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最弱勇者と万能メイド  作者: 浮遊する生物KURAGE
第3章 虹の竜と激動の戦乱
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09話 2匹の竜

遅れてしまい大変申し訳御座いません!

重ねて前言撤回です。あと1話で第3章を締めることにします!色々と申し訳無いです!

携帯電話擬きを持った俺達は再び神山ダルアスの中へと入り、急いで中央部へと向かった。

いくらあの男が手負いであるとはいえ、化け物級に小回りが利く奴だ。きっとイリスも苦戦しているだろう……と、思いきや、である。

中央の空間から聞こえてくるのは竜のブレスの音でもなければ、拳が鱗を叩き割る音でもなかった。代わりに聞こえてきたのは、遠くで何かブツブツと呟く男の声だった。


「イリス、大丈夫!?」


「…………」


返事はない。それに、ライディアが何かをしているという事実を加味すると、中々まずい状況にあると見て良いだろう。


「ルルナ、行こう!」


「ギシャァァアア!!」


「勇者様っ!」


ルルナが剣で()()()()()を弾き、俺を抱えて距離を取る。

その刃の持ち主は、いくつもの目を持つ、ドロドロとした人型だった。


「ルルナ、こいつ等って……」


「キメラ……ですね。既存の魔物や動物そして……人間を、掛け合わせた人工の魔物。まさか、奴が……」


(むご)い……」


デティアが呟き、バゼシスも絶句したかのようにその場に立ち尽くす。

生き物が元で、こんな醜悪なものを……。

倒したくない。だけれど、倒さなければならないのは分かる。事実、既に俺達は周りを囲まれてしまっている。


「倒さなきゃいけないのは分かるけど……」


異形の叫び声……否、悲鳴から、材料となった人間達の、動物達の、魔物達の怨念が伝わってくるのだ。終わらない苦しみと、それを与える事に何の躊躇いも無い人間という種族への、怨念……。


「ギシィィイイ……」


キメラの体表に現れた無数の眼が、俺達を睨む。きっと自身よりも恵まれた俺達を、憎んでいるのだろう。

ルルナも同じ事を考えたのだろうか。左手で俺の右手をぎゅっと握ってくる。

ふと、ルルナが口を開く。


「……みんなにその存在だけで嫌悪され、傷つけ、虐げられる苦しみは……わたくしにも、分かります。だって、わたくしも、同じだったから……っ!」


ルルナが下唇を噛み、苦しみや怒りを堪えるようにする。俺の左手を握る力も強くなったが、すぐに霧散していった。


「もう貴方達を救う事は、わたくし達には出来ません。ですが……せめて、幸せに、逝って……っ!」


ルルナが呪術を唱え始め、その身体が()()()()()()()()()()

そしてその光は優しくキメラ達を、俺達を包み込むようにして身体に溶け込んだ。とても温かくて、まるで……()()()()()()()()のような……。


俺の頭の中に、ふとその記憶が浮かび上がってくる。


温かく包み込んでくれるかのような日差しと、自分と同じ高さで揺れる草花。ふと目をやると、柔らかそうな純白のドレスの裾がひらひらと舞っている。

俺は思わずその持ち主へと手を伸ばす。この優しい温もりを、何処か遠くで忘れてきてしまった温もりを、どうしても、どうしても……!


だが、現実は無情にも俺がその温もりに手を触れる事を許してはくれなかった。ふと意識が戻っていき、それとほぼ同時に視界も戻ってきた。


「ァ……ァァ……」


今にも消えてしまいそうなキメラ達が、ルルナを見ている。まるで、どうしてもお礼を言いたくて、その場へ留まろうとしているかのように……。

一体どれほどの時間が経っただろうか、不思議な音と共にルルナの纏っていた光が弾け、それと同時にキメラ達も光へと還っていった。それはそれは美しく、神秘的な光景だった。

気付けば俺は涙を流していた。横を見るとルルナも少しだけ、目尻に涙を溜めている。

俺は一体、あの温もりを何処へ忘れてきたのだろう。何故、忘れてきたしまったのだろう。

けれど、今また垣間見る事が出来たって事は……、


「また、会える筈……」


「……?勇者様……?」


「ああ、何でもない。さあ、早く行かないと!」


「はいっ。あれを野放しにする訳にはいきませんから」


「そうですよ!ボーっとしてないで早く行きましょう!」


そして始まるのはこの戦場に於ける最後の戦い。けれど、これが彼等の運命を狂わす。それを、彼等は未だ知らない……。


〜★〜★〜★〜


「よし、作戦通り行こう。未だバレていないって事は、多少近づく音がしても気付かない筈だ」


俺は小声でそう言う。事実、俺達とイリス、そして奴しか生きている者がいないこの状況下では小さな物音でも反響してよく聞こえるにも関わらず、奴は集中していて気が付いていない。

ルルナ達は無言で小さく頷き、すぐに標的との距離を詰める。

デティア達が高速で魔法の詠唱を始めたが……一歩遅かった。


「おヤオやァ?随分とオそかッタデスねぇ?そのお陰デ術式もカンセイしちャイましたよォ?」


イリスの前で何かをしていたライディアは、唐突に振り向き、それと同時に化け物じみた速度で俺達から距離を取る。


「お前、イリスに何をしたんだ!」


「答える必要アリませンネェ……と、言いタイところデはアリますガ……まァ良いデしョウ。復活させルンですヨ、こノ山ノ真ノ主、()()()()()()()()()()をネ!!」


真の……主、だと!?一体、どういう……!?

ふと、資料館で読んだおとぎ話が脳裏に蘇る。

あのお話では、ヴァイスはたしか……っ!


