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◆-3 「森で出会う記憶」その4

「モコモコ、あなた私の望みを叶えてくれるの?」



「ううん、それは僕には無理だよ。」


もしかしてと、ほんの少しだけ期待をして聞いたマツリの質問に対し、モコモコはきっぱりと否定した。



「そう…」



浮かない表情のマツリにモコモコは続けた。


「マツリの願いを叶えられるのはマツリだけなんだよ。僕はそれを少し応援したかったんだ」



「私の望みを叶えられるのは私だけ…?」



「そうさ!」


モコモコはその場でピョンッと飛び跳ねた。



――でもどうやって……?――


そう、それが最大の難問だ。いや、それ以前に根本的な疑問がある。

マツリは今までモコモコとした会話の中で一番重要な質問をした。


「あなたどうして私の事を知ってるの?」



「僕にはマツリの記憶が聞こえたからさ。「前にいた世界に帰らなきゃ」って。」



――「聞こえた」…?それは思いが声になって聞こえるという事なのだろうか。

それより私はいつの間にそんな事を考えていたのだろう。まだ自分でも思い出せていない事があるのは確かだが……――



「もしかして他の記憶も見えるの?」


マツリは少し躊躇ちゅうちょもあったが、思い切って尋ねてみた。



「さっき僕に聞こえたのはそれだけさ。でも、からくておいしいものがあれば今度はそれが食べたいなぁ…それを食べたらまた何か聞こえるかもしれないなぁ~」


モコモコは目を閉じたすまし顔を右斜め上に向け、促すようにこちらの反応を伺っている。



――次なるオーダーが来たか……。まさか自分の記憶が食べ物との交換条件にされるとは……――



辛い物とは…唐辛子入りの料理だろうか。しかし今は辛い物など持っているわけもない。というか、マツリはこの世界に来てから辛い料理なんて見たことがなかった。



「じゃあ今度は、マツリが辛いのを持ってる時に来るよ!」


マツリが考えている間にモコモコは踊るように体をくねらせながら、そう言って背を向け、一つ奥の大岩に飛び移った。

大きな尻尾がモフンとなびく。



「きっとマツリならその方法を見つけられるよ!」


彼はマツリを勇気づけるようにそう言って、 奥の岩に飛び移った。



「そうそう、素敵な名前を付けてくれてありがとう!」


モコモコは去り際に礼を言うと、軽やかに岩場を飛び移り暗い木々の陰へと消えていった。



      ◆ ◆ ◆



モコモコの姿が見えなくなってもマツリはその場に立っていた。


まだ思い出せない記憶の部分にそのヒントが隠されているのだろうか?


思い出せば「前」に戻れる?だが、その保証はない。



論理的に考えると、現状では「前」に戻るのは完全に不可能だ。



……ではどうするか……?


…………



現状を変えるしかない…!




…といってもこれではあまりに漠然としたプラン、いや、プランにすらなっていない提案、しかも全く具体的ではない思いつきだ……



だが、まずはたった一歩でも進むこと、それが次の一歩に繋がるとマツリは常に信じている。



たとえ進み方が解らなくともそれを探すためのモチベーションを上げる事が結果的には第一歩に繋がる。

この思い付きは充分その役を担っていた。



望みを叶えるには、そのための小さな目標を一つ一つ、こなしていけばいいのだ。



「何ができるか」そして「何をするのか」。



これを試していけば、或いは……



マツリはそのためにはまず、この依頼をこなす事が先決だと考えていた。

そして今の体験で、城の人達に尋ねなければならない事ができた。



マツリはおもむろに上着のポケットから濃青色の結晶を取り出した。それには大きな光が宿っていた。



      ◆ ◆ ◆



次回は、碧色谷に辿り着いたマツリがこの世界に来た時の事を思い起こします。


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