-剣の追憶Ⅹ-
-剣の追憶Ⅹ-
「リン、朝だよ。……おーい」
先程から聞こえていた大きないびきがパタリと消える。もそもそとベッドの上を這いまわった後、金髪の少年は伸びをして軽い欠伸を漏らす。
「寝相の悪さも、いびきも昔と変わってないね」
「いや、シオンの顔見ると、何か安心しちゃって……」
「……取りあえず、朝ごはん食べにいこっか」
パタパタと代わる代わる用意をしてチェックアウトを済まし、二人は食事処に向かう。
宿屋から数分の距離にある、喧噪に溢れたレストラン。裕福そうな老人だったり、柄の悪い若者だったりと客層は様々である。
「すみません、トーストセットお願いします」
「えっと……僕もそれで」
片隅の一角、二人の間に少しの沈黙が流れる。
「……ちゃんとご飯食べてた?」
「いや、色々と塞ぎ込んでて、何も……」
「えっ!? ………何日くらい?」
「うーん、三日くらいかな……」
「嘘っ、すいませーん! トーストセット三つ追加で!」
「三つ……!?」
「大丈夫、私が奢るから」
(……そういう問題じゃないんだけどなぁ)
幼馴染の厚意を無駄にできないのかすきっ腹に四人分のトーストセットを流し込み、腹をさすりつつ二人はレストランを後にした。