episode1 第2章第3部「覚醒」
久々の続編です。
深海です。
何だか一気に話が進みました。
それはもう「ズドドドドドッ」と。
同時に、どういう事なんだよと言われそうな勢いです。
よろしくお願いいたします。
非常等の照らす薄暗い室内に足を踏み入れてどの位経っただろうか?
中央で合流しようと言う話になった後地図を開き印をつけた。
印の位置は口頭での指示だったけど・・・合ってるんだろうか?どうも自信が無い。でも・・・。
崩れた廊下は行き止まりではあったが近くにドアがありそこはどうやら別の通路に繋がっているらしかった。
だから合流の話にも応じられたのだ。
そして指示が終るとカミシマ先生が走り去る。
その足音がして静かになり今さらのように恐怖と不安が湧きあがってきた。
どうにかこの瓦礫の隙間から出られないだろうか?
そうしてあの蒸し暑いが安全な階段室へ戻れないだろうかなどと考えたがそれはどう頑張っても無理で道はあのドアの向こうにしか無いのだと力無く肩を落とす。
そうして、ようやく室内を見回す事が出来た。
どうやらそこは休憩室らしかった。
とは言っても本当に簡素なつくりで何もない部屋に長椅子と灰皿、自販機を置いただけのものだ。
向かい側にドアがある。
外は別の通路へと繋がっている。
これは最初に調べた。
とにかくここを離れて中央へ向かわなければ・・・。
銃の弾丸はフル装填されている。
これもさっき調べた。
セーフティも外した。
そこまで確認してようやくドアの前へ立った。
「・・・!」
ドアノブに手をかけたその時、何かが動くような気配がした。
この壁の向こう側。
何故だろう。あの化け物が?
そんなバカなと自嘲気味に無理矢理微笑んで見せる。
何せアイツは動いていても音も立てずに動き回るのだ。
気配なんて曖昧なもので見つかるような奴でもない。
でもしかし、とここで一度額を押さえる。
あの蒸し暑い階段を下りている途中から何かがおかしいのだ。
最初はあの暑い温度と湿度にやられたと思っていた。
でも、何か頭の中で・・・。
他の事で同じような事があった気がする。
何だったかな?あ、そうだ。目が覚める時かも。
この病院に来てから毎日、目が覚めるたびにひどい音とかが頭の中でして、痛みがあって。
でも、一体?ここまで考えてフッと先ほどの感覚が消え、瞬く間に思考がスッキリしていくのを感じる。
本当になんだろうと、一度うつむくが今はそれどころではない。
体調不良ならカミシマ先生に合流してから訴えればいい。
さあ、出発の時間!自身を奮い立たせるようにガッツポーズを1度かますとドアのノブを回し辺りの様子を窺うと素早くすべりでた。
寒い・・・。何度も思うがあの蒸し暑い階段室が懐かしく思える。
今のところ何も動くモノは無い様だが・・・。
ダメだ・・・。何かの動く気配が壁の向こう・・・丁度今から行く方向に合流する通路からする。
ただいきなり1人になっておっかなびっくりになってしまっているだけなのだろうけれど・・・。
とにかく進まなくては。
中央についた先生を待たせておくのはやはり危ないはず。
意を決して歩き出す、銃を構えながら。
そして、嫌な感じのする通路に差し掛かった。
同時にあの気配が近付いて来る気がして咄嗟に身をかがめて・・・刹那!
ビュッと空を切る物体が通過して壁にめり込むのを捕らえて尻餅をつく。
アイツがいた!気配のあった位置に!
危なかったと思いつつもこのままでは危険だとも内なる声はやかましくわめきたて続ける。
こいつを倒す?おそらく火力が足りない。
今までのヤツは先生の大型の銃でしとめて来たと言ってもいい。
だからこの銃じゃ・・・。
考えているうちにアイツが咆えてこちらを睨んでいる。
大きなそのビー玉のような目はぎょろぎょろと動いていて、一体何を考えているのかいないのか・・・。
そこでハッとして銃を構え、とにかく脆そうな所にとまだゆっくり動く奴の目の辺りに狙いをつけて引金を絞り発砲!
