FRANK
西日
喫茶店
常連達の話し声
煙草の煙と換気扇の音
--Kさんには ミートの大盛にライス
Mさんには スプーンもミルクもいらないブラック--
サイフォンでブレンド
フラスコに落ちて蒸れ
時間と火の加減で
味と香りが決まる
しばらくして学生達が入り
オーダーが回る
--うわぁ 一挙に10人
焼肉御飯5つに ピラフ2つ
ナポリタン1つに ミートソース2つ
えっ? ピザパイも
セットの飲み物はブレンドにアイスコーヒーに...
あー どうしよう--
カウンター越しに客と話す
それぞれの一部を共有し
それらがつながり
一つの輪となる
--あの人とこの人はこうなって
前はああだったけど
今はそうじゃない
はー そうなんですか
えっ? 行っちゃいます? ほんとに?
じゃあ お店終わったら皆で飲みに行きましょうか--
喧騒は孤独と背中合わせ
その微笑みは
哀しみを内包している
--げっ! キャベツとトマトがなくなっちまった
あ いらっしゃいませ
N君じゃないか いいところに来た 買い物頼まれてよ
コーヒー 俺のおごりにするから--
皆 淋しいのだ
何か足かせをはめながら
心地よい喧騒を求めて
--あれ、帰っちゃうんですか
“ママ”がもうすぐ帰ってきますから
もう少し居て下さいよ--
いくつもの夢がめぐり
また掌に帰って
掌の中の自分 その重さを知れば
それは長い旅の途中の
夢の輪
--それじゃあ、今度の日曜にテニスですね
必ずですよ
えっ? はい わかりました
ありがとうございます--