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第39話 近未来無認可幼稚園SOLOMON

 西暦二千五百年。天まで伸びた数々の超高層ビルの中には人はおらず、その昔、人が存在していた頃のまま放置されている。

 今なお朽ち果てることなくそびえ立っているのは、人類の英知が生み出した建材と、建物メンテナンス機能付きお掃除ロボットがひたすら動作を続けているからであった。


 ビルの各階には、大量のお掃除ロボットをメンテナンスするための修繕ロボットが標準設置されており、いずれも太陽光と水だけで無限に等しいエネルギー効率を発揮するものだから、いつまで経っても変わらない。


 道路の修繕も公共工事用自律思考ロボットが三百六十五日フル稼働してくれているので綺麗なまま。


 労働人口不足で困窮していた時世に開発された会社員タイプのアンドロイドが無表情で会社間を行き来し、受付ロボットと無言のやりとりを繰り返す。

 昼時ともなれば牛丼屋エネルギースポットにアンドロイドが集まっては背中の給水口にミネラルウォーターを補給して昼からの業務へと戻っていく。


 そんなオフィス街から少しだけ離れた住宅地の一角にその幼稚園は存在していた。


 最早、文化財といっても差し支えない長屋建ての建屋に七十二人の子ども型のえんじロイドと四人の先生型のおとなロイド。


「ガガガガガガガガガガガガガガ」


「山田先生、五月蠅いですよ! 遠藤先生、山田先生にちゃんと油差してくれました?」


「ガガガガガガガガガガガガ」

 

 波留は事務作業を行いつつ、首を百八十度回転させながら遠藤に問いかける。どうやら遠藤はスリープ状態にあるらしく、波留の言葉には反応を示さなかった。

 

「またスリープしてる……仕事中ですよ。遠藤先生!」


 ヴィーーーーーーーーフシュー……


「【HELLO!!】」


「古い! 起動の方法が古い! 二千五百年ですよ!」


 ……


「いやぁ。昨日の夜、アニメ鑑賞(マラソン)しちゃってですね……その眠くって」


 痒い訳でもないのに頭をポリポリと掻きながら遠藤は言い訳する。波留にとってはいつもの光景である。アンドロイドがなんで眠くなるのか、なんていう事を伝えるのでさえ面倒くさい。


「しかも遠藤先生、スリープ状態に入っているときオンラインだったでしょ。アンテナ感度の高い子ども(型アンドロイド)たちがハッキングしたらどうなっていたかわかったもんじゃないんですからね」


「いやはや、面目ないです……ちなみに昨日観たアニメっていうのが凄くってですね」


 遠藤が語ったのは、遥か昔のロボットアニメ。その名も『機甲艦隊ダイラガーXV』。驚異の十五体合体ロボというか、実質十五人の主人公が存在するという破天荒な作品であった。


 ラガー1の頭に始まりラガー9の右脛みぎすねを経てラガー15の左足首に至る。拳に位置した部位のパイロットが合体時に目の当たりにする光景の恐ろしさを想像すると夜も眠れなくなるというものだ。


 そんな感じの話をノリノリで続ける遠藤に対して、一切の聞く耳を持たない波留であったが、突如として受信された佐藤からの緊急無線通信たすけてコールに遠藤の声が自動消音機能かきけされた。


「(波留先生! 遠藤先生! 大変です! 子どもたちが!)」


 その叫び声を聞き取った二人は顔を見合わせ、慌てて飛び出す。親御おとなろいどさんたちからお預かりしている子ども(型アンドロイド)に万が一のことがあると、折角の信頼を裏切ることになってしまう。それはロボット三原則的にもアウトであることを意味していた。


 そんなに広くはない園の庭先で泣き叫ぶ佐藤の姿を視界に捉えた遠藤と波留は、間もなくして彼女の目の前で起きていた出来事を目撃し愕然とする……


 ヴィーガシャン! ヴィーヴィーギギギ……ガシャン! ゴゴゴゴ……ゴッガン!


「「合体しとるーーーーーーーーーー!」」


 ウィーキュルキュルキュルキュル……グググッガガン! ガシャン……ガシャン!


「合体しとる場合かっ! ああ……違うそうじゃない。ええと、ええと……」


「す、凄い! 昨日観た合体ロボよりも合体ロボしてる!」


 グイーーンガガガガ……ギィ! ギギギギ……バキンッ! バラバラバラ……


「あっ」

「あっ」

「あっ」

山田「ガガガガガガガガガガガ……ガガガ……ガガ……」


やまだロイドは静かに機能を停止した。

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