耳をつんざく様な音とともにアイツは開いている方の手で目を押さえて狂った様に吠え出した。
血が大量に床に落ちてくるのが見える。
内心よし!と気合を入れ、その間に走り出す。
同時にチラッと視線を巡らせてみると、後ろの方で壁にのめり込んだあいつの腕が抜かれ自由になるのを振り返った視界の隅で捕らえてさらに走る足を速く動かす。
ブーツのかかとが床を叩いていく音と奴の咆哮。
これで他の化け物も出てきたりしないだろうか?
不吉な事を考えて頭を振った次の瞬間!進行方向の突き当たりにも通路は続いていて、またあの嫌な感じの気配がしてきた。
まさかね・・・?
近付くにつれて気配は強くなる。
そして曲がり角にあいつの腕がフラフラと揺れているのが見えるではないか。
揺れ方からするとこちらに背を向けているようだけど・・・?
考えているうちに後ろからさっきの奴が咆えた声が近付くのが分かりとにかく手前の角を曲がる。
この先はどうなっているんだろう?一本道の様だともう1度曲がって息が止まるかと思った。
その先に道は無く・・・しかし、ドアが1つある。何か頑丈そうなドアだけど・・・。開いているのかどうかが気がかりだが。
ドアノブを回し引っ張ると重いドアが半分くらい開いて止まった。
このドアなら・・・。
とにかく中へ入りドアを閉める。
相変わらず薄暗い室内。
何かありとあらゆる場所に非常等の光を鈍く反射する物―――鍵がタグに繋がれてぶら下がっている。
ここは、鍵の保管庫の様だが?
他にどこかに繋がる通路は!?
慌てて見回すと部屋の奥に重々しい扉がまた1つ・・・。
駆け寄ってノブを回し引くが鍵がかかっているのかびくともしない。
血の気が引くの分かるほど全身が心臓になったかのように振動し、視線がキョロキョロして。
とにかくどうしよう!?
何か無いかと扉の辺りを見回す。
その間にもアイツの気配が近付いて来る。
しかも確実に2体。
『武器庫』のプレートが非常等の鈍い光を反射しているのが視界に入る。
そうだ!
今度は体が熱くなるのを感じた。
ここは鍵の保管庫。
この『武器庫』の鍵も・・・!
すぐさま体を動かしながら視線を巡らせ、状況を整理していく。
キーボックスは管轄ごとに設置されているらしく、書類倉庫、物品庫、居住区、食料品庫・・・警備管轄『武器庫』!
部屋を一周している途中でその鍵を見つけ、細い鎖を引き千切って手に取る。
どんなに細くても鎖―――それをこんな風に引きちぎった事は無かったけど意外と出来る物ね?などと妙なテンションのまま、今にも笑い出しそうな勢いで『武器庫』の扉の前に立ち鍵を差込まわす。
鍵は何の抵抗も無く小気味のいい音とともに開場され、ドアノブはすんなりまわった。
重々しい扉を引っ張り、入れる程度開いて中へ入るとすぐさま閉じて施錠する。
ドアが閉まる間際、あちら側のドアが外からへこむのを見たので手が震えた。
しかし、振り返って今度は別の意味で体中が震えた。
「・・・武器庫、だものね。」
部屋のいたる所に大型銃器やら何やらが所狭しと置いてある。
思わず唖然としてしまうほどに。
喉から笑いが零れる。
ここは病院じゃないの?嫌な疑問が口をついて出たが次の瞬間、彼女の体は部屋の中央へ吹き飛ばされた。
何が!?
全身で振り返ると今しがた通過してきた重々しいドアが微妙に歪んでいる。
簡単な事だ。
あいつらがドアに体当たりか何かしたのだ。
こうしていられない!
尻餅をついたままで後ろに後ずさる。
そして、その手に何かが当たる・・・。
大きな、映画とかで見る銃。
マシンガン?弾も入っている。
手にとった銃のセーフティだと思われる部分をいじる。
これなら使えるかも・・・かなり重いけどしっかり押さえて。
考えているうちに再び大きな音を立ててドアが内側にへこむ。
同時にそちら側に構えて引金を引くと、連続して火を噴く銃!手からはじけ飛びそうになる銃を必死に押さえつけて奴らの気配目掛けて・・・正確には何かアイツらの中にある『気になる』感じのする何か、なのだが。
とにかく狙えるだけ狙って撃った。
それは1分続いただろうか?
