01話 勇者召喚の儀
お初にお目にかかります、KURAGEです。
小説は…趣味が高じたもので、これが処女作です。
基本的に週1回以上のペースで、不規則に更新させていただくことになるのでは、と考えております(土曜日の投稿が多くなるかと思われます)。
若輩者ですが、何卒、宜しくお願い致します♪
その時、俺はとても浮かれていた。
何故だって?それは、俺が志望していた大学への合格が判明したからである。
俺の名前は山本宏海、読みはやまもとひろみで、年は18歳だ。小学校の時、友達からはよく、「ひらがなで書くと弱そう」だとか、「女子みたい」だのとよくおちょくられたものだ。
二度目になるが、そんな俺はとても調子に乗っていた。これから大学始まるまで遊び放題だぁ!だとか、これからが俺のモテ期襲来だぁ!だとか、バカなことを頭の中で考えていた。
それだからだろうか、俺は気がつかなかった。
そう、俺の頭上に迫る、硬式野球の球に!
そこから先、俺の記憶はない…。
〜★〜★〜★〜
次に俺が目を覚ましたのは、見覚えのない部屋だった。
「…気、付いた?」
「ん…どちら様ですか?」
俺の前には、これまた見覚えのない、幼い女の子がいた。
「私はここの住人。人間達は女神って言う。君、ヒロミは、これから勇者として、別の世界に召喚される」
「…は?」
この子頭おかしいのかな?病院連れてくべきじゃない?
…いや、その前に親に連れて行かなきゃ行けないね。
「えっと…君の名前は」
「…名前なんてない。だから、女神って呼んで」
いやいやいや、やっぱヤバいよねこの子!?
「分かんないだろうから、説明する。ここは神界。現実には色んな世界があって、ここからその内の幾つかが見える。ヒロミがいたのは、その1つ」
「…はぁ」
異世界とか本当にあったんだ。知らなかったわ。
…いや、この女の子の話を鵜呑みにするのはまずい。
「それで、ヒロミにとっては貴方は招待を受けた。それで、私はヒロミを殺した」
「ちょ、ちょっと待った!」
「ん?」
「今、俺を殺したって言った?」
「うん。だから何?」
「だから何、じゃないよ!人殺しといて何言ってんの!」
「殺してまた生き返らせるから問題ない」
この子コミュ障なのかな?っていうか生き返らせる、とは?
…まあ良いや。この子とは多分話が通じない。まだこの子の話を一方的に聞いていた方がマシだ。
それに、この子の話は現実に起こったことと符合する箇所が多いしね。
「はぁ…それで、俺をどうしようってわけ?」
「貴方を招待した世界に引き渡す。でも、それだけじゃ不憫だから、10個のスキル選択権をあげる」
「ゲームかよ!」
「似てるけど違う」
自慢じゃないが俺はその手のゲームをやったことがない。その辺の知識については、少々ラノベで読んだくらいだ。
だがこれ以上、このシュールな漫才(?)をやるわけにはいかない。だから俺は彼女の言葉に従うことにした。
〜★〜★〜★〜
「…ヒロミ、決めた?」
「う、うん…」
俺は心の中の動揺を悟られまいとしてなるべく平生を装って答えた。
「…本当にこれで大丈夫?」
「へ?」
「日常生活用のスキルだけばっかり…。こんなんじゃこの先…多分死ぬ」
死ぬ!?いや、それなら選択し直せばいいか。
「うぅ…実は、全っ然分かんなくって…」
そう、俺はどのようなスキルが必要なのか分からなかったのだ!
ということで日常生活に必要そうなスキルを選んだのだ。
だがここまで脅されたら変えないわけにはいかない。
ここで俺は頭を下げる!
