転生者カエサル
俺は転生したようだ。いつ死んだのかは分からないが恐らくテンプレ通り交通事故かなんかだろう。神様にもあった事はない。だが転生した事はすぐに分かった。だいたい生まれてから2日目には確信した。まあ、前世で転生物の小説をよく読んでいたからってのもあげられるがそれ以上に自分の名前のおかげだろう。おっと、名乗り忘れていたな。俺の名前はカエサル・リールフォース・アドラメルだ。名前が長いって言うならカエサルでいい。まあ、こんな皇帝の名前で気づくと思うが、ここは乙女ゲームの世界のようだ。
そして、なんか最近流行っている悪役令嬢への転生ではなく、ヒーローへの転生のようだ。俺はこのゲームを姉から借されて(強制)プレイした事がある。まあ、面白かったから特に反論は無いけどな。このゲームには珍しいところが多々ある。1つめは戦闘システム及びレベルシステムが存在する事。これ、ある攻略相手に必要になるパラメーターだ。ある程度レベルが高く無いといけなくそして、高すぎてもいけ無いという面倒なキャラがいるのだ。まあ、俺の事なんだけどな。
まあ、それはいい。気を取り直して2つめは攻略なんてしない完全戦闘ルートがあるという事。乙女ゲームをやりたい人にとってはぶっちゃけバットエンドルート。ここでも、必要なのは戦闘システムのレベルだ。そして、このルートの特徴というか制作者の嫌がらせじみたものはこのルートに一度入ってからで無いと攻略でき無いキャラがいる事だ。しかも、多数存在する。姉が喚いているところを聞いたからよく覚えている。
そして、3つめはレズルートの存在だろう。多くの人が掲示板で誰得だよと言っていたルートである。製作陣からの返答は俺得だそうだ。まあ、その時に普通にギャルゲー作れとか、私欲混合してんじゃねーよ、とか言った人たちは正しいと思う。
このゲームの珍しいところはこんなところだろう。ああ、そうだこのゲームのタイトルをまだ言っていなかったな。このゲームのタイトルは『永遠の愛を君に捧げて』だったかな。略語の方は知らない。ネットとかで調べたりなんてしなかったからな。俺がやっていたのは戦闘ルートだけだったから。その理由としては純粋にヒロインが嫌いだったからだな。だから、基本的に攻略なんてやらなかった。理由なんて特に無いがなんか嫌いだった 。生理的に寄せ付け無いと言っても過言では無いと思う。
だから、俺はこの世界で普通の生活をしてヒロインとは関わらない。そして、好きになった人と結婚して順風満帆な人生を送ってやる。もしも、好きになったのが平民なら愛の逃避行をする事だって吝かではない。まあ、その為に魔法と剣の特訓を子供の頃から始めておきますか。魔法は小さい時からやれば魔力量が上がるのはもう検証済みだし。魔法はまだ使えないが魔力を使うだけなら体に纏うだけで消費できるからな。そして、今日も俺は魔力を使い切って気絶するように眠るのであった。
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あれから約3年、今3歳の誕生日をやっている。それで、誕生日プレゼントには何が欲しいか今両親に聞かれているところだ。この機会を逃す気は全くない。ここは3歳の純情な男の子を演じて
「お父様、僕は剣を教えて欲しいです」
両親はその言葉に面を食らう。まあ、それもそうだろう。普通、3歳の子供がそんな事言うはずもないからな。まあ、その返答も普通のもので
「カエサル、剣はもう少し大きくなったらな。まだカエサルは体が出来上がってないから危険だからな」
まあ、最初から教えてもらえるとは思っていない。ここで、ゴリ押ししても教えてはもらえそうにはないが、ここはゴリ押しをする。
「お父様、お願いします。お父様がいつも外でやっている剣技がとてもかっこよくて、僕も早くそんな風に剣を振るってみたいのです」
「そうは言ってもな。ダメなものはダメだ。まだ、お前には危険すぎる」
少し怒気を込めていってくる。
「わかりました。ではいつからなら教えて貰えますか?」
「そうだな。2年後くらいなら、小さな剣なんかなら持てるようにもなるだろうからな。うむ、2年後の誕生日からお前に剣を教えてやる」
「本当ですか。ありがとうございます」
俺は嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを表現する。これぐらい子供っぽく喜んだ方が自然だろう。
「カエサル、もし良かったら魔法を習わない?」
「魔法ですか?」
「リーザ何を?」
「あなた、カエサルはこんなにも向上心のある子なのですよ。なら、魔法を身につけていて損はないでしょう」
「でも、それで剣の方が疎かになるのはな」
「大丈夫です、お父様。やると決めたら2つとも真面目にやりますから」
「うむ、そうか。ならばいいだろう。条件としてどちらかを疎かにする事は許さんぞ」
「はい、分かっていますお父様」
「話はまとまったようね。じゃあ、早速始めましょう。とりあえずあると便利な神聖魔法と火魔法から始めましょう」
「リーザ、流石に神聖魔法は無理があるのではないか?」
「やってみるだけやってみましょう。できたら御の字ってぐらいでいいのよ」
お母様は俺に近づいてきて俺の手を持つ。
「ちょっと我慢してね」
そして俺の手に小さな傷を作る。ちょっと痛いが、まあ我慢できる痛みだ。
「汝が傷を癒したまえ治癒」
瘡蓋ができるなどの過程をなくして一瞬で治っていく。これは、恐らく細胞などを活性化させて直しているのか?