かなり長いことにも感じられたが。
とにかく静かになった。
とにかくアイツ等の気配が消えた。
もうアイツ等は死んだ。
何故かそう思ったところで立ち上がり、ホコリをはらった。
さて、どうやって出よう・・・?
辺りには相変わらず見るのも初めての武器ばかりで何が何だか・・・。
とにかく現在位置の確認をしたほうがいいかもしれない。
へこんでドアが開かないかもしれないけどいざとなったら銃で壊す事も出来るかもしれないし、ここなら他の道具も見つかるかもしれないと地図を広げる。
武器庫はすぐ見つかった。
そして、合流地点は・・・何とこの武器庫にはもう1つドアがありそこから中央はすぐそこであると分かったのだ。
それならこうしていられないと立ち上がりドアが記された位置を探す。
それはすぐ見つかった。
何のことは無い。
入って来たドアの正面にあった棚の裏だったのだ。
ならすぐさま・・・と思ったがよく考えれば武器はいるのだ。
自分が使えなくともカミシマは使えるかもしれない。
何をする物なのかも分からない武器も多いがとにかく近くのダッフルバックにその辺の武器を詰め始めた。
少ししてこの位いかと持ち上げようとするとかなりの重量だと思い1度おろしてを繰り返しやっと出発となった。
フッとまた妙な気配がしてあのマシンガンをどこと言う事なく構える。
しかし、何も無い。
近くで気配がしたはずなのだが・・・。
そう言えば、どうしてあんな気配だの勘だのが当たったのか?
必死だったから?それにしてはあまりにも・・・。
そこまで考えてまさか、と目を見開く。
アリスもアイツがいる時は音がすると言った。
そして自分も?
―――いや、まさか。おかしい事じゃない気がしていたの。でも、先生は分からなかった。今は知らないが。先ほどの予想。アリスと私の共通している点。―――
そこまで考えてせっかく立ち上がったが再び座り込んだ。
アイツの事が分かる。
アリスとの共通点。
この奇病にかかっている・・・。
だから?
アイツと何か関係があるの?どうして?まさかの続きは恐ろしくて口には出来ない。
しかし、言わなければならない気もする。
言ったら本当の事の様で恐ろしいはずなのに、それでも口は動いた。
まるで、何か別のモノが喋るように。
「アイツは私達のかかった奇病と同じ病気の患者?」
言った後で口を押さえた。
じゃあ、じゃあ・・・いつか私達も?
どうして?いやいやを繰り返す。
しかし、おかしな事に恐怖は言うほど感じていない。
どうして?ただ麻痺しているだけなのだろうか?
その時、再びあの気配がした。
だが、今度はたじろぎもせず、ただ感知していた。
これはアイツかな?うつむき力無く微笑む。
<・・・先生・・・お姉さん・・・何処?>
「!?」
今のは何、と目を見開く。
アリス?床の下から?一体どうして!?
思わず床を両手でガサガサと撫でる。
声がしたのだ。
まさか!
「アリス!アリスは下の階にいる・・・!」
それが分かる!そうだ!アリスもあの奇病にかかっているんだ!だから分かる!
とにかく、と立ち上がろうとした。
しかし同時にまたあのひどい音と頭痛。
本当に何なの!?
わたしは行かなくちゃ行けないの!
どうしてこんな風に、あって間もない少女に必死なのかとも思う。
おそらく私は怖いのだ。
だから、でも・・・、アリス、あの子は小さいのに苦しんでいるんだ!
1人にしておくわけにはいかない!
例え化け物になるのだとしても!
これはただのエゴで出来た仲間意識かもしれない。
でも、これだけは分かる。
自分より小さな子を怖い思いをさせたまま化け物にさせるような事は嫌だと。
思うが早いか立ち上がりドアの前に立つ。
怖いけど怖がってる暇は無い。
そう踵を踏み鳴らし前を向く。
<ならば歩めばいい。それが始まりで、お前の答えだ・・・>
「?」
不思議な声とも言葉ともつかない声が聞こえた気がする。
次の瞬間には何を言われたかも分からないという有様だが。
同時に右目が焼けるように熱くなり一瞬立ちくらみを起こすが、それすら瞬間的で熱さもすぐに引いてしまう。
そして、この時から何故か分からない感じで、今まで感じていた感覚が変わるのが分かる気がしたのだ。
何か・・・だが、今はそんな事はいい。
とにかくカミシマと合流してアリスを見つけなくては!
