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第118話 んで……

 街を見下ろすような大型モニターに映し出されていたのは今となっては珍しくも無い角と翼を携えた者たちの姿であった。


 ズラリと並んだ異形の者たちはモーニング姿でパシャパシャとフラッシュの雨の中、誇らしげに微笑みを浮かべていた。


【史上最年少。異色揃いのバエル内閣誕生】


 そんな赤文字テロップを見ながら遠藤は「ついにここまで……」と呟いた。


「凄いことですよ。あの場にいる人間……じゃないのもいるけど、全員があの時のメンバーだったんですからね」


 流石に目尻の皺を隠せない年齢となった波留はティーカップをカチャリと置きながら懐かしむ。もう三十年か……なんてボヤキながら。


 そろもん幼稚園の七十二名が卒園してからの話は風の便りと言う程には信憑性に乏しくない那古の便りと地方新聞の紙面ほどなくして全国紙、そして平林情報網から聞いていた。


 ある者は表の世界で着々と、ある者は裏の世界で力をつけていき、まるで、あらかじめ定められていたかのような順調なプロセスを踏みながら七十二名の輪は確実に名をはせていく。


「いやぁ、でもまさか山田先生があんなことになるとは思いませんでしたけどね」

「いつかはやると思っていましたけれど、本当にやるとは……おかしい人を亡くしてしまいました」

「生きてますよ? なんなら……いや、あの人の話は止めておきましょう」

「……そうですね。誰が話を聞いているかわかりませんし」


 悪魔の手はやがて政界に進出してくる。神のお告げかなんなのか真偽のほどは今となっては確かめようがないのであるが、間もなくして那古は国政へと戦場を移し、来るべきその日に向けて万全の準備を始めたとかなんとか。


 それこそ、今日においてバエルちゃんを筆頭とした内閣が誕生したのは、ひとえにその時の那古の奔走が大きく寄与しているというのだからなんとも具合が悪い。


 そう考えると那古の立場ってどうなのよ? という話にもなるが、表舞台に上らせることができなければ悪魔がどこを主戦場とするか、そう想像に難くない。


「佐藤先生は佐藤先生で今度十七人目なんですって」

「本当に野球チーム作っちゃうんだから凄いですよね」

「野球だけじゃないっていうから、これまた凄いっていう」

「私たちと一体どこで差がついたのか。慢心……環境の違い」

「ちょっと、遠藤先生ッ! 一緒にしないでくださいッ!」


 荒ぶる声とは裏腹に波留はすこぶる嬉しそうに左手薬指にハメられた指輪を見せびらかす。その表情はどことなく「お前とは違うのだよ」と言っているようで遠藤は素直に喜べなかった。


「ぐぬぬ……どこの馬の骨を拾ってきやがった」

「なんと失礼な言い草! まぁ? 五十を超えて私の魅力が増してきたってことじゃあないですか?」

「いいもん、私には幼稚園の皆がいますから!」

「負け惜しみを」

「うぬぬ……」


 モニターの向こうでは、まだあの頃の面影をどこか残している内閣総理大臣バエルちゃん、そして官房長官である那古の二人が何やら国民に対する演説を始めるらしく、慌しくも落ち着き払った様子でゴチャゴチャしている。


「そうそう、波留先生にあったら伝えてくれって言われていることがありまして」

「ん? 誰から?」

園長そろもんおう

「あの人、まだ園長やってんですか……」

「本当、歳をとらないっていうですかね? 不思議な御方ですよまったく」

「いや、遠藤先生もあの頃とまったく変わってないので同類ですよ?」

「もう、私を褒めてどうするつもりですかぁ」

「いや、本当に同じ年齢とは思えない……というかガチ目に歳とってないですよね? おかしくない? なんで?」

「まぁまぁそう言わずに。端的に言うとですね、戻ってきて欲しいって話なんですけど」

「おい? 大事なところだぞ?」

「来期の入園希望者が結構多くてですね、教室を一気に拡張して九つにすることになったんですけれど」

「あの? どうやったらそんなに若い状態をキープできるのか、を聞きたいんですが……遠藤先生?」

「久しぶりに神様が枕に立ってですねぇ、こう言う訳ですよ」

「本当に色々と変わってないですねぇ遠藤先生は……(そして聞いちゃいねぇ……)」



 ……


「国民の皆様、内閣総理大臣バエルでございます。え~、たった一つ、私たちが皆様に対して、ただ一つだけ、確かな事を約束させていただきます。え~、契約の履行と言い換えても良いかもしれません。必ずやこの世をもっと楽しいものに、そして住みやすく、我々にとっての地獄らくえんへと創りかえさせていただきます」






一旦、ここで終わらせていただきます。

これまでご愛顧いただきまして本当にありがとうございました。

今後はノベルアップ+を中心に活動を続けて参りますので

よろしければお付き合いくださいませ。

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