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-剣の追憶Ⅸ-
-剣の追憶Ⅸ-
飲み込まれそうな、深い夜。
人の気配が完全に消えてしまったように、暗闇が町を包み込む。
(自己満足なのかもしれない……)
狭い部屋のベッドの上、金髪の少年……リンは、隣で寝ている幼馴染の顔を見つめて心に翳りを見せる。
(頼まれたわけでもない。ただ、漠然と当たり前のように沸いた怒りが、僕を突き動かしている)
布団を頭まで被り、逃げるように睡魔の尾鰭を探る。
(力も無い癖に誰かを巻き込んでまで、僕に他人を殺せる権利があるのだろうか)
声が聞こえなくなる。ため息をつけるわけでも無いが、なんだか脱力する。
孤独。胸中に渦巻くそれは、いつの間にか和らいでいた。
他人行儀の世界に差し込んだ光。
たった一人の人間の思考が分かっただけだが、なんだか世界に認められたような気になる。
こちらから話しかけることはできない。
ただただ向こうの思考がこちらに筒抜けになるだけ。
それでも、少し昔の出来事を思い出すように嬉しかった。