第8話 紫陽花組のフルカスちゃん
20の軍団を率いる地獄の騎士
槍を持った老人の姿で馬に乗っている。いろいろと博識な悪魔
暗黒を思わせるダークスマッシャー・ボールを掌でコロコロと転がし、地を踏みしめながら宙に放つ。放物線を描く黒点はビュットに吸い込まれるように舞った。ほんの少し手前で地に落ちたのもその者の狙いであったのであろう。
地を這うヒュドラの如くダークスマッシャー・ボールはジワリジワリとビュットに近づきコツリと身体をぶつけるのであった。
遠藤はその一撃に動揺を隠せずにいた。かつて、この世界の悪魔のことごとくを討ち果たした身にあって、これまでに感じたことのない程の焦りが胸に去来していたのを額から滴る汗をもって初めて実感する。
「ま、まさか、これほどまでとは……やるわね。でも私の『ロイヤルフレイムレッドパージ』なら!」
遠藤が生み出したのは煉獄の炎を思わせる影のある紅球であった。
「そ、それはでんせつの!! なぜおまえがもっている」
「ふっふっふ、それは私が聖母だからっ!!」
大きく天に放たれたロイヤルフレイムレッドパージは青空にロイヤルフレイムレッドパージの太陽を思わせるほどにロイヤルフレイムレッドパージさせ、ロイヤルフレイムレッドパージは自然界の大いなる力をその小さな紅球に蓄えることによって、ロイヤルフレイムレッドパージは、一段階上のレッドパージ。すなわちロイヤルエレクトリカルフレイムレッドパージへとレベルアップし、ダークスマッシャー・ボールの存在をも打ち消すほどの高威力を放つのだ。
「……何をぶつぶつ言っているんですか? 遠藤先生」
「ちょっと、波留先生。いいところなので邪魔しないでください!」
「いや、まぁ……フルカスちゃん、遠藤先生と何をやって遊んでいるのかな?」
「ぺたんく」
「ペタンク……」
波留の目の前にはゴルフのグリーンのように歪な円状に線を引かれた中心部に小型の旗をチョコンと置いた妙なエリア、そこからそれなりに離れた場所から投げられたのであろうピンポン玉のような黒い球。あとは、遠藤がロイヤルなんとかかんとかと呼んでいた赤いピンポン玉がコロコロと転がっていた。
波留はゴクリと生唾を飲み込み考える。この競技のどこが面白いのだろうか。と考えてみる。波留の常識的な記憶の中にあって、ペタンクの競技人口は少なくはないことはわかる。しかし、どうであろう。実際に『やっている』光景を目の当たりにすると、その何ともいえない虚しさのようなものと感じてしまうのは私の感性が乏しいからなのであろうか。と一抹の不安のようなものを感じていた。
さらに、波留の頭は考えをめぐらす。
いや、競技する側に立ってみれば面白さがわかるものなのかもしれない。一教育者としてペタンク道を歩もうとしている児童の興味を削ぐようなことをしてはいけない……そうだ。この競技の奥深さを競技者である彼に直接聞いてみればいいのではないか!
「ふ、フルカスちゃん。ペタンク……楽しい?」
「いや、そうでもないです」
一方その頃、遠藤の放った球は描かれた円のエリアから大きく外れて動きを止め、隣で別の遊びをしていたのであろう園児にひょいと拾われて悪戯心が疼いたのであろう、面白がって強奪して逃げていったのであった。
「ああ! 待って! 持っていかないで! 私のロイヤルエレクトリカルファイアーボール!!」
「名前が違う!!」