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NOA   作者: 深海 律
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episode1 第1章第4運部 邂逅 2

NOAを読んでくださってありがとうございます。

深海 律です。

漢字の変換等が出来てなかったりしますので、感想、意見とあわせてご指摘の方ありましたらドシドシお願いいたします。

 「一体、これは・・・?」

 7階のエレベーターホールの脇にある非常階段に向かっていた2人はある変化に遭遇していた。

 エレベーターの前の天井には砕けた蛍光灯が。

 そして、そこより少し病室寄りの廊下には血がベットリと付いており水たまりのようになっており、その上に化け物が倒れていたはずだった。

 だが、今そこに化け物は倒れておらず代わりに引きずったような血の跡があった。

 あの不気味な化け物が消えてくれたのは大いに嬉しい事だが死んでいなかったのだろうか?

 2人の脳裏に嫌な考えが浮かんだ。

 ではまた襲ってくるのだろうか?

 「とりあえず無いだろう。」

 横で嫌な考えに支配されていたはずのカミシマが銃を持ち直していつの間にか引きずった跡の方へあるきながら言った。

 「どうしてです?」

 後を追う気になれなかったが置いて行かれるのではと思い後に付く。

 「生きていて動いたのなら、よくは分からないが足跡か何かつくだろう。しかしこれは、ヤツらが動いたと言うより、動かされた跡といっていい。この引きずり方・・・もしかしたら生き残りがいて、何らかの理由でこれを移動させたのかも知れない・・・。」

 自分でそう言いながらこめかみの辺りを押さえた。

 じゃあ一体何の為だ?

 こんな化け物を動かしてどうするんだ?

 ただの清掃美化の為に清掃員が片付けるのか?

 そんな事は絶対無い!

 あり得ない。

 何を考えているんだ私は・・・。

 考える端から否定していき、さらに唸る。

 そうしている間にヒカルが動いた。

 「本当だ・・・。でも、どうして移動させたんだろ?」

 独り言を言いながら辺りを見回すが少し階段の踊り場に入った辺りで血の跡が消えている。

 かすかに下り階段の方に血の跡の先が向いている事から少なくとも上にはいっていないように思われる。

 「下に人がいる?」

 言い聞かせて不安を消すようにかぶりを言い振り返る。

 思案の最中、何となく血の跡を目で追っていたのでその先にいたヒカルと目が合うと、終り無き思案の迷宮を振り払い歩き出した。

 とにかく下に行こう。

 今はそれしか出来ないのだと階段踊り場に踏み出した。

 「とりあえず監視棟へ・・・。」

 「!」

 階下から「あの咆哮」が響いてきた。

 やはりまだ生きていたのか!?

 2人は階段を駆け下りた。


 「あ・・・ママ・・・。助け・・・!」

 金の髪を揺らしていやいやと首を振る少女。

 尻餅を付いたまま後ろに下がろうとするが思ったようにいかず座り込んだままその場から動けなくなってしまった。

 そうしている間に化け物は目の前まで迫り、太い腕を振り下ろす。

 そこからスローモーションに見えて、瞼を硬く閉じる。

 刹那―――!

