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最弱勇者と万能メイド  作者: 浮遊する生物KURAGE
第1章 異世界召喚と女王騒動
6/42

06話 黒幕を調査して

ペースを上げるどころか少々遅らせてしまいましたね…(汗)。

今後はなるべく気を付けたいと思います。

「…さま、勇者様。お目覚めになられましたか?」


「ん?あぁ、ルルナが助けに来てくれたのか…。有難う」


「お礼には及びません」


そこは、ピアナの部屋の床だった。

…確か、俺はあの男に殴られた後、多分意識を失ったからあんまり覚えがないんだけど、殺されていないという事は、ルルナに助けられてしまったようだ。

いくらメイドとはいえ、美少女に助けてもらうってかなり男としてのプライドが…気にしたら負けだな。


「ところで、ピアナ様を亡き者にしようとしている黒幕、であろう人物に目星がつきました」


「へ?もう分かったの?」


「当然で御座います。その者の名はゲオルグ=ムルド・ハイ、この国の大臣を務めております」


ゲオルグ…。どんな人だろうか?怖いおじさんかな?…いや、そりゃそうか。


「ゲオルグ…?聞いたこともないわ。ルルナ、そいつはどんな奴なの?」


「セイン様に最も近い大臣で、政治的な事に関しては全て彼が受け持っていたそうです。今から追跡して詳細を確かめますが、十中八九、間違いないでしょう」


「そりゃあ…そうかもね」


藤原さん来たぁ…。日本史でも悪者感半端なかった藤原さんの異世界バージョン。藤原四兄弟も自分達にとって邪魔な皇族を殺したりしたらしいからなぁ…こっちでも多分間違いないんだろう。


「…セインに伝えないと」


というと、ピアナは側にあったベルのような物に手を伸ばそうとして、ルルナに止められる。


「ピアナ様、お気持ちはお察しいたしますが、今そのような事をすればかえって奴等を刺激するだけです。ましてや、その報がセイン様に届く前に、伝えに行った者が殺される可能性すら御座います。ご遠慮下さいませ」


「…じゃあ、どうしたらっ!」


「全てはわたくしが終わらせます。その為のメイドですから」


「ルルナ…」


()()()()メイドって…。とは思ったが、敢えて口には出さないでおく。


「ですが、わたくし1人では多勢に無勢、万事解決する事はないでしょう。その為に、勇者様のお力が必要なのです」


「…俺に、どうしろと?」


「今から力をつけていただく事は極めて難しいです。ましてやこのような一刻を争うような時に、のんびりと訓練しているだなんて、勇者にあるまじき蛮行と言えるでしょう」


「なら…」


「勇者様ならば可能で御座いましょう?『身体強化』と『育成』のスキルがあるではないですか」


「あ、あぁ。…ところでスキルって?」


「ご存知なかったので?今までご質問なさらなかったので、てっきりご存知なのかと。スキルというのは、個人個人独自の力、と申し上げればよろしいでしょうか?兎に角、普通他人は所持していないような、特別な力のことを指します。勇者様も召喚の時にお聞きになられましたでしょう?あれのことです。」


「そんなのあるのか、異世界ってスゲェな…」


「話を戻します。勇者様のスキルに、『身体強化』と『育成』が御座います。一般的に『身体強化』には自分及び味方の身体能力を一定時間著しくあげられる、という効果が、『育成』には自らの配下の能力及び成長度合いを向上させる効果が御座います」


「え?それなら『育成』は常時発動ってこと?それなら今と変わんないじゃん」


「一度でも意識しなければ発動致しません。という事は、勇者様はご自身の力、つまり世界の存亡にご興味がない、という事でしょう」


「別にそういう訳じゃないんだけど…」


「冗談です。兎に角、勇者様は内なる力の流れに身を委ねてみて下さい。そうすれば、見るべきものが見える筈です」


「うん」


…目を閉じて、自分の中にある力に意識を集中してみる。

暫くすると…


(スキル、身体強化の能力の開花に成功しました)


なんだこの声?まあそれは良いのだが…。


「スー、ハー。…身体強化っ!!」


「「「……」」」


「言葉だけでは何も出来ません。意識してください」


はぁ…?むっずかしいなぁ…。それとも慣れたら無意識に出来るようになるのにかなぁ?