「お母様、これは?」
「私が神官様から教わったのは体を活性化させて治していると習ったのだけど、そのイメージが出来なくて、私は切れている部分がつながるというイメージで魔法を使っているわ」
活性化、細胞を活性化させて傷を塞ぐようなイメージでやってみよう。
「やってみます」
俺はナイフで自身の手に傷をつける。イメージ、細胞を活性化させて傷を塞ぐようなイメージで。
「カエサル、自分の傷を治す時は我が傷を癒したまえよ」
「はい分かりました。イメージ、イメージ。我が傷を癒したまえ治癒」
魔力がどっと減る感じがした。まあ、その結果あってか傷はふさがっている。
「凄いわカエサル。私でも1年掛かったのに一回で成功させるなんて」
「でも、魔力がかなり減ったみたいで」
「大丈夫よ。後は加減を覚えるだけだから何度かやっていけば加減を覚えられるわ。それと、魔力どのくらい減ったの?」
「えっと、大まかでいいなら10分の1程度です」
「やっぱり魔力量も多いわね。生まれて少し経った時から無意識で魔力を纏っていたからかしらね。それじゃあ、火魔法に移ろうかしらね。私が手本をやるから真似してね。我が手に小さき炎を灯せ火種」
お母様の手に小さな火が灯る。
「こんな感じよ。やってみなさい」
「はい、お母様」
イメージはライターのイメージで燃えるものが魔力で発火材が詠唱って感じで。
「我が手に小さき炎を灯せ火種」
お母様のものより2回りほど大きい火が灯る。お母様が慌てて俺に話しかけてくる。
「カエサル、早く消しなさい。火事になるわ」
消すって魔力の供給を無くせば、良いのだろうか。よし消えた。
「消すのも簡単にできるのね。凄い才能ね。うん、決めたわ。私はこの子を世界一の魔法使いにして見せるわ」
「世界一の魔法使いですか?」
「ええ、魔法使いの頂点を決める大会があるのよ。そこで、未だ無敗のエルフが世界一の魔法使いなのよ。だから私はあなたをそのエルフを超える魔法使いにして見せるわ」
世界一か、やってみせようではないか。この世界において最も優先されるのはレベルだ。それ際あげれば魔力量も上がるがレベルをあげられるのは10歳からだ。ならそこまでに基礎ステータスを向上させることから始めるか。
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あれから2年、やっと剣を教えてもらえる日になった。あれから、魔法の方は火が最上級水、風が上級まで使えるようになった。神聖魔法は軽い傷を治す程度が限界だった。まあ、医学方面の知識は殆ど0だったから仕方がないが。
「カエサル、今日からと約束していた剣の練習明日からでも良いか?」
お父様が聞いてくる。
「何故ですか?」
「いやな、急用が入ってな」
「そうですか、では頑張ってください」
「いや、今日はお前も同伴だぞ」
「何故ですか?」
本当になんでだよ。俺なんかしたっけ?
「お前の婚約者候補の人に会いに行くのだ。名前はカナリア・ミラージュ・トーランスだ」
あっ、俺その名前知ってる。確か悪役令嬢だった気がする。多分元の、俺が転生する前だったら俺はこの婚約を断ったのだろう。まあ、会ってみてから決めるか。
「えっと、いつ頃出発するのですか?」
「今からだ」
お父様は計画性というものが皆無なのかもしれない。
「着いたぞ」
あれから馬車で1.2時間行ったところにその屋敷あった。ん、そういえばこっちから向かってるけど相手の方が爵位上なのか?
「お父様、相手の方の爵位はどこですか?」
「ああ、伯爵だから、私たちよりも一つ上だ」
よく、原作のカエサルは断れたな。もしかしたらあっちが断ったのか?まあ、いいか
「分かりました。なるべく失礼のないようにします」
「別に大丈夫だぞ。あやつとは旧知の仲だからな。少しの無礼くらい許してくれるさ」
「そうですか、分かりました」
俺はお父様に着いて行く。屋敷に入ってから少し歩いて目的の場所へと着いた。
「失礼する。久しぶりだな、ジーク」
「ああ、久しぶり、ライゼン。世間話もあるだろうから座ってくれ」
「ああ、わかった。そうだ、まだ息子の紹介がまだだったな。こっちのが息子の」
「カエサル・リールフォース・アドラメルです。今日が誕生日で5歳になりました」
「おお、礼儀正しい子だな。ライゼンの子供とは思えないな。私の方も娘を紹介しよう。カナリアこっちに来なさい」
「はい、お父様。初めまして。私の名前はカナリア・ミラージュ・トーランスと云います。以後宜しくお願いします」
これがSランクパーティ《黄昏の救世者》と呼ばれる事となる、俺と彼女の初めての出会いだった。