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第77話 園の庭。砂場にて。

荒れ地の酒場

なんとなくイメージは西部劇。

丸い枯草みたいなヤツが風でカラカラ転がっているような印象。

の『おままごと』


「からんかろんからんかろん」

「……ミルク、もらえるかい?」

「はっ! にいちゃん。かんばんがみえなかったのかい? ここはごろつきどものたまりばさぁ。ミルクがのみてぇんならママにでもたのみなぁ」

「へへへ、ちげぇえねえ、ちげぇねぇ」

「……かちゃり! ミルクをだすか、それともなにかい? はなのあなをもうひとつつくってやろうかい?」

「はっはぁ、こいつぁおもしろいジョークだぜぇ! おめぇさんはソイツのつかいかたがわかっているのかい?」

「ずどん!」

「ざわざわざわざわ……」

「おいおいおいおい、なんてこった! かんべんしてくれよぉ! おまえさんがうちぬいたのは、かったばかりのシロ……ああっちくしょう! あんたイカれてやがんよ!」

「……ミルクだ。かちゃり!」

「わかったぁ! わかったからそいつをしまってくれよ!」

「からんかろんからんかろん。アハハハッ! みてたよいまの~。なに? あんたサイコウじゃあないのさ! どこからきたんだい? あたいとあそばないかい?」 

「からんかろんからんかろん。おいおい、きょうはオレサマのあいてをしてくれるはずだろう? なんだそのあおにさいは?」

「からんかろんからんかろん。いたいた! ちょっと、やどだいはらってくれないとだめじゃないの! おにいさん」

「からんころんからんころん。にいさん! こんなところにいたのかぁ~。もう、おししょうさまカンカンだよっ!」

「からんかろんからんかろん。いよぉ~。こんなところにいやがったかわかぞう! このあいだのかりをかえさせてもらおうか! おもてにであがれぃ!」

「からんかろんからんからろん。おいおい、どうしたどうした! こんなにはんじょうしてぇ! またくだらんくわだてでもしとるのか!」

「からんかろんからんかろん。ワシのつくったそいつのぐあいはどうだい?」

「からんかろ……」




波留は、子どもたちの砂場遊びを見て思った。『キャラ多くない?』


――


 無邪気な住人たちは陽が沈む前に巣に帰り、ボチボチと本日の締め作業にとりかかっている職員室で、波留は問いただした。世間話とは言うまい。これは園内で起きた出来事だ。演劇の様に個々の役割をこなす子どもたちの姿は頼もしさすら覚える程ではあったが問題は内容である。


「……ということがありまして。どういうことでしょうか遠藤先生」


「平仮名が多くて流石に読みづらいですね」


「? 舌足らずなのは仕方がないですけど、そこじゃないです」


「あと、途中に錬金術師の弟みたいな子いましたね。波留先生好きですもんね。よかったですね!」


「ええ、久しぶりにエルリ……違う違う。また子どもたちに余計なことを吹き込んだんじゃないですかって聞きたいんです!」


 遠藤は大人しく否定する。得意気な顔で。余裕しゃくしゃくな様子で。

 得てしてこの手の人間は嘘をつくのが下手くそである。何かを隠そうとしている時ほどに声は大きく発言は多くなる。ついでに言えば早口にもなる。汗も出る。ともすれば事実として嘘をついていないのであれば、すこぶる落ち着いている。


「やだなぁ波留先生は。ふぅ、全くもって早とちりが過ぎる。波留先生ってそういう所がありますよねぇ。悪いところですよぉ~」


 ここぞとばかりに皮肉った言い回しである。とても腹が立つ。イラっとする。何よりも目つきがムカッとする。ニヤケ顔で『ω口』なのが拍車をかける。怒髪天を突く具合に波留は長い髪をゾワリと逆立てつつ、遠藤を視界に入れないようにフィルターを掛けた上で佐藤に問いかける。


「で、どう思われます? 佐藤先生は」


 ピりつく空気を佐藤はすかさず感じ取る。(あっ、波留先生結構怒ってらっしゃる)と認識する。(なにか気の利いたことを言わなければ)とも思う。分厚い眼鏡を支える細々としたつるが小刻みに震える。


(ああ、答えを間違えれば……私に『次はない』)正体不明のプレッシャーが佐藤を襲う。

 

「あ、ああああの。SEまで演じるなんて、か、かか感心しちゃうなぁ……なんて」


「……」


「……」


「……」


「(……あれええええ? 無反応)」


「……平林先生はどう思われます?」


「なんだいジェニファー。まさか僕を疑っているのかい? HAHAHA心外だなぁ!」


「……(お前か)」


「……(お前か)」


「……(お前か)」


平林「男女の仲がどれくらいの期間で交わるか知ってるかい?」

平林「ほんの『ひとつき』さ」

遠藤「なんで?」

波留「どうして?」

佐藤「そうなの?」


そろもん園は健全な職場です。


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