 「伏せろ!」

 聞き覚えのある声の様にも聞こえたが、今はそんな事はいい。

 他の誰かがまだいて助けてくれるんだ。

 思うと同時に床に張り付く。

 次の瞬間、耳をつんざく様な音が何度かして彼女を隠していた巨体が横にヨロヨロと動いた。

 再び、今度はもっと大きな音がして化け物が倒れたと思われる音が響き静かになった。

 恐る恐る瞼を開きあたりを見ると、左側の壁際にあの化け物が倒れていた。

 血溜まりが広がってきて足元にも届いてきたので慌てて飛びのく。

 そんな彼女の耳に再び先ほどの声がした。

 振り向くとそこには白衣を着たブラウンの髪の男性と黒髪の女性が立っていた。

 勿論男性の方は主治医チームのスティーブだとすぐに気付いた。

 同時にもう1人は、日本から来た発病者の女性だという事も気付いた。

 生きている人がいた。

 1度自分の病室に向かったが母親とは会えず、1人彷徨っていた所に現れた2人。

 これで助かる。

 動けなかったのが嘘の様だと立ち上がり、2人のもとへ走り出す。

 「スティーブ先生!」

 カミシマに抱きつく少女を彼も受け止めてやり背中をさすってやる。

 「君は・・・アリスだな?無事だったか。何処に隠れていたんだ?」

 「・・・え?」

 秘密の研究室。

 でも、先生はそれを知らないかもしれない。

 いつもその部屋にはいないんだもの、教える訳にはいかない。

 固まったように動かなくなり、虚を見た目をした彼女―――アリスを不信に思ったカミシマが彼女の肩を揺さぶった。

 「アリス?大丈夫か?」

 「大丈夫・・・。検査に言ってたの。でも、さっきのやつが襲ってきて・・・。ママの所へ戻ろうとしたのだけど襲われて・・・。」

 「検査?こんな朝早くにか?急だな。」

 「私が苦しいから調べてって言ったの。そしたらすぐに調べてくれるって・・・!」

 慌てて言い返してきた彼女に少し不思議そうな顔をしたもののそれ以上聞かず、1度頷くと振り向きヒカルを呼んだ。

 呼ばれてカミシマの横まで来ると、何を言っているか分からないが、どうやら心配をしてくれているようで、先生が質問に答えると安心したように笑って私を見て頷いた。

 「とにかく、この下の第2監視棟に向かおう。」

 2人は私を真ん中にして階段の方に歩いていった。


 分厚いカーテンを引いた室内は非常灯の明かり以外に光源がなく、薄暗かった。

 すぐさま中に入りドアを施錠すると管理コンピューターの電源をオンにする。

 だが、パソコン画面には相変わらず薄暗い室内と自分の顔しか映っていなかった。

 「電力が落ちているな・・・。」

 まさかとは思っていたが、少し苛立った声が小さくこだましたのに気付き、後ろの2人が視線を送ってくる。

 2人とも極度の緊張状態のせいかぐったりとパイプ椅子に腰を下ろす所のようだ。

 こちらに気付いたヒカルが口を開いた。

 「使えないんですか?」

 「いや、そうじゃないが・・・。」

 気になって彼女達の横を通り抜け、奥にある小さな台所にある冷蔵庫を開いた。

 中からはヒンヤリとした空気とオレンジ色の光が溢れ出してきた。

 この電気回線は別回線になっているようだ。

 それを確認して振り返ると立ち上がったヒカルの横まで歩いていき口を開いた。

 「先ほど大型の機器が動かないと言ったがここもそうらしい。」

 「じゃあ・・・。」

 不安そうに傍らのパイプ椅子にパジャマの膝の部分を握り締めて見上げているアリスに寄り手で口元を覆うヒカル。

 そのまま次に何か言おうとしたようだが、それより早くカミシマが言った。

 「この階の端にある発電機を動かしてくる。ここで少し待っていなさい。すぐ戻ってくる。そうだな・・・2人とも朝食まだなんじゃないのか?」

 ヒカルが口を開こうとするのを半ば強引に無視する形で、先ほどの冷蔵庫に向かい中からオレンジジュースを2、3本とソーセージや手で開けられる缶詰に近くにあった封の開いてないスナック類を持って戻って来た。

 「出発の準備をして待っていてくれ。空腹で動けない患者を2人も担いでは動けないからな。」

 そこまで言ってヒカルを椅子に座らせた。

 「すぐに戻る。何かあったらこの子を連れて逃げるんだ。銃を撃てば分かるからな?」

 言い終わるとアリスの方を向きしゃがみこみ視線を合わせてゆっくり口を開く。

 「危なくなったら彼女と逃げるんだ。分かったな?すぐ戻る。」

 肩をさすってもらって頷きヒカルの腕にしがみ付くアリス。

 その様子を見て立ち上がり施錠してあったドアを開けて出て行くと外から施錠しなおす様声がして、慌ててヒカルがドアへ走っていく。


 閉めたドアの裏で鍵がかかる音を聞きすぐさまこれから向かう方向に向き直る。

 ヒカルとアリスをここに残していくのは心配だが電源が落ちたままでは表ゲートは開かない。

 行くしかないのだと1度胸中で喝を入れショットガンをしっかり持ち直して歩き出した。


 言葉が通じないと言うのはかなり不便なものだと傍らでソーセージをかじる少女に視線を向ける。

 13歳との事だが外国人は大人びて見える。

 14、5歳くらいに見えるのだが・・・、それでもまだ小さな女の子だ。

 言葉が通じようが通じまいが関係ない。

 ここは私がしっかりしなければと自身に喝を入れつつ手に持った缶ジュースをあおり、改めて辺りを見回す。

 何か使える物を準備しておいた方が良いのではないかと考えていたのだが空腹には耐え切れず、しかも何をしているのかと言うアリスの質問に答えるも通じず、結局先に食事をとっていたのだ。

