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第91話 土筆組のオリアスちゃん、アンドラスちゃん

 お題。『うんこ〇んちん』で笑ってしまうのは何故か。


 そんなくだらなくも答えのでないうんこち〇ちんテーマが仲良し幼稚園そろもんを二分化してしまった。


 【うんこち〇ちんは見た目を捨てて面白さにステータス全振りしているから面白いのだ】を頑なに主張する、うんこち〇ちん原理主義。片や【うんこち〇ちんが面白いのではない。うんこちんちんを持て囃す我々が面白いのだ】とするうんこち〇ちん自由主義。


 うんこち〇ちん原理主義リーダー、通称『モロだしのアンドラスちゃん』は語気を強めて主張する。そのあまりの熱のこもりように本日二度目の『モロだし』があるのではないか、子どもたちはドキドキしながら見守った。


「おあつまりのみなさん、『うんこち〇ちん』どうも、アンドラスです。……ほら、わかりますか? ぼくが『うんこち〇ちん』とくちにするだけで、みなさんはハラハラソワソワとおちつかないようすではありませんか! どのようなことばをもってしても『うんこち〇ちん』よりもおもしろいことばは……」


「それはどうかな!!」 衆人観衆の中からニョキリと握り拳が上がる。うんこち〇ちん自由主義のリーダー『モロだしのオリアスちゃん』である。ここに来て『うんこち〇ちん原理主義』の日ごとに増す勢いに最も警戒心を持っていたのは何を隠そう『オリアスちゃん』であった。


 オリアスちゃんはモロだしで一斉を風靡した子であった。出せば笑う。出せば皆が喜ぶ。しかし、モロだしは諸刃の刃であった。『モロださないオリアスちゃんは面白くない』、そう、世の中(園内)は、『オリアスちゃん=モロだし』であり、『モロださない≠オリアスちゃんではない』と認識するようになっていたのである。


 そこに来て二匹目のドジョウを狙ったアンドラスちゃんの台頭。モロだしパイオニアたるオリアスちゃんが長年(半年くらい)培ってきたモロだすタイミング、モロだすべきでないシーン、あらゆるモロだしに関するノウハウの数々を堂々とパクリ、ある日、唐突にモロだした。無論、空気は硬直するはずである。モロだしは非常にリスクの高い行為である。ひとたびツボにハマれば笑いを堪えることのできないハイリターンをもたらすが、冷めた眼で見られようものなら生涯辛酸を舐めることにすらなりかねないハイリスク。


 ……アンドラスちゃんは賭けに勝った。


 その日以来、「モロだしといえばアンドラスちゃんだよ。オリアスちゃん? あぁ、一時期流行ったねぇハハハッ、そんなことよりもウチのステファニー(チベタン・マスチフ(♂五歳))の話を聞いてくれないかい? 実に立派なうんこを……」という体たらくである。


 オリアス氏は当時のことをこう振り返る。


「ええ、屈辱でしたね。何せ、そろもんで『モロだし』ができる園児は僕だけだと確信していましたから。……油断、……慢心、……過信そういったものだけではなく、アンドラスちゃん自身に対する尊敬の念すら抱きましたよ。よもやのタイミングでしたからね。モロだしなんてものには技術はいらないんですよ。何て言えばいいのかな、心を裸にするっていうのかな? 全てを曝け出すんです。やってることは至極単純で、とても簡単な、それでも一線を越える勇気みたいなものがいるんです……だから、アンドラスちゃんの事は凄いなぁって」


 対してアンドラス氏はこのように語る。


「実は、自宅では毎日やっていたんですよ。モロだし。トレーニングみたいな。モロだしは生活の一部だったし、生活はモロだしの一部みたいなところは確かにありました。それだけにオリアスちゃんは随分と先を行くモロだしスト、だったんですよねぇ。アマとプロみたいな? 『モロだし一本で戦っていくんだ』っていう強い意思がそれまでの僕のアマモ(アマチュアモロだしストの略)の感覚を刺激してくれたんだと思います。あの時は、無我夢中でモロだしたのを今でも鮮明に覚えています。一瞬、時が止まったような感覚に陥ったんです。考えてみると、あれがゾーンってヤツだったんだなって」


 モロだし。


 それは子どもだけに許された身体を用いた極限の一発芸。高度に管理された現代社会においてもその文化は根強く生き残っているのだという。いずれも彼らのような一流のプロフェッショナルモロだしストではなく、所謂アマチュアモロだしスト。タイミングを誤り、あるいは洒落にならな規格外のイチモツを用いて場の空気を最悪なものにしてしまうリスクを負う。情報化社会においてはSNSによる炎上芸という派生パターンも存在するが、国際モロだし協会はコレを認めてはいない。否、TPOをわきまえずに所かまわずポロポロと出してしまう一部ハミだしストを含め、政府はモロだしストの存在を公式には認めていない現状を踏まえれば、それは仕方のないことなのかもしれない、。


 今日もどこかの貸切居酒屋でモロだしストたちは場を温め続けているのであった……



波留「モロだし禁止」






波留「うんこち〇ちんも駄目!!!!!」


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