-剣の追憶Ⅶ-
-剣の追憶Ⅶ-
シオンの肩に手を置き転移魔法の詠唱をすると、だだ広い砂漠に移動している。
「…………ふーん」
「ここなら誰にも邪魔されないはず。倒すのに手頃なモンスターもいるしな」
辺りには小型犬くらいのサソリのような生き物や、爪が発達したネズミのような生き物が沢山いる。
「いや、モンスターを倒すよりもっと確実な方法があるよ」
そう言うとポケットから小瓶と小型のナイフを取り出し、そのまま指の先を切って瓶の中に血を垂らす。
「私のアクア・ドールを倒せたら聖剣の力を認めてあげる」
小瓶をひっくり返すと中から大量の水が出てきて、出来の悪いマネキンのような人型を形成する。
透明なボディの中に赤黒い色をした結晶が浮かんでおり、意思を持っているように脈動している。
「こちらから攻撃はしない。中のコアを壊せたらそっちの勝ち、私は大人しく帰る」
アクア・ドールの脈動は段々と激しくなり、静止した瞬間に姿形が完全に人間を型どったものとなった。
「……なるほど。自分の姿をした奴と戦うってのも面白いかも」
そう呟くリンとリンの姿をしたアクア・ドールを見て、顔を赤面させて急いで元のマネキンのような姿に戻す。
「と、とにかくこの子を倒せたら何も文句は言わないから!」
分かった、と呟き柄を握り締めて走りだし間合いを詰めると、そのまま突進するように懐に潜り込み、すり抜ける____。
いや、瞬時に二度転移し敵の背後に潜り込み、コアのある場所に剣をつきたてようとして、その攻撃もまたコアの上部をすり抜けた。
「な、……!?」
「アクア・ドールは魔力を感知して回避行動をとる。転移魔法じゃ絶対に倒せないよ」