 つたない英語で少し待っているよう言うとまずテーブルの上に日保ちしそうな食糧を探し出し並べ始める。

 スナック菓子では食糧にはならないので端に避け、密閉されたソーセージ類に手で開く缶詰類を始めとして未開封の缶ジュースや未開封のペットボトルに入った水などを用意した。

 近くに懐中電灯や電池、手袋、ドライバー、バンソウコウなどの救急セット、清潔な布、アリスの上着等をテーブルの上に置く。

 次にロッカーの横にあった大きすぎず小さすぎない防水加工されたサバイバル用のリュックにつめ始める(何故こんな物があるのかと、大いに首を傾げてしまった)。

 確かこのリュック、スキューバダイビングで水中に持っていったとしても中に水が入らないと有名なメーカーの物だったはずだ。

 このリュックなら万が一水の中に落としてもチャックからも水の浸入を防げる。

 「・・・。」

 「・・・?」

 横にアリスがきて様子を見ているのに気付く。

 さて、どうしたものか?

 言葉はほとんど通じない。

 こんな事ならもっと英語の授業を真面目に受けておけばよかった、などと思ってももう遅い。

 「どうせ日本で一生暮らすのだから英語なんてとか言ってなきゃよかった・・・。」

 ボソッと呟きつつリュックに引っかかっている・・・職員?持ち主の物だろうか?

 変わった―――輪を何十にも重ねたようなデザインのキーホルダをいじっているアリスに気付く。

 銀製なのか、艶のある金属はキラキラしていてこの歳くらいの少女の興味を引いたようだ。

 しかし何か・・・見覚えがあるような気がしているのだけど?

 何処で見たのか?

 リュックは海外の有名メイカーだがこのキーホルダは別のメイカーの物の様だし。

 やはり海外メイカー製品で有名な物なのだろうか?


 怖い奴に襲われてもうダメだと思っていたけど、そいつは私を襲う事無く倒れた。

 そこには医療チームにいたスティーブ先生が銃を持って立っていた。

 助かったの?

 隣にあの日本から来た女の人もいてここから出ようって話してたみたいだった。

 でも、何かあってそれが出来ないから少し待ってるよう言ってスティーブ先生は出て行ってしまった。

 そしてあの女の人―――ヒカル?

 彼女と2人残された。

 言葉も通じないみたいでとにかくご飯を食べる事になったけど・・・。

 そこまで考えてアリスは少し前に食事を終えて何かの作業を始めたヒカルに視線を向けた。

 黒髪の・・・20歳くらいとの事だがそうは見えない・・・ハイスクールの学生にしか見えない女性をマジマジ見つめる。

 色んな物を集めてリュックに詰めているから出発の準備を先生にでも頼まれたのかもしれない。

 だったら手伝わなくちゃ。

 思い立って急いで今食べているパンとジュースを食べ終えて彼女の横へ行った。

 黙々と作業するヒカル。

 日本人は真面目だって言うけどこんな時でもそうなんだなと思いつつしゃがむ。

 すると、不思議な―――いや、見覚えのある物を見つけた。

 それはリュックに引っかかった銀のキーホルダだが確かに見た事がある。

 見たのは確かあの暗い研究所の部屋の・・・?

 何処だったかな?

 なんか大切な事なんだけど、あの部屋にいる時は検査の薬を飲んでいるから意識がはっきりしない。

 でも確かにあの検査の部屋で見たのに・・・。


 急がなければ。

 いや、勿論十分に注意も払わなければならないのだが・・・。

 何せあの管理室には鍵があるとはいえあの化け物なら腕を振り上げただけで吹っ飛ばしてしまうだろう。

 小さな子供と若い女性では危険すぎる。

 辺りへの注意をしつつ進むカミシマは内心焦っていた。

 あの部屋より直線距離で200mの場所にある発電機の機動所は数100mもの距離を移動しなければ辿り着けない。100m前後の廊下を何本も挟んでいるからだ。

 だだっ広い敷地がいるといってこんな所に建てられたこの病院だがこうなってみると広くて快適とは言いがたい物だ。

 ここを出たら、すぐに大学の狭い研究室か小さな病院に赴任してやる。

 そう内心舌打ちしつつようやく辿り着いた発電機発動室へ滑り込む。

 勿論ここも暗いのだが・・・。

 さて、何処にスイッチがあるのやら・・・?

