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異世界黙示録  作者: 煌月 かなで
序章
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序章 八部 【悪夢の渦中】

夢喰あいつらが何かしたのか……くそっ!」


息を荒らげる彼はシャルルだったものの攻撃に襲われ、ただ避ける続けることしかできずにいた。


「やめろ!シャル!俺だ!」


何度呼びかけても彼女にピクリとも反応する素振りはない。


──ナイトメアになった人間は殺す他ない。

それ故狩人の仕事はナイトメアを殺す事。


ほかの誰でもない彼女の口から語られたそんな言葉を振り払う。


何かあるはずだ


しかし何をするにしても対等に渡り合う手段が必要だった。

武器になりそうなものを探すため激しい攻撃を掻い潜る。

不格好に駆け回り、なんとか崩れたコテージの残骸を漁る。

だが特に使えそうなものや目新しいものは見当たらなかった。


「もっとよく探せ!」


焦りで騎士から意識が逸れたその一瞬、

槍と一体化したナイトメアの右腕が彼の胴体を横薙に打ち払った。


「かはっ!…………」


ノエル体が質量を無視するかのように簡単に吹き飛びコテージの残骸を派手に撒き散らすと木に激突した。


「あぁ……いっ…………てぇ」


木屑を含んだ砂煙が視界を遮り、衝撃を受けた肺から込み上げる空気が咳として放出される。

全身が鈍く痛み、力が抜けた。

自分はなんて無力なのか

絶望という快楽がやさしく手を差し伸べる。

それに身を委ねようとした時、

砂埃の中に見覚えのある輝きが灯った。


それは蒼い炎。


「クレイヴ…………ソリーシュ」


彼女の相棒の銘を思わず口遊む。

なぜこんな所にあるのか、そんな疑問はよりも先に体が動いていた。

痛む体に鞭を打ち立ち上がると地面に刺さったそれに近づきおもむろに引き抜く。


「頼む……動いてくれ」


鍛錬の成果か彼は魔力を多少扱えるようになっていた。

今なら彼女の武器を使えるのではないかと考え、それに意識を集中させる。


「動け…………動けよ!!」


しかし扱えるようになった魔力は言葉通り多少、戒具を起動するには至らない。

いくら叫んでも漫画のような展開は訪れなかった。


起動を諦めかけた時、一つの方法を思いつく。

だがそれはあまりにも無謀な策。


「…………やるしかないか」


意を決して彼は大剣を自身の腹に突き立てた。

文様が魔力を扱えない原因ならばそれを断ち切ってしまえばいい、という安易な思考。

だが今はこれにかけるしかない。


「ぎっ…………」


切り口から激しい熱が湧き上がる。

それと同時に完全とはいかないまでも魔力という感覚が蘇っていくのが分かった。


「これなら…………」


自身の伝導体アクアを大剣に流し込むとそれは蒼炎を吹きあげ、彼に呼応するように光り輝く。

適合の問題は無事に乗り越えた。

彼は得物が手に馴染む感覚を確かめると徘徊する騎士に向き直る。


「はぁぁっ!!」


大剣を全力で振りかぶり騎士に叩き込んだ。

表面の眼球がぶちゅりと湿った音をあげて潰れ、粘ついた液体が糸を引きながら滴り落ちる。

表面的には効いているように見えるが眼球はクッションの役割をしているのだろう、本体に対して有効打となっている様子はない。

シャルルをどう救い出すにしても、まずはある程度の弱らせる必要があるだろうと彼は考えた。


「やっぱりこのままじゃ足りないか……」


騎士の装甲を打ち破るには【神速】の加速が必要となることはある程度予想できた。

今の魔力では【神速】は使えて二回。

失敗はできない。


凛と無防備に構えるナイトメアの懐に飛び込むために一回目。

あまりの加速度に意識が置いていかれ、隙が生じる。

その影響でナイトメアに反撃を許してしまった。


「ちっ!むずいなこれ!」


驚異的な反射速度で放たれた騎士の反撃をスレスレで躱し、一旦距離をとる。

残りはあと一回。

シャルルは何故あんなに軽々とこれを扱えたのか。

うまく【神速】を扱うため思考を巡らせた。

慣れか、いやいくら慣れても人間の反射神経には限界があるはずだ。


「反射神経……感覚……」


そのどこかで聞いた言葉を反芻する。

そしてその答えに辿り着いた。


「…………装術か!」


彼女は確か【感醒シャルフ】と言っていた。

神経を伝導体アクアで補助する装術。

恐らくそれで【神速】の速度に無理やりついていっていたのだ。

使ったことはないがこれにかけるしか無かった。

余剰分の伝導体アクアを脳に流し込み、脳で直接体を動かすイメージを描く。

すると感じたことのない感覚が身体中を巡った。

次の瞬間、第三者の視点に立っていると錯覚するほど周囲の状況が手に取るように把握できるようになる。


「多分……いけてるよな?やるぞ!」


警戒態勢で佇む化物に正面から突撃する。

今までの戦闘でわかった事はこのナイトメアはシャルル本人とは正反対だと言う事。

一撃は強烈だがその動きはあまりに鈍重だ。

読み通り素直に武器として振るったその右腕をひらりと躱した。

そして攻撃後の隙だらけの顔に向けて大剣を構える。

その際、最大の推進力を生み出すためその踏み込みに二回目の【神速】。


「戻ってこい!シャル!」


【神速】の加速を加えた刺突がナイトメアの額を完全に捉えた。

手に重い感触が伝わるのを感じさらに力を込める。

するとそれはヒビ割れ砕け散った。

甲高い澄んだ音をたてて舞ったのは


──蒼色の破片。


それはキラキラと輝くと蒼炎となって消滅した。


「くそっ……」


力の行き場を失った体が無防備にも晒される。

そこに襲い来る騎士の強烈な蹴撃。

激しく打ち上げられ彼の体が宙を舞った。



──シャル……わりぃ



鈍く生々しい音を立てて彼の体が地面に打ち付けられる。

痛みはもはや感じない。

限界を超えた痛みに脳がその情報を遮断しているのだろう。

諦めた途端、陰りきった空が目に飛び込んできた。

遊楽施設で彼女に助けられた状況と今が重なる。


「なん……も変わって……ねぇな」



大切な人一人さえ守れないなんて




俺は本当に無力だ。

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