「スキルに関する御指導、お願い致します!」
「…ごめん、もう時間ないから無理。向こうの世界の精霊から催促されてる」
「ちょ、ちょっとだけで良いので…」
「じゃあ向こうの世界に送る。また何かあったら呼ぶから。死なないように頑張って」
「ちょ、ちょぉぉぉぉおおお!!」
次の瞬間、俺の足元に魔法陣?のようなものが展開された。
そして次の瞬間、俺は奈落の底へ落ちていった…。
〜★〜★〜★〜
ザワザワザワ…。
何か人が囁き合うようにしている声が聞こえる。
…っていうかここ何処だ?なんか暗くて何にも見えないんだけど。
と思ったら、急に周りが明るくなった。どうやらここは豪華な部屋のようだ。
「ゆ、勇者様…お気づきになられましたか?勝手に呼び出しておいて大変図々しいことだと存じますが…どうか、この世界をお救い下さい!」
そう、俺に向かって言ってきたのは、服が若干豪華な中年の男性だった。
クソ!あの女神様(?)が言っていた事は本当だったんだな、ガッデム!
それにしても…この世界は一体何に脅かされているんだろう?何か人々が俺を見つめる視線も、キラキラしてたり、ウルウルしてたりで、凄いことになってるし。
異世界から人呼び出して救って下さいって言うくらいだからよっぽどの事なのだろうか?
「まぁ良いけど…この世界は一体何に脅かされているんですか?」
「この国には、偉大なる故人、マルコ=イシュプルが記した予言書が現世迄伝わっております。その予言書には『今から986年後に、かの魔王ヴァルナールが復活し、世界に災厄をもたらすだろう』という内容が書かれておりました」
「で、その魔王が復活して暴れてるってわけ?」
「いえ、今年はその予言にあたる年なので、魔王が復活しても良いように、という保険です」
「はぁ!?」
ふざけんな!保険如きで異世界から人呼び出すな!
…って言うか、この世界の奴らもクレイジーだけど、その仲介役をした女神様も大概だな。
それに、戦闘スキルを一切選択していない俺は、一切保険にならない気がする。この世界の強者に任せなさいよ!
「というわけで、勇者様には魔王が復活する迄の間、戦闘訓練を行って頂きたいと考えております。とはいえ、この世界にお一人で来られた御身、一人での訓練は心細く心配であるかと存じます。そこで私共は我が国屈指の戦闘技術を有する者を、勇者様のお側に置くことが宜しいと拝察いたしました。…入りなさい」
部屋の扉を開け、中に入ってきたのは…アリス服ことエプロンドレスなどと言われる服を着た、少女だった。
身長はあまり高くなく、華奢な感じの子で、髪の毛は少し紫がかった白、というかシルバーだ。顔はとても可愛らしく、それでいてクールな感じがする。
え?この子ホントに強いの?、等と疑問を頭に浮かべていると、その子は眉をピクリと動かしながら、
「どうやら勇者様はわたくしの能力に疑問があるご様子。目の前でご覧に入れましょう」
「え、そ、そんな事は思っ…」
「『我天ト理ニ従イ妖ナル力ヲ行使スル。冷徹ナル氷ヨ、彼ノ者ヲ捕獲セヨ』アイシクル・プリズン」
次の瞬間、俺は氷の檻で閉じ込められていた。
何これ、魔法とかそういうの?こんなのがあるの?
