星空のアリア
まえがきを見てくれてる皆様、ありがとうございます。
短いですが、楽しんで読んでくださいねー
追記、少し短いという意見を貰ったので書き足しました
時は草木も眠る丑三つ時。
周囲を見渡すと木々がある。
自らの葉がこすれ合い、ザァザァという音を出していた。
この音を聞くと常人なら妙に怖がるだろう、そしてその音が夜にするのだから尚更怖いと思う。
でも私にとってその音はどこか懐かしくて逆に心が安らぐというかなんというか言葉にしづらい感じ。
丑三つ時だというのに、ほんの少し、本当に少しだけ周りが見えている。
夜の太陽。
これをたまに私はそう表現するけど、理解してくれる人はいない。
地上を照らしているのは天上、そう神様が暮らすところにその座を置いているお月様。
本によると兎や、月人が住んでるらしい。
お月様も十分良いのだけれど私はもっと好きなものがある。
それは「星」。
夜の天上を彩る無数の星々は、永久なる時を刻んでいる。
いつ見ても綺麗で汚れることを知らず、時には人々に崇められ、またある時には人々に恐れの対象と見なされた。
そして、星々は永久の時を刻んでいるのに、地上はずっと同じ姿を留めておくことができない。
人の命には限りがある。
私よりもずっと前に産まれ、死んでいった人達もこの星空を見ていたのかな。
不意に森から何かが動く音。
「そこに誰かいるの?」
音がした方に確認の声を送るけれど、応答の声はなかった。
その代わり姿を見せてくれた。
音の主は兎。
毛が真っ白で純粋な混じり気のない目が可愛い。
歩み寄って白兎を抱き上げようとしたら跳んで逃げてしまった。
ちょっと残念。
しばらくしたら戻ってくるかもしれないと森の方を見て待っていたけれど結局戻ってこなかった。
また、ちょっと残念。
そしてまた私は元いた座るのにちょうどいい切り株がある場所に戻った。
切り株に座って空を見る。
見上げているから首の付け根辺りがほんの少し痛いけれど、この星空が見られるというのならお釣りがくるくらい安いというもの。
星空は一番綺麗だと思う。
地上の景色も綺麗だと思うけれど、やっぱりこの景色には勝つことはできない。
でもこの私の意見はあくまで私個人の意見であって万人の意見なんかじゃないことをわかってほしい。
まあ、そんなことは分かっているだろうけど。
「星月夜、人は有限、星は無限。星々の輝きは無限なれど人々の輝きは一瞬間の輝き。ああ、悲しきことかな」
頭にふと浮かんだ言の葉を紡いで詩を創り、詠んでみたけれど……そんなに上手くもないし、結構恥ずかしい。
うーん、やることがないので少し困る。
お星様を見るのも好きだけれど、私は人間だから動かないと身体が冷えて動けなくなってしまう。
あっ、そうだ。
この前、お星様が落ちたって聞いた場所に行ってみよう。
そう、遠くもないし、まだ私の時間だもの。
ひょいっと切り株から立ち上がって、お星様とお月様の光の明かりを頼りにその場所へと向かう。
真夜の森に私の足音が響く。
急に風が止んだため森が泣かなくなったのだ。
誰も居ない森を歩くのは案外楽しい。
まるで、この森が私の物になったかのよう。
時折止まって耳を澄ませると虫の声が聞こえてくる。
心地良い。
目をつむって、歩く。
目をつむって歩くというのは少々勇気というものが必要だけれど慣れてしまえばこれほど周りの世界と同化できるものはない。
私という存在が私の知らない、見たことのない世界に取り込まれて私の世界になるような感覚。
まあ、この感覚も人には少し理解し難いようす。
星が落ちた場所に行ってみようと思い立って歩いているけれどその場所に着くかはわからない。
落ちたと言われている場所はあまり遠くない。
だから、私以外の人もそこへ行こうとしたらしいのだけれど誰一人そこに行った人がいないのだ。
行ってはみたけど着かなかった、そういう人ばかり。
だから私も着くかどうかはわからない。
でもなんとなく、ほんとなんとなくなんだけれど、私は行けるような気がした。
まあ、なんとなくだから保証はない。
歩いていると突然森からさっき見た白兎が飛び出してきた。
やっぱり、可愛い。あのもふもふな生き物を抱きたいな。
ねぇ、兎さん私に抱かせてくれない?
と心の中で呟いてみる。
でも、そんな私の心の独白をよそに白兎は私を見てまた前を向き、ぴょこぴょこと擬音語をつけるならそんな可愛い語がぴったりな感じで跳ぶ。
少し先を行っては後ろを向き、ついて来いと言ってるように思えてついてってみた。
試しに歩く速さを速くして、兎さんを抱き上げようとすると森の方に跳んでいき、そして、少し先に現れてまた、私を先導する。
あのもふもふに触れなかったのはまたまた残念だったけど、また現れてくれたことが嬉しかった。
突然、道の先が明るくなった。
気づくと兎さんは消えていて、役目を果たしたのだろう。
道を抜けて、広い場所に出た。
一面、真っ白な花。
しかも普通の花ではなかった。
光ってる。そう光ってる。花自身が光を帯びていた。
綺麗。
……何かに似てる。
………………そうだ。星の光に似てるんだ。お星様の光のように輝く花々。
花々に気を取られていると、目の前が急にもっと明るくなった。
その方向を見ると、そこには一本の木があった。
いや、木なんて表現じゃだめ、巨木と言った方が適当ね。
光の主は一本の巨木で葉っぱが光ってるのかと思って近くでみようとしたら、違って光ってるのは花だった。
ここがお星様が落ちた場所。
そう言われれば万人が納得してしまう。
もしかしたら、このお花がお星様の正体だったり。
いつまでもここにいるわけにはいかないからここを去らないといけない。
だから、この素敵な、綺麗な景色を目に、そして何より私自身の心の景色に焼き付けた。
そうすれば、何度でもこの景色を思い出せるから。
そして、帰路に着き、また元いた切り株の場所に戻ってきた。
次は何をしよう、そう思って時間を確認しようと星を見るとだいぶ星の位置が変わっていた。
ああ、気づけばもう、寅四つ時。
空は暁、私は真夜。
お月様方やお月様はしばらくお休みになり、太陽が起きる。
世の中は朝が始まるけれど、私にとっては夜の始まり。
さて、私にとっての昼間が終わるのならば、私は寝ましょうか。
「おやすみなさい、夜の太陽、そして、私の愛しいお星様」
どうだったでしょうか?
少しは楽しんでもらえたかな?
さて、タイトルにアリアってありますよね。
アリアってどっかの言葉で独唱曲って意味なんですって、だからこの話にピッタリかなーって思ったり。
あと、寅四つ時って書いたけどアレであってるのかな?そこら辺は詳しくないからわからなくてあれにしたけどー
あと途中に出てきた詩は完全オリジナルです。
どう?完全に素人丸出しでしょ?
頑張ったので大目にみてくださいねー
それではーまた、どこかの星空の下で会いましょう