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俺主観の白い天使

作者: yellow

 ポップコーンの焼けた皮が歯に挟まって少しだけ憂鬱な気分に陥っていたのをよく覚えている。

 あれは何年か前、そう、4年前の暮れだったか。俺は久し振りに通帳の数字に余裕が出てきたことを喜び、そのころの彼女を誘って映画を観に来ていたんだ。世界が危機に陥って主人公がヒロインと共にそれを救うみたいな、まあよくある内容だったと思う。元々俺も彼女も何が観たいと強く希望していたわけではなかったから、昼飯食って映画館に併設されたゲーセンをちょっとブラブラした後にたまたま上演30分前だったそいつを、手頃な時間だからという理由で選んだ。その頃はまあ、あれだ、楽しめりゃ良かったんだ。分かるだろ?


 観終わってすぐのことだった。超A級ではないにしろ手に汗握る展開もしっかり用意されていたし、まあまあ面白かった。興奮冷めやらぬ面持ちの彼女と一緒に映画館の通路を歩く。満足そうだ、良かった。

「面白かったね! もうめちゃめちゃ面白かった!特にジムがケイトを守って数千万の敵と戦うところさ、もうほんとにドキドキしたもん」

「ああ」

 何よりだ。今日はいい日だな。

 映画館の外へと出る自動ドアに差し掛かり、彼女は左手に掛けていた白いコートに腕を通しながら、

「誘ってくれてありがと。次は私が誘わないとね」

「どっちでもいいよ」

 そうでなくとも俺がまたどこかに連れていくだろうから。

「じゃあ次はねぇ、あ、そうだ。うちの近くの神社。初詣はそこに行こう」

「いいね。楽しみだよ」

 彼女はマフラーを巻きながら、俺は手持ち無沙汰に、自動ドアをくぐった。白地に黒い線のチェック模様のマフラー。

 そういやあれ、今でも取っておいてあるらしい。今年の冬、頼み込んでまた巻いてもらおうかと思っている。面と向かって言うのは照れくさかったけど、結構似合っていたから。


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