「まさか……っ!」


「何かワカッたンデスかねェ?今ソコにイるヴァイスは、戦火ノ時代ニ功労を挙げたヴァイスの()。ソコのデカブツは今も憎き()()()()()()ノ地ニ眠ってイル本物と繋がっていルかラ……」


「ヴァイスを覚醒させて、王国を……っ!?」


そう言いながらルルナがライディアを睨みつけるが、奴はそれすらも心地好さそうにニヤニヤと眺めると、こう言った。


「それダケジャあナイ!連邦以外、全テ焦土ニシテやるサ!!」


なっ……コイツ、世界を滅ぼすつもりなのか!?


「『我天ト理ニ従イ妖ナル力ヲ行使スル。業火ノ魔人ヨ、彼ノ者ヲ消シ飛バセ!』サモン・イフリート!!」


デティアによって召喚された炎の魔人はライディアへと飛んで行くが、奴が腕を一振りしただけで消えてしまった。


「甘いデス。サテ、攻撃してきタトいう事は、反撃されル覚悟モお持ちデスよネェ?」


ライディアが掌から黒いオーラが迸り、デティアを包み込……もうとしたところで、背後から飛んできた光によって相殺された。


「させ……ない!!」


その声は、つい先程まで気絶していた筈の少女のものだった。

見遣ると少女は身体をふらつかせながらも、その双眸はしっかりとライディアを見据えて……否、睨んでいた。


「おヤオやぁ?さっきマで倒レテイタ筈ノ女王様ジャあありませんカァ?コレは面白クなってキマしたネェ」


「煩いっ!!お前の野望はもう既に打ち砕かれているっ!!今すぐに投降しなさいっ!!」


「マサカそうスルトでも?コノ素晴らシイ計画に水ヲ差ス等、言語道断デス!先ズハオ前カラァッ!!」


ライディアがピアナへと超速で向かって行くが、それを阻止するかのようにルルナが剣で受け止めようとする。


「させませんっ!!」


「ヤレ、オマエタチ!!」


ルルナの目の前に先程のようなキメラが5匹出現する。


「あっ……!申し訳ありませんが……消えて下さいっ!!」


ルルナが1匹のキメラを斬り伏せるが、それにしても数があまりにも多過ぎる!バゼシスも応戦しているが、このままではピアナが……っ!

クソ、こうなったら俺が行くしかない!!


「うおりゃぁぁあっ!!」


不意打ちで浴びせた体当たりがライディアに当たり、ライディアが5()()()()()ばかり吹き飛ぶ。

何が起こったのか、等と考えている暇は無い。

俺はピアナを抱えて全速力でルルナが戦う後ろへと戻ろうとした……が、そんな時間を敵が与えてくれる筈も無く、一瞬の内に距離を詰められ、蹴りを入れられる。


「ぐはっ……!」


脊椎をもっていかれたのか、信じられない程の痛みと衝撃が身体を穿つ。だけど、次に攻撃を入れられたら終わりだ。どうすれば……!!

思考がスローモーになっていき、途轍もなく速い筈の2度目の蹴りが、死神の鎌のようにゆっくりと迫ってくる。あ……そういえば……!!

間に……合えぇぇぇえええ!!


ふと時間の流れが元に戻り、ライディアが向こうの壁まで吹き飛ばされていくのが見えた。


「やっ!これで……終わりですっ!!」


ルルナ達の方も終わったみたいだが……。


「ぐ……あ……」


「勇者様っ!?ご無事ですかっ!?ピアナ様も!?」


「だい……じょぶ……だからっ、早く……奴を……っ!」


「無茶ばっかり……。ですが、承りました。バゼシスさん、デティアさん」


「はい」

「ええ」


これで、何とか、なるだろうか……。

ルルナ達の安否を確認しようと手を伸ばし身体を起こそうとするが、ふとその手に紅い液体がべったりと付いているのに気が付く。

俺のもの、ではない。見ると俺が抱き抱えたままのピアナは、ぐったりしていて呼吸も弱々しい。きっとあの隙に俺より沢山の攻撃を喰らったのだろう。


「ピアナっ……俺だよ……分かる……っ!?」


「ん……ヒロミ、君……。だい、じょうぶ?」


「それより、前にっ、自分の……」


「ご主人さま、ぴあなちゃん!」


「わ……2人とも、凄い血っ!?」


ソラとクルルだ。分かっても、返事をするのが辛い。


()()()()、たすけてあげて!すいじゃくちえんまほう!」


やはり若干の回復効果があるのか、痛みが少しだけ楽になる。


「ありがとう、ソラ、クルル」


「うっ……痛みがあるって……幸せな事、なんだ……」


どうやらピアナは『痛みすら感じない』というかなり危険なゾーンにいたらしい。だがこれで窮地は脱しただろう。


「あ、ヒロミヒロミ、アイツ倒されたみたいだよぉー」


「おお、それは良かった」


はぁ、これで一件落着、か。安心感からどっと力が抜ける。


「まずい……」


「え?」


「もしかしたら、もしかしたらの、話だけど、ね。……私はさっき、ダルアスとエルグランドを繋ぐ魔力の流れを絶ったの。このまま詠唱句が放置されたら……このライン上の魔力が爆発するかもしれないの」


「えっ、それって、詠唱を中断したらダメージを喰らうっていうのと……」


「原理的には同じだよ。でも、規模が違うの。アイツがそのまま魔法を完成させてたら、アイツだけがダメージを喰らって死ぬ筈だったんだけど……このままだと……」


「んー?どうなるのー?」


「ここから半径150キロ圏内は、焼け野原になると思う」


……異世界生活69日目、未だ終わらず。

ライディアさん、さようなら。最後は発言権すら与えられずに死んじゃったね。

……決して良い奴ではなかったですが。

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