食事
あれから、俺たちはジーク様にものすごく怒られた。すごい形相で怒られた。その、怒気せまる、顔に俺たちはただただ謝る事しかできなかった。そして、最後にはかなり心配された。怪我はなかったかとかいろいろな事を言われかなり心配された。俺たちはずっと、大丈夫って言っていたのに何度も聞かれ少し苦笑したが、俺たちを大事に思ってくれている事がわかり凄く嬉しかった。そして今、そのあと正気を取り戻した、ジーク様と一緒に夕食をとっているところだ。
「お父様、なぜ風呂場の件を知っていたんですか」
「ああ、それはな。カグヤが知らせてくれたのだ」
やっぱりか、万能すぎるなカグヤさん。家事はもちろん、なぜか隠密行動も出来る、すごい人だ。この人の事は大人になってもさん付けをするつもりだ。何があろうと敬語で話そう。
「ジーク様、カグヤさんって何者なんですか?」
「カエサル君、なぜカグヤさん付けなんだ?」
「えっと、それはなんというか、さん付けしないと駄目な感じがしまして」
ジーク様は少しの間黙ってしまった。あれかな、使用人にさん付けをするなと怒られる感じかな。いや、でもジーク様に限って、そんなことは無いはず。すると、突然ジーク様が口を開いた。
「カエサル君もかい!!やっぱりカグヤがおかしいんだよね。なんだか雇った時からさん付けをしないといけない気がしてはいるんだけど、対面的な問題でしなかったんだよ。まあ、最近は慣れてきて普通に呼べるようになったんだけど。やっぱり、僕だけがおかしいんじゃなかったのか。それに、カエサル君とは気が合いそうだ。あっ、そうだ。カエサル君、僕の事はそんな他人行儀で呼ばなくていいよ。呼びやすいように呼んでいいよ」
あれ、逆だった。でも、やっぱり感じるのか。カグヤさん本当に何者なんだ?物語ではでてきてなかったはず 。誰かいたかな?こんなに多才な人。でも、カグヤって名前のキャラはいなかったはずなんだけどな。まあ、いいや。
「えっと、それなら、お義父様なんてどうでしょう」
「いや、様付けなんていらないよ」
「なら、お義父さんで」
「それで、いいよ」
「分かりました。お義父さん。でも、なんででしょうか?カグヤさんに対する事?」
「うむ、彼女の出自がわかればすぐなんだけど、彼女は孤児なんだよね」
「孤児!?」
「ああ、道で見かけた彼女をここに連れてきたんだよ。なにか、凄いオーラを感じてね」
孤児か、そんなキャラいないはずなんだけどな?ん、いや待てよ。1人いたぞ!名前は違うが、1人だけ。戦闘ルートの方に出てくるキャラに1人だけ心当たりがある!!確か名前は朔弥だったかな。髪の色が黒いから、東洋風の名前をつけられたとかなんとか。そんなキャラがいた!!役割は斥職だった気がする。名前が違うのは拾った相手が違うからか?でも、なんで拾った相手が違うんだ?そんな所ずれるはずがないのに。俺が、転生してきたからってそこはずようがないしな。
「カエサル君、どうしたんだ?そんなに考え込んで。まさか、孤児だから嫌だとか言わないよね」
「それは、ありえません。そんな事で嫌がるような事は絶対に。ただ、ちょっと気になる事があって考え込んでいただけです」
「それなら、よかった。それで何を考えていたんだい?」
「カグヤさんの事を少しばかり」
「どんな事だい?」
「えっと、なぜカグヤさんの親はカグヤさんを捨てたりしたのかなって」
「ああ、そういう事か。捨ててはいないよ。彼女は捨て子てはなく難民だ。戦争によって親を殺されてここにたどり着いたって事だ。見つけた時には満身創痍で、手当てをして治っていく度になぜか、敬語を使わなきゃという、錯覚に襲われたものだ」
あーあ、そんな設定あったな。資料まで目に通してないからそこらへんはうろ覚えだしな。まあ、あの人将来《姿なき暗殺者》や《地獄からの使者》などとまで呼ばれるえげつない人だからな。おお、やばい思い出したら、さらに敬語使わないといけない気がしてきた。もしも、この世界が戦闘ルートに入ったら手助けしてもらおう。そういえば、国の名前も資料に乗っていたはずだがなんだったか?
