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第53話 大天使ガヴリール、中二病になる。

ガヴリール

最後の審判のときにラッパを鳴らす係

男性だったり女性だったりする。神様の言葉を地上に教えるのも大体この天使。


 神様は空高くから万人を見つめている。


 ……なんてことはなくて、神様の奇跡的な行いの大半は神の御使いの仕業である。考えてみれば至極当然なことで、誰が何十億という人間を、地球上の全ての場所を、常に見続けることができるというのか。「神様だったらそれくらいやってみせろ」という無茶振りに神は耳を貸さない。


 たった一人しか存在しない神様が馬車馬のように奇跡を起こした所で、到底そんな数のタスクをこなすことはできない。神が過労で倒れるなんて宴会のネタにもなりはしない。


 休みなく奇跡を起こした(はたらいた)挙句、「この世に神様なんていやしないんだ!」なんてクレームが聴こえて来ようものなら、いっその事、地球全体のありとあらゆる生命体を根絶やしにしてしまおうかなんて物騒なことを考えてしまうのも人情味があるといえよう。


 神様は何もしてくれない。というよりは、基本的に神は何もしないのだ。

 キリがないから。


 その代わりに無報酬で働いてくれる社畜てんしを生み出して、自身の代行者のような役目を授ける。忠実な天使は位階ヒエラルキアとも呼ばれる役職に応じた力を与えられ、その職責を全うする。


「神様の言う事は絶対!」といったガッチガチの秩序で固められた合コンみたいなノリで、それなりに陽気な世界。


 そんな天界に生を受けた天使の一人、それまで『その他大勢』の平天使であった彼が大天使となれたのは、それこそ神様の思し召しなのであろう。


 ガヴリールは鼻息荒く意気込んでいた。


「他の天使を押しのけて抜擢されたからには期待に応えなければならない」


 初めて降り立つ地上。噂に聞いた英雄の生まれ変わり。天をも揺るがせた、邪智暴虐の化身。悪魔の中の悪魔。七十二の暴れん坊将軍。それらを悉く討ち果たした人の身にあって人を超えた超人。勇者エイリーン=エンデゥーの覚醒状況を調査するという大役。


 例外中の例外として神の奇跡を享受した遠藤という人間の体内に宿る英雄の血が目覚めたその時に神の代行者として福音を授けて共に戦地に赴くという重大任務。


 ……もしかすると、この仕事がキッカケとなって自身が聖典に載ってしまうかもしれない。そうなると最早、大天使どころの騒ぎではない。かの四大天使と肩を並べて五大天使になってしまうかもしれない。


 普段は無機質な機械的に業務をこなすことを求められるガヴリールの心に薄らと欲望めいたものが浮かんで、うっかり堕ちそうになり、真っ白の翼が若干黒ずむ。


 ガヴリールは地上に降り立つ。タイミング悪く、とっぷりと暮れた地上は、陽の沈むことのない天界に比べて薄暗く、とても寒い。そして静かであった。


 見知らぬ土地で一人きり。なんともいえない不安な気持ちが彼女の心をざわつかせた。


「……なにはともあれ、遠藤様の自宅にお邪魔しなければ。任務も何も、話はそれからだ」


 ……

 ……

 ……五時間後。


 遠藤の部屋で夜通し催されていた『もれなく中二病に罹患してしまう系』アニメ上映会に釘付けとなっているガヴリールの姿がそこにはあった。


後日、天界にて。


天使A「おっ、ガヴリール、どうした? 怪我?」

ガヴリール「(来た!)……ううっ! 右腕がっ!!」

天使A「おいおい、大丈夫かよ」

天使B「どうしたどうした」

天使C「なんだよあの包帯!」

天使A「変な巻き方してるな、それになんだこの文様……」

天使D「そういやコイツ、この間、地上に降りてなかったか?」

天使E「ヤバイ呪い持って帰ってきたんじゃないのか!」

天使F「えっ? 呪いだって?」

天使G「呪いだと!」

天使H「誰かメタトロン呼んで来い!」

天使I「マズいことになったな……」

天使J「こんなところで黙示録、起きたりしないよな?」

天使K「預言の時はまだ先だろ?」

ガヴリール「……」


思いのほか大変な騒ぎになった。


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