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Fun days  作者: 藤木美里
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学食

昼休み、村田は学食の前で、美桜を待っていた。


火曜日だけは報酬のランチのために

目ざとく村田を見つけてくる美桜なので、余裕で待つ。

…つもりでいるが、落ち着かず、

結局いつものように美桜を探してしまう。


村田にとって美桜を探すことは、簡単なことだった。


背が高い美桜は、他の女の子と並ぶと少し頭が出る。

そして長い髪。

あんなに長い髪の女の子を村田は他に知らない。

もともと女の子の友達がいないのもあるけど。


初めて見たとき、モデルさんかと思ってびびった。

でも話してみると、美桜は普通の可愛い女の子だった。


美桜が学食への外廊下を歩いてくる。

長い髪が太陽に照らされて、きらきらしている。

その光が心のなかにも

入ってくるような気がして、目を細める村田。


美桜からは、日陰でくすんでいる村田の金髪が見えた。

探さなくても見つけられるから、金髪は便利だな、と思う。


最初会ったときはヤンキーかと思ってひいたけど、

話してみると普通の子だった。

むしろアホな子だったから、びっくりした。


「2限、かずちゃん来てた?」


まぶしそうにやってきた美桜が村田に聞く。


「うん。もう大崎とごはん食べてる」


二人分の会計を村田が払い、

大崎と和美がいる席につく。


「どうだった?谷中先生の授業」


美桜と同じ文学部の大崎が聞く。


「面白かったよ。でも来週までにまた一冊

 読まないといけない。古本屋いかなきゃ」


美桜はため息混じりに言う。


「じゃ、今日は食べたら帰るの?」


「うん。本屋めぐりして帰る」


と美桜が和美に答えると


「俺もついて行っていい?」


村田が口をはさむ。


「絶対邪魔しないでよ。

 あと、本見つかったらすぐ帰るから」


あからさまに冷たい口調にかわる。


「やっぱり美桜、火曜日は疲れてるね」


大崎が言う。


「疲れているっていうか、

 なんとなく村田がムカつく」


「火曜日はしかたないよね。ごめんね」


と村田が美桜に謝るが


「いや、最近はいつもムカつくけど」


と返される。


「あ、私も」


「僕もかも」


和美と大崎も、美桜に続いて言う。


「…なんだよ~みんな~」


いじられることが嬉しい村田。


しかし、こっそり美桜が笑っていることを確かめてしまう。

実は本気で言ってたりして、と内心おびえている村田だった。


入学前オリエンテーションで同じグループになった

美桜と村田、大崎と和美は、よく四人で一緒に行動した。

村田以外はひとりでも平気なタイプなのだが、

さみしがりやの村田が四人を集めたがった。


村田といるのは、時に騒がしく、

落ち着かないこともあったが

美桜はなんとなくほっとけないと思っていた。


なんでなんだろ、と村田をぼーっと見ていると

隣の家の犬を思い出した。

ああ、毛の色が似てると美桜は納得して

下を向いて少し笑った。


「何?美桜、どうしたの?」


目ざとく気が付く村田に感心しながら


「何でもない」


と言って横を向く美桜だった。

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