-剣の追憶Ⅷ-
-剣の追憶Ⅷ-
「…………」
「これから戦うことになる相手は魔力を感知してくることなんて当たり前。その為に、その聖剣を手に入れたんでしょ?」
額に汗を滲ませながら目を閉じ、祈るように歯をくいしばる。
再び間合いを詰めアクア・ドールに斬りかかるも、聖剣の剣先はコアを捉えない。
「クソッ、何で、……ちくしょう」
何度も、何度もひたすらに聖剣を振るう。
次第に疲労が見え始め、振るスピードはどんどん遅くなり、やがて剣先を地面に突き刺し片膝をつく。
裏切られたような、絶望に溺れたような眼で聖剣を見つめる。
息は切れ、滝のように汗が滴り落ち続ける。
「……リン、もういいじゃない」
「いや、待ってくれ、聖剣の力はこんなものじゃないはずなんだ。そうでなきゃ、僕は……」
縋るように柄を握るリンに抱きつき、耳元で囁く。
「私、リンと会えなくなった時からずっと魔法を練習してきたんだ。今の私なら復讐だってわけない。リンの願い、全部叶えてあげる……」
その言葉を聞き、目尻に涙が浮かぶ。
自分の無力を呪うかのように、声を押し殺しすすり泣く。
(僕は……無力だ。父と弟を守ることも、無念を晴らしてやることもできない。そして、また大事な人を危険に晒そうとしている……)
そんな悲痛な叫びが、俺にも聞こえた気がした。