まあいい、もう一回。…力を意識、意識するんだ。


「身体強化!!」


すると、俺とルルナそしてピアナの足元に、魔法陣?のような、複雑な幾何文様が描き出され、そして、各々の身体に吸い込まれるかのようにして、消えた。

…んんー?なんだか普段より身体が軽いぞ?


「凄い…!身体が軽いよ、勇者様!それに…机だってこんなに簡単に持てる!」


「本当に…やはり貴方様はこれでも勇者様なのですね…。一介の『身体強化』のスキル持ちでは、このような強い強化は施せません。」


「これでもってなんだよ…」


いや、分かるけどさ。とはいえ、こんな俺にも他人に勝つ術があったというのは素直に嬉しい。その方法は、


「他人に任せっきり法最強説」


「…世間体は宜しくありませんが、確かに勇者様は援護系統が強いご様子。その方が良いのかも知れませんね。では、この調子で『育成』のスキルも」


「うん、分かった」


と、同じように育成スキルを開花させると、やはりルルナには凄い強化効果が掛かったようだ。

いつもと同じポーカーフェイスながらも、その興奮は少なからず伝わってくる。


「…失礼、少々取り乱しました。とはいえ、勇者様のスキルの効果の高さについては分かりました」


「いやでもさあ、人手が足りなくない?」


「ご心配なく。『我天ト理ニ従イ力ヲ行使スル。遍ク地上ノ万物ヨ、今我ガ手ニ集マリ我等ヲ守ル化身トナレ』錬金、ガーディアン」


そこに現れたのは、身長が俺より少し高いくらいの、ロボット、というかぶっちゃけ機動戦士だった。


「わたくしは錬金魔法を使用できます。問題は消費魔力が莫大であることと、生み出すことの出来るガーディアン単体での戦闘力があまり高くない事でしたが…勇者様のスキルで、戦闘力に関しては問題がなくなるでしょう」


すげえ…カッコいい!ルルナやべえマジ神かよ!?と、俺が目を輝かせていると、


「何というか…」


と、ピアナが徐ろに口を開く。


「勇者様も、なんだかんだ言って男の子ですね」


「なっ!」


「そうですね。別に良いんですよ、勇者様が男の子らしくたって。わたくしは勇者様がどんな勇者様であってもつき従わなければならないのですから」


ここぞとばかりに便乗するルルナから、先程の仕返し、とばかりのしてやったり感が伝わってくるのは気の所為だろうか?

とはいえ、ここは開き直ってやろう。


「ああ、俺は男だ!男で何が悪い!」


「男、ではなく、男の子、ですよ」


「良いよ良いよガキンチョで!」


全く!ホントにこの娘俺のメイドなのか?


「…やっぱり、勇者様と一緒にいると、私、楽しいよ。ついさっきまで怯えてたのが嘘みたい。…ルルナ、勇者様…」


「はい。何で御座いましょうか?」


「絶対に…その黒幕を倒してきてね。私はまだ死んじゃいけない。父上の娘として、まだまだやらなきゃいけない事がいっぱいあるの!」


「…そうですね。それ以前に、わたくしにはピアナ様をむざむざ殺させるつもりは御座いません。ご安心下さい」


「…有難う」


俺達はピアナをベッドに寝かしつけ、その後ガーディアンを量産して一夜を明かした。

…べつに変な事はしてないからね、そこ絶対誤解しないでね!


〜★〜★〜★〜



翌朝、寝不足気味の頭を無理矢理起こし、上に伸びをする。


「では勇者様、ゲオルグの調査に行って参ります。ガーディアン達は残しておりますからよっぽどのことがない限りは大丈夫かと存じますが、ピアナ様を宜しくお願い致しますね」