何のためらいも無くドアを開き銃を構える。
2匹も倒したんだ!
何匹こようがやっつけられる!
地図にあったとおりの道を走り出す。
敵に怯える必要は無い。
アイツが来ればすぐ分かる。
今までが嘘の様に体が動く。
人間吹っ切れてしまえばどうとでもなるものよ!と、張り切りのような思いまで胸にわきあがってしまっている気がするくらいだ。
通路をずんずん進んで行くヒカル。
その間も3匹の化け物を相手にしたがあの気になる部分。
おそらくそこが弱点であり、弱点が分かっているのだから夜店の射的だと思って早めに止まり、おびき出して倒していった。
そうしている間に合流地点に到着し、長椅子の前に立っている人物に気付いて走り寄る。
「先生!」
声の主の方を向き顔を上げる。
ああ、無事だった。よかった。
この時心底そう思った。
近寄ってくるヒカルの姿に多少驚きつつ。
「無事だったか。・・・それは?」
肩から下がったベルトはダッフルバックの物で他にはサブマシンガンが両肩にかかっている。
なんでも避難した場所が武器庫で、調達してきたと言うのだ。
おろしたダッフルバックの中にも装備品から手榴弾、弾薬、サバイバルナイフ、マグナム、ベレッタ。
肩にはレミントン、グレネードガン、サブマシンガン2丁にキャリコピストルが引っかかっている。
よくこれだけ持って来たものだと思いつつ武器の確認をしつつベルトやサイドパックの装備を手伝ってやり武器と弾薬を分配した。
ヒカルにはハンドガンをはじめサバイバルナイフやサブマシンガンにキャリコピストル、手榴弾を持たせ使い方を教え残りをカミシマが持つことにした。
正直、日本人。
しかも女性にこんな事をさせていいのかとも思ったのだが・・・。
そこまで終えてヒカルが口を開いた。
「アリス、下の階にいます。」
いきなり何の事かと思って目を見開くカミシマをよそに早く降りて見つけようといってきたのだ。
一体どうしたのか?と聞くと今度は少し寂しげに目を伏せて首を振るとただ「小さい子1人じゃ危ないです。急ぎましょう」と返事を返し立ち上がった。
このフロアの脇の非常階段から下に降りられるのかと聞いてくるので返事すると歩き出す。
本当にどうしたんだ?とにかく待つよう言うと立ち止まって振り返らずに喋り出した。
「アリスが化け物が来たとか音がするとか言ってましたよね?」
言いながら振り返り続けた。
「私もなんです。音じゃないけど分かる。奇病にかかったアリスの気配、下のフロアからしました。化け物の事も気配でわかるんです」
何?何だって?
始めヒカルが何を言い出したのか分からなかった。
目を白黒させるカミシマをよそにヒカルは続ける。
「多分あの化け物にアリスも私もなるんですよ?だから、奇病の人とか同士って分かるじゃないんですか?」
ここまで来てカミシマは口を押さえて考えた。
考えて口を開いた。
「それは違う。」
何が?と振り向くヒカルにカミシマは向き直る。
「君たちの奇病のせいで化け物、正確には『NOA』と言うらしいが、とにかく化け物にならない。化け物が君たちの因子を、それは改造した因子なのだが、それを注射された人間の成れの果てなんだ。だから、君たちが何かになったりはしない。」
驚いた様に目を見開いたヒカル。
彼女の手を掴んだカミシマはそのまま引っ張って歩き出す。
最後にひと言呟いて。
「とにかく今は、アリスを見つけるのが先だな。」
2人は防火扉の向こうに消えていった。
ヒカルが何だかアレな事になってしまって。
因子の影響なんですがね。
後、途中で聞こえた声とか、右目の異変とかいろいろ原因があり、あの変がターニングポイントですね。
次回、バトルパート章ですかね。
言うほどバトルはしてませんが(そもそも化け物相手のバトルって、ヒカルの能力だと一方的ですし)。
よろしくお願いいたします。