episode1 第三章第二部「再開(さいかい)」
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瓦礫のトンネルを抜けるとすぐそこに扉があった。
そこが目的の部屋だとノブを引くと難なく回り、ヒカルがそしてカミシマが滑り込み施錠する。
同時にカミシマが近くの棚などを押し付け衝撃に備えてヒカルも重そうな物を押してくる。
次の瞬間、壁ごとドアが振動した。
化け物が体当たりをかましたのだ。
なんて馬鹿力なの!?
衝撃を抑えていた腕に感じたヒカルが眉を寄せながら胸中で愚痴る。
だがいつまでもそのバリケードにくっついているわけにも行かないんだ。
次が来る前にと次々とドアの前に物を置く。
もう部屋中のありとあらゆる重量のありそうなものを。
あらかたおき終えるとその場を離れる。
すぐさま倒れているアリスの元へ駈け寄り、肩を1度2度ゆすると「う、ん・・・」と声を上げて目を覚ます様子にホッと肩を落とすと二人。
しかし、二人を確認したアリスの方は慌て怯えたように口を開く。
「クラウス先生の検査室で見たの!ガラスの部屋の中で!ミイラみたいに細い女のヒトが水の入った水槽の中で眠ってるの!そこで私注射と血を取られて・・・!」
いきなりのまくし立てる様にしゃべりだしたアリスに驚きつつカミシマはハッとして口を開く。
「ミイラ・・・。この計画で出来た薬を投与する予定の患者か」
そこへアリスを連れて行っていたのか?
「今日の朝もそこにいたの!でも、途中で暗くなって・・・」
そして病棟へ戻って来たという。
そこまで話して怯えたようにうずくまる彼女の背をさすってやるヒカル。
「私達の因子、薬にするって言ってましたけどその人に使ってどうするんです?」
お決まりのポーズをしつつ立ち上がったカミシマは独り言のような調子で話し始めた。
「何故こんな状況になったかは先ほどの説明どおりだ。で、本来何故この薬を必要としたかだが・・・」
ガンッと言う音がして壁にひびが入った。
一同はいっせいにそちらに向き直った。
そして次の瞬間には視線を合わせた。
とにかくここを脱出するのが先だ、と。
しかし、出口はあの有様で敵は・・・相手にするなどとんでもない。
他に出口を、と辺りを見回すとアリスが思い出した様に立ち上がって部屋の奥の一角に走り、指差して言った。
「この道なら外にいけるかも」
そこは機材専用のリフト用通路だが今は無人の様で3人ぐらいなら余裕で移動できそうだ、とすぐさま飛び込む。
先にヒカル、次にアリスが腕を引かれながらよじ登り最後にカミシマがよじ登り鉄扉を閉め様とした、刹那!
扉が消し飛び、破片が向かって来る。 反射的に扉を叩きつけるように閉めると激突音が鳴り響き、咆哮が辺りを支配した。
ガゴンッと言う音とともに先ほどのエレベータホールの片隅に降り立つヒカル。
ひしゃげた休憩室が目に入り、頭を振りつつ後から出てくるアリスを下ろし、さらに後ろのカミシマが出てくる様子を見ると銃を構えたままエレベータのボタンを押すと間もなく扉が開き温かな光が溢れてきた。
早速乗り込み降下しはじめるエレベータ。
鈍い機械音を耳にしつつ安堵のひと時を迎えた。
とにかくいけるところまで降りると言う当初の目的どおりかなり下の階まで降りてみるとそこはプラトホームの1つ上のフロアである。
ここからはまた下へ降りられそうな手段をと辺りを見回す。
「とにかく、この事件を起こした人物は最初の階段で蒸し暑い環境を作って我々を保護した。勿論この階のどこかにその人物は同様の環境を用意しているだろうから、そこを見つけて少し落ち着くとしよう」
この提案にヒカルも頷くと傍らのアリスの手を引こうとしたその時!
パッと電源が落ち非常灯の緑が視界に入る。
何事かとしているとあの気配が迫ってくる。
察してカミシマが2人の腕を引いて階段ホールに走り出す。
しかし、突然通過中の通路の壁が衝撃を受けはじけ飛ぶと化け物が飛び出してきたので銃を構え同時に発砲。
激しい銃声が連弾のごとく響き渡る。
化け物の数はこれでもかと言うほどで、付け加えてこの暗がりである。
狙いづらい事この上ない!
しかし、それでも徐々に咆哮の数は減っていく。
もう少し数がへったら走り出せる!
内心焦りつつ引金を絞る。
その時!背後でアリスの悲鳴がして振り向く。
そこには・・・金髪に青い瞳の男が立っていた。
見覚えがあるような気がする。
だが思い出せないヒカルの横で銃を取り落としてしまうんじゃないかと思うほどの勢いで下がる腕があった。
「クラウス先生・・・!」
震えた声が、見開いた目が捕らえたその人物は、恩師であるクラウス・ウィルダーグであった。
その恩師の腕がアリスを締め上げその首元に向けて注射器が差し込まれた。
すると瞬く間にぐったりとして動かなくなる少女。
その様子を確認すると注射器を抜き捨て担ぎ上げて走り出す。
その間表情は一切動かずまるで能面のような顔であった。
突然の事に固まっていたヒカルが動く。
クラウスは近くの専用通路に消えて行く。
閉じる扉。
体当たりでもいいからと走りこんだがヒカルの体は硬く冷たい扉に叩きつけられた。
それでも、押しても引いても開かぬ扉をなんとしても開かなくてはと銃を向け引金を引こうとしたがその銃を別の手が下ろした。
「カミシマ先生!?」
表情を失ったまま首を振ると今度は突然腕を引いて走り出した。そうしてしばらく走り、唐突に口を開いた。
「あのドアは特殊合金製だ。銃弾は弾かれるし、弾かれた銃弾は危険だ。ロックされたようだからこちらからは開かない」
言いつつ突き当りの階段ホールに走りこみ鉄扉を閉じ施錠する。
そして数歩歩くなり力無く階段に腰掛けてしまった。
やはり、クラウス先生だった。
何度か頭を振り再びうなだれる。
そんな様子に、ヒカルも近くにしゃがみ呼びかけるが反応が無い。
急がなくてはアリスが大変なのに!
強く頭を振りヒカルの腕がカミシマの肩を揺さぶる。
「アリスを助けましょう!この病気も、先生達なら治せるかもしれないんだし!」
突然の力強い声に顔を上げると少し目を伏せ再びヒカルと視線をあわせて頷くと立ち上がる。
―――逃げ出してはいけない―――
先ほどの誓いを再び思いつつ、前を行く少女の背を追って歩く。
階下を目指して。
二重の意味合いになってますねえ。
まだ続きます。
よろしくお願いいたします。