「勇者様に何をするのだ!すぐに解放して差し上げなさい!…勇者様、この者は魔法の腕も見目も良いのですが、些か短気なところが御座いまして…何卒、無礼をお許しください」
「…まあ良いですけど…?」
「勇者様の深きご慈悲に感謝いたします。改めて自己紹介から…」
「ルルナ=メルイ・アニング、16歳です。本国の第一王女、ピアナ様にお仕えしておりましたが、今日をもってピアナ様のもとを離れ、勇者様にお使え致すこととなりました。以後宜しくお願い致します」
「は、はい。えっと…」
「存じております。勇者様のお名前はヒロミ・ヤマモト、歳は18歳ですね」
「ど、どうしてそれを…?」
「勇者選別会議というものを事前に行っておりまして、その時からデータとして存じておりました。まあわたくしは弱そうだと反対致しましたが」
選別会議なんてあるんだ。異世界怖すぎる。
このルルナって子、地味に言葉に毒を込めてくる。
「早速ですが、勇者様がどのようなスキルを所持されているのか確認する為、こちらの水晶に手を当てて頂きたく存じます」
「えっと、それなら…」
「何か問題があるのですか?」
「いえ、何も」
…ルルナが怖い。もう口答えはやめておこう。
〜★〜★〜★〜
「な、何と!?」
「どうかなさったのですか?」
「戦闘スキルに適性が一切ないご様子!加えて基礎能力値も、同年代のLv.1の人々のと比べて見劣りします!」
「ほら、言った通りではありませんか。やはり他の人にすべきだったんですよ」
「けれど其方が、この人イジりやすそうだから、と…痛い痛い、私の足を踏んでいますよ!」
「すみません、貴方が余りにも余計なことを言うので苛ついてしまって…」
散々言うなぁ。まあ戦闘スキルを一切持っていないのは知ってたけどさ。
周りもヒソヒソと小声で会話しているようだ。
「勇者様が所持されていたスキルは、調理、洗浄、裁縫、マップ、アイテムボックス、身体強化、目利き、採集、解体、育成の10個で御座います」
「うん知ってた」
「な、なんと…勇者様は事前に察する能力までお持ちなのか…」
「いや違うけど…兎に角、戦闘スキルのない俺はどうすれば良いんですか?」
「勇者様はこれからある邸宅にてわたくしと一緒に暮らして頂きます。戦闘訓練をしていれば自然と戦闘スキルの資質が芽生える可能性もあります故、心を鬼にして指導させて頂きます」
「ちょ、同棲!?しかも鬼指導!?」
「はい。改めて、以後宜しくお願い致します」
「では勇者様、私共がお見送り致しますので、これから勇者様方が暮らすこととなる邸宅へとおむかいください。案内はルルナが行います。馬車で1時間程の距離ですので」
「あ、あぁ、はい」
「それでは勇者様、強くなってくださいね。1週間後にここでパーティーを開きますから、是非いらして下さい」
「あ、分かりましたー」
こうして俺はその邸宅に向かった。
まあ、その途中で俺が召喚された国の地理について散々教えられることになったけれど。
〜★〜★〜★〜
「ここが今日から暮らす邸宅となります」
…へえ。でっかいなぁ。こんなとこに住むのか…。
「邸宅の案内をさせて頂きます。まずはお庭から…」
こうして俺は邸宅を案内された。感想は…庭が広い!調理場が無駄に豪華!部屋に絵とか要らない!トイレの穴が謎空間に繋がってる!と、そんな感じである。
因みにトイレは排泄物を無制限空間内に捨てているのだそう。俺のアイテムボックスも似たような仕組みのスキルだが、アイテムボックスは任意のものを取り出せるようだ。
「どうでしたか?」
「色々規格外だね…」
「もうそろそろ日が暮れます。今日は色々あって疲れたでしょうから、お風呂に入ってリラックスなさって下さい。尚、勇者様が入浴なさった後は調理をお教えいたします。勇者様は適正をお持ちのようですから」
「う、うん、分かったよ…」
〜★〜★〜★〜
「明日は5時には起床なさって下さい。明日も沢山お教えしなければならない事が御座います。今日はお早めに休まれる事をお勧めいたします。わたくしは今から入浴致しますので」
「うん、分かったよ」
「尚、覗きは禁止です。脱衣所前に氷の魔人を用意しておきますので。万一覗いた場合は、死をもって償って頂きます」
「いや、しないからね!」
「…本当ですか?」
「そんな趣味はない!」
「…まあ良いです。では、お休みなさいませ」
「お休みなさい」
…異世界生活1日目、終了。
詳細な設定などは後々小説内或いは番外編で公表させて頂きたいと存じております。