ込めた弾を撃ちます。ボックスマガジンよりキャパシティでは劣りますが、その分確実に作動するのが強み。

「…? 面白い?」

「見ただけでは分かりにくいかも知れないが、チューブラーマガジンが二本付いてる」

「…二本ですか?」

「ああ。銃の左右にあって、片方に7発、薬室に1発で15連射できる」

参考までに書いておくと、超有名な普通のショットガン、レミントン社製M870のマガジンキャパシティは8発です。

「それは…凄いですね」

「そうだな。だから面白くて好きだと、あいつは言っていた」

「はあ…」

 カレンはこの二人の関係が気になりましたが、今はスルーです。それよりも、

「サヤさんが持ってるあの拳銃、なんですか?すっごい不思議な形してますけど」

 それはそれはゴツい大型の拳銃でした。元々のサイズが大きめなのでしょうが、撃鉄を挟むようにして取り付けられた二枚のプレートや、ミートハンマーに似たスパイク付きのマズルガード、それにグリップ底部の後ろの方にある直線的なフックのような部品が、威圧感を醸し出しています。

「ああ、あれか…。あれは、コルトのM1911――ガバメントの改修モデルを、更にカスタムした物だ。Z-Mウェポンズ製、『ストライクガン』という」

「何故に、あんなゴテゴテしたカスタムを…?」

 カレンは、動いていないエスカレーターを、サヤに続いて降りながら尋ねます。その後ろにはジョーが。

「近接戦闘、CQCで使うからだ。乱闘時にハンマーやスライドを保護し、相手を殴ったり引き倒したりするためだな」

「なるほど…」

 確かに、あの鉄槌の如きマズルガードで殴られたらとても痛そうです。

「特に、ゾンビどもは身体が脆い。思い切り力を込めて殴ると、頭蓋骨がへこんだりする。だからあの銃はゾンビに有効なんだ」

 ジョーがそう言ってエスカレーターを降りきったとき、

「はい二人とも、お喋りはそこまで! いるよ!」

 サヤの声が響きました。


 それはまさに、『格闘戦』でした。

 サヤの右手が閃くと、その中に握られた拳銃がゾンビの横っ面を強打します。吹っ飛んだゾンビには一瞥もくれず、すぐさま次の相手へ。

 掴みかかって来たそいつを、サヤは左手を振って撃退しました。拳で殴ったのではまず出ない、ゴチン、という音がして、ゾンビはフラフラ倒れていきました。

 音の要因、やたら攻撃的な見た目のフラッシュライトは、サヤの左手の中で鈍器と化していました。

 おや、今度は本来の使い方をされるようです。サヤは、数十メートル先まではっきり見えるぐらいの光を照射します。

 …ゾンビの顔に向けて。

 あまりの眩しさに、某ユーロビートに乗って踊るグラサン男のようなポーズを取ったゾンビは、顔の前に掲げた両腕の隙間から入って来た45口径弾に頭をブチ抜かれ、倒れました。

「さ、これで全部かなー、っと…」

 五、六人分の物言わぬ死体に囲まれたサヤは、そう言って額を拭いました。

「お疲れ様です。お任せしてしまって、ごめんなさい」

 エスカレーターの上の方に退避していたカレンとジョーが降りて来ます。

「いーのいーの。その代わり、次にいた奴はカレンちゃんに頼むから。ジョーに聞いたでしょ?」

「うっ…。わ、分かりました…」

 サヤが格闘戦を演じている間、カレンはジョーから色々と聞きました。

 曰く、今、サヤが一人で戦っているのは、二人以上で一体のゾンビを撃つことによる、弾薬の無駄遣いを減らすため。本当に危なくなったら勿論援護する。

 曰く、自分達は外の駐車場に車を停めてあるから、そこまで行けば確実にここを離脱できる。

「ここは…五階かぁ」

 サヤが、エスカレーター脇のフロアマップを見ながら呟きます。このモール、全部で六階建てのようです。

「カレンちゃん、どっか見たいお店とかある?」

 会話のキャッチボールがいきなり飛んで来ました。

「そうですね…。あ、四階にある、アウトドア用品店に行ってみたいです」

「おっけー。ジョーは?」

「特にない」

「分かった。じゃあ、ひとまずの目標は、ここから出ること。寄り道してアウトドア屋に行く。それで良いね?」

「はい」

「構わん」

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