01 少年の世界が変わった日
雨空です!よろしくお願いします!
ゼロス王国の辺境で少年は貧しくはあったが家族と極めて穏やな生活を送っていた。そう、事件が起こるまでは…
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「今日は、収穫祭だな。」
父は嬉しそうに言った。
そう、今日は村の小麦の収穫日で夜には収穫祭を行う予定であった。そして俺は収穫祭に使う供物の猪を狩る役目を担っていた。
「ソラ、おまえは頑張って大物を仕留めるんだぞ。」
「ああ、父さん!頑張って大物を仕留めてくるよ。」
そう言い俺は、鉄の剣と弓を持って家を出た。しかし、妹たちが後をつけてきた。
「ソラ兄、私も連れてって!」
「兄さん、私も連れてく。」
双子の妹のアリスとイアが我儘を言い始めた。
「アホか、今から大事な仕事に行くんだぞ。ついてくるな。」
そう言い放ったが妹たちは止まらない。
「大丈夫だって!猪を狩りに行くだけでしょ。」
「大丈夫、私たち魔法得意だから。」
そう、言っていることはなまじ間違えじゃない。13歳の妹たちは基本属性すべての魔法を中級まで使える天才であった。俺は火属性の適正はあったが初級魔法しか使えないので誇らしく思っている。
いくら言っても聞かない妹たちの説得にも疲れ、結局連れていくことにした。
森に入ってから数時間たち休憩している途中、突然村の方から煙が上がっていることに気づいた。
「なんで、煙が上がっているんだ!」
「ソラ兄!なんか村の方から悲鳴が聞こえる!」
「兄さん、一旦村に戻ろう。」
「そうだな、危険かもしれないからおまえらは山の入り口で待ってろ。」
「「わかった!」」
妹たちに指示すると俺は村の方に向かって走り出した。
村に着くと、家からは煙が上がり兵士らしき者が略奪をおこなっていた。
「どうなってんだよ、なんでこんなところに兵士がいるんだよ!」
焦る心を抑え、両親がいる自宅に向かって走りだした。
自宅に入ると兵士が両親を刺し殺していた。俺が入ってきた音に気付くとこちらに振り返った。
「なんだまだ、ネズミがいやがったのか。ネズミはきっちり、駆除しねえとな!」
兵士はそう叫び俺に襲い掛かってきた。しかし、両親が殺されたショックが大きく、うまいように体が動かななかった。
「ちっ、外したか…」
「えっ?…うあああああああああ!!」
体を見ると左肩に剣が突き刺さっていた。
「悪いな、今度は外さねえからよっ!」
死んだと思った。しかし、まるで時間が停止しているみたいだった。走馬燈ってやつかもしれないが、ふと、目の前で自分を殺そうとしている兵士に激しい怒りを感じた。なんで罪もない俺たちが殺されなけれいけないのかと…そんなことを考えても自分が死ぬことは変わらないのに…
『憎いか?』
声が聞こえる。
『世界を敵にまわせるほど力が欲しいか?』
欲しい…欲しいに決まっている。目の前のこいつを殺せるなら!!
『ならば、手を伸ばせ…汝の怒りを世界に曝せ』
手を伸ばした。気付くと手にはドラゴンの紋章が刻まれた大剣が握られていた。力を感じる…まるで全能感に浸る様だった。そして制御しきれない怒りの感情が暴走する。
そして時間は動きだす…
それは一瞬の出来事だった。兵士の腕が飛んだ。
「は?なんで、なんで俺の腕が飛んでんだよぉぉ!!」
兵士は叫んだ。腕を切り飛ばした少年には声は届かない。
「うあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
少年は吠えた。
「ひいいい!!助けてくれ頼む」
兵士は後ずさる。だが、少年は止まらない。
「死ね」
そう言うと、あっけなく兵士の首が飛んだ。
「まだ、まだ足りない」
譫言を繰り返す少年の目には生気がなく濁っていた。少年は覚束無い足で家の外に出た。
「どうしたんだ!」
声を聞きつけた他の兵士が駆け寄て来た…飢えた化け物がいるとも知らずに。
少年は、濁った目で兵士らを一瞥すると、狂ったように魔法を詠唱し出した。
「ゴミ屑共め、一片たりとも残さず焼き尽くされろ!『ムスペルヘイム!!』」
少年が火の最上級魔法を放った。威力が凄まじく村全体が炎の海に飲まれすべての兵士が焼き尽くされた。
暴走する少年は止まらない。歩き出そうとすると…
「ゴフッッ」
少年は口から血を吐き出し倒れ意識が暗転した。
ムスペルヘイム:火属性最上級魔法。超広範囲魔法で、一瞬で辺りを火の海に変える。
最上級魔法:通常は、宮廷魔法師が100人規模で数日かけて発動することができる。