 薄暗い室内を手探りで進みはじめる。

 膝をぶつけ肩をぶつけおまけにおでこの前をパイプがかすめてビクリッとしつつかすかな非常灯の灯りを鈍く反射する起動スイッチまで辿り着く。

 流石にここの電源は予備でまかなわれているようだと操作を始める。

 しかし、作業終盤で予期せぬ事態に見舞われた。

 「タイムリミット?」

 ここでは施設と外界を繋ぐゲートと周りを取り囲む電磁壁の制御を行っているのだが、今この装置はメインコンピュータからの独自のリクエストを受けている状態にあるらしい。

 内容は外部との遮断目的としたゲート通過制限時間処置。

 すなわち、ゲート解放措置を行っても一定時間が経った後に自動で閉ざされてしまうと言うものだ。

 そしてその設定時間以内にゲートに辿り着くのはまず無理である。

 通常ではこんな事にならないはずなのだが・・・。

 この度の異常で電気系統ならずホストコンピュータまでいかれてしまったのか?

 だがそんな事はどうでもいい。

 とにかくこれでは外に出られない。

 ではどうすれば?

 答えはひとつである。

 メインコンピュータからの操作が必要だ。

 但し、それには1度この治療施設を出て研究所に回りこまなければならないし、自分はその手のプロでは無い

 。対応出来るかどうかと言うと自信もない。

 確か1度研修の機会があったのだが・・・その時は単純作業だったように思えるがそれは通常時。

 今は非常時だ。

 そう簡単に事が進むだろうか?

 いかれたシステムの相手なんてまず無理だろう。

 だがそんな事を言っていられないと言う事も十分理解している。

 自分の後ろには患者が2人も居るのだ。

 彼女たちをここから脱出させなければ。

 ここまで考えて次の行動は決まった。

 研究所のメインコンピュータ操作用端末まで辿り着き再び脱出を試みる事である。


 外からくぐもったカミシマの声に施錠を解くヒカル。

 彼が中に入ると再び施錠しなおしてパイプ椅子に座ったカミシマの元へ行く。

 アリスはまたウトウトしているのでしばらくそのままにしておくらしい。

 「ここのゲート解放装置が使えない」

 開口一発目に耳にした言葉はこれで意味が分からず一度黙るヒカル。

 だが次第に不安がこみあげ口を開こうとするが、声を発する前にカミシマが次の言葉をつむぐ。

 「病院のコンピュータから解放しても一定時間が経つと自動でゲートが閉まるようにリクエストが入る設定なっているようだ。だからこれから研究所のメインの操作端末所へ向かう。それに伴なって脱出ルートが変更になるからよく聞いてくれ」

 そこまで聞いてここを出られないわけでは無いと知りホッとしつつ気を引き締め続きを待つ。

 「まずこの病棟を出て裏側の研究所へ回り込む。その後は端末操作所へ向かいゲート解放とプログラムの解除を行い本来通るメインストリートではなく研究所地下のエリアトレインで地下を行き脱出する」

 リクエストを解除するのは困難だと言う事があの後分かり結局研究員退避用の地下鉄を使うルートに切り替えるしかない。

 それが今のカミシマが導き出した脱出法であった。

 そこまで伝えるとテーブルの上のリュックサックに目をやった。

 「準備は整っているんだな?」

 地下鉄の終点から街までは数十キロの距離がありその間はここほどでは無いがやはりうっそうとした山である。

 中味を少し確認したが、とりあえずこれで問題は無いであろうと頷くと引き寄せたリュックを背負いながら立ち上がったカミシマがアリスの肩を揺らして起こしだす。

 目をこすりながらカミシマがいる事を確認すると辺りを見回す。

 「あの化け物がどの位いいるのかは全く分からないが危険である事は間違い無い。しかし、他に道もない。分かるな?」

 そんな事は今の話を聞いた時点で承知していると頷くヒカル。3人はすぐさま階下の出口を目指した。

やっと動き始めました。

ここまで、長かったです。

まだまだ先も長いですが、お付き合いの方、よろしくお願いいたします。


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