「えっと、滅びた国ってなんて名前ですか」
「確か、」
「法国エストニアです。旦那様」
「ああ、そうそう。エストニアだ。そして滅ぼしたのが魔国ジスミール。現魔王の納める国だったな」
「はい、そして、私が殺したい相手です」
「気持ちはわかるが、我慢しろ。こちらから攻めると、徹底的に滅ぼされる。それはエストニアのけんで分かっているだろう。だから、我慢しろ」
「分かっておりますよ。私は待ち続けますから私たちの国を滅ぼしたあの国を滅ぼす日を」
その時のカグヤさんの表情は狂気に染まっていた。あまりの表情に、俺が顔を背けてしまうくらいには。
「すみませんでした。このような表情をお見せしてしまい」
「別にいいよ。それよりも、こちらこそすみません。そりゃあ、自分の滅ぼされた時の話なんかされたら嫌な気持ちにもなりますよね」
「いえ、もう大丈夫です。お手数をおかけしました」
あっ、元に戻った。
「さあ、この話はやめだ。美味しい料理を食べている時にする話ではないしな」
「そうですね。では、デザートをお持ちしますが、カエサル様は何か食べられないものはありますか?」
「いえ、大丈夫です。カグヤさん」
「畏まりました。今取ってきますのでしばらくお待ちください」
また、カグヤさんの姿が消える。早いんじゃなくて気配がないのはわかってるんだが、ドアが勝手に開くという状況はまだ、慣れないな。いや、1日で慣れるものでもないが、これは結構慣れなさそうだな。
「お父様。食事の後、カエサルに家を案内したいんだけどいいかしら」
「ああ、構わんよ」
「分かりました。じゃあ、食事が終わったら、案内するわ」
「ありがとうカナリア」
「いいわよ、約束なんだから」
「ははは、随分と仲良くなったではないか?」
「当たり前です。お父様。私たちは婚約者になったのですから」
「そうか、ではカエサル君私の娘を頼んだよ」
「えっと、あっ、はい」
「よろしく頼むよ。幸せにしてやってくれよ」
「えっと、お義父さん色々早いです」
「おっと、そうだったな。では、あと13年待っているよ。孫の顔を」
「だから、気が早いです!!」
なんだ、この人は。最初の印象が崩れつつあるぞ。18歳で結婚できても、そこから妊娠してとかだともしかしたら19になるかもって、何を考えてるんだ!?俺は。なんか俺おかしいかも、カナリアにあってから何かへんだ。一目惚れなのか?いや、さすがに5歳の女の子に一目惚れはないと思う。もしかしたら精神が肉体に引っ張られてるのかもしれないけど。いや、でも一目惚れなんであるか?でも、好きだしな。あーー、もう考えないようにしよう。だめだ、これ以上考えるとカナリアの顔を直視できなくなりそう。というか、俺ってこれが乙女ゲームだとしたら、かなりのちょろいキャラになりそうだよな。まあ、カナリアもだけどさ。もういいや、本当に。ちゃんと時間をかけて考えていこう。
「旦那様がた、デザートをお持ちいたしました」
それから、食べたデザートの味はあまり覚えていないが、あまり甘く感じなかった。
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「さあ、カエサル案内するからついてきて」
食事を食べ終わったあとにカナリアに連れられ家の中を案内してもらう。
「ああ、わかったからちょっと待って」
「早くしなさい。時間は有限よ」
「分かってるって。もう大丈夫、いこう」
「うん、まずは、書庫から案内するわ」
「ああ、分かった」
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それから、家の中を隈なく案内してもらうのに3時間近くかかってしまったことに驚きを隠せない。いや、本当になんであんなに時間がかかるんだよ。家広すぎだろ。まあ、部屋の3分の1近くが客室だったが。というより、今日は疲れた。ヤバイくらいに疲れた。いろいろな魔法を使ったりして疲れてるのに加え、家広すぎて、歩き疲れた。部屋に入ったらすぐに寝る。絶対にすぐに寝てやる。
「カエサル、あなたの布団は私と同じ部屋に引いてあるから、この後も話をしようね」
あっ、駄目かもしれない。
今回寝るところまで行こうとしていたのですが、カグヤの過去に文字数をかけてしまったのでここで切らせていただきます。次の話で主人公が自分の家に戻れるところまでやれればいいなと思っています。