序章 一部 【手のひら】
初投稿です
文章力、語彙力ともに拙いですがこの作品を書いていく中で成長できたら良いなと思っています。
──その時、暗闇に溶かされていくような絶望の中で何かに縋りたかっただけだったのかもしれない。
暗黒に降りしきる雨が無様にへたれ込む体を嘲笑うかのように打ちつける。
冷えきったその雨粒が体表面だけでなく心の感覚まで奪い去っていく様に感じた。
あまりの絶望に意識さえ揺らぎ始める。
俺は今、大切だったものに殺される。
大切、そんな言葉では生温い。
恩人だった。
仲間だった。
家族だった。
愛していた。
そんな人に今、俺は殺されるのだ。
「全然……っ……笑えねぇよ!……」
──どんなに苦しくても笑顔を忘れちゃダメよ
彼女の言葉を思い出して、込み上げる哀しみを吐き捨てるように叫んだ。
その叫びをもってしても殺意をもってこちらに歩み始める彼女の表情に変化は見られない。
この地獄の様な状況に殺意を受け入れて死んでしまった方が遥かにマシに思えた。
諦めて彼女に身を委ねよう、そんな思考が脳を支配する。
彼女の手で終わる事ができる、それだけで満足だ。
──殺せ
そう言いかけた時、横槍を刺したのはいつの間にか横に立っていた怪物の囁きだった。
──まだ間に合う、立て
怪物は失意の底に沈むこちらに眉一つ動かさずに手を差し伸べる。
その表情に悪意は感じられず、寧ろ怪物から差し出されたその手が酷く温かく、眩しいものに見えた。
まだ間に合う。
その言葉の意味を、その手に助けを求める事の意味を、考える余裕はなかった。
絶望と希望。
相容れぬ感情が一つに混ざり合い、瞳から溢れる雫が視界を包み込む。
思考を放棄した肉体が、本能が、その手を、救いを求めていた。
──そうだ、俺はただ希望が欲しかっただけだった。
僅かでも彼女を取り戻せる希望があるのならかけてやる。
血反吐を吐いても、何度殺されようと絶対に取り戻す。
その差し出された柔らかな手をとり、再び立ち上がる決意を。
──怪物になる決意をした