「勿論、ピアナは守るよ、コイツ等が」


「…些か不安になるお答えですが、行って参ります。午前中には戻って参ります」


というと、ルルナはドアを開けて俺に一礼し、消えていった。

今この場にいるガーディアンは8体。ルルナ曰く、明日への魔力の貯蓄等を考えると、これが限界だったそうだ。


「んん…ふわぁ〜あ。あ、勇者様、お早うございます。ルルナは?」


「ルルナなら、さっき出て行ったよ」


「そう、ですか…。ちょっと、心配です…」


「ルルナならきっと大丈夫さ!だってあいつ、強いし」


「…そう、ですよね!ところで、このガーディアン達…これだけいると、落ち着かないんですけど…」


「でも、コイツらがいないとピアナを守りきれないし…」


「それは勇者様が弱いからですか?」


「ごめん…」


「あ、そういう意味で言ったんじゃないんです!ホント、ごめんなさい!」


「いや、まあ良いんだけど。ホントの事だし」


まあそれは良いんだが…飢え死んでないかな、あの食いしん坊妖精。

いや、人ですら1日食事を抜いただけじゃあ死なないのに、それで妖精が死ぬわけないか。


(ぐううぅ〜)


ハッ、とピアナが赤面。


「ち、違うの!い、今のはね!」


「良いから良いから。…当たり前だけど、この部屋に食べ物とか、無いよね?」


「は、はい。無いですよ?」


…これは不味いかも知れない。まあ俺は良いんだけど、箱入りお嬢様のピアナにとって朝食抜きの日が一体幾らあっただろうか。


「ピアナ、ちょっと我慢出来るかな?」


「は、はい、頑張ります」


お、王女だけあって流石にそこら辺の分別はつくようだ。


「…勇者様、私、暇です」


「…うん、そうだね」


「え、えっと…!その、勇者様の世界の遊びとか、何か教えてくれませんか?」


「遊び、ねえ…」


トランプ、オセロ、将棋、チェス、囲碁…。どれも今から遊ぶのは難しい。

じゃあ…


「しりとり、なら良いかな?」


「何ですか、それ?」


俺はピアナにしりとりの説明をする。


「面白そうですね!では、私から…しりとり、です」


「じゃあ、りんご」


「?…勇者様、それじゃあ繋がりませんよ?」


「え……あ!」


俺のいた世界とこの世界では言語が異なる事を失念していた!これじゃあしりとりは出来まい。

…ところで、言葉の翻訳ってどのように行われているのだろうか?ルルナならその辺りについても知っているかもしれない。後で聞いてみるとするか。


「言葉の違いで出来そうにないみたいだ。他の遊びは…そうだ、これならどうだろうか!」


自分の指で相手の指を叩いて足し算をし、相手の両手をどちらもダウンさせれば勝ち、というあのゲームだ。


「それでは私から…えいっ!」


「痛っ!いや、そんなに力入れなくて良いでしょ!?」


「ご、ごめんなさい!」


最初の方こそ俺にすぐ負けていた彼女であったが、学習能力の高いピアナはメキメキと力を伸ばし、恐れていた事態に…。


「…終わりませんね」


「出た、このゲームのあるある、パターン化!」


そう、操作がパターン化して終わらない、というアレだ。

んん…何も使わずに出来る遊びって案外少ないのかもしれないなぁ…。他に何かあるかなぁ…?


「…勇者様、ピアナ様。何故そのような神妙な面持ちで考え事をしていらっしゃるのですか?」


「あ、ルルナ!お帰りなさい!」


遊んでいるうちにどうやらそれなりの時間が経過していたようだ。

と、すぐさまルルナに駆け寄り抱きつくピアナ。


「無事でよかったぁ〜!」


「この程度で勘付かれるようでは、隠密行動などやっていけませんから」


何とも微笑ましい光景だ。ルルナが一切表情を崩さないのを見ると、少しシュールに感じるけれど…。


「こほん。勇者様、黒幕はどうやらゲオルグで間違い無いようです。ですが相手も中々に巧妙で、自分が関わっているという確実な証拠となる痕跡を残さないのです。私は部下にそのような事を支持しているのを見る事が出来ましたが…」


「でも、王族の権利をピアナが使えばそいつくらい簡単に辞めさせられるんじゃないのか?」


「難しいでしょう。ゲオルグは亡き王の辞任命令すらも回避した男。王族とはいえまだ幼いピアナ様の命令が通るとは、到底思えません」


「じゃあ、証拠を握れば良いって事?」


「そうなりますね」


「…ルルナ」


俺は彼女にこっそりと耳打ちする。


「それならばぴったりの方法が御座います」


ニヤリと微笑を浮かべる俺と、それを理解したメイド。ただピアナだけが、ぽかんとした表情を浮かべていた。


…異世界生活12日目、未だ終わらず。

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