第四話 事情聴取
夜の静けさに包まれた領城の牢獄に軍靴の音が響く。
牢屋の寝台で蹲っていた誠治は、その靴音を過敏に聞き取って思わず顔を上げた。
「囚人番号110番です。姓名は不明。本日昼過ぎ、気を失った状態でこの牢に投獄されました。お探しの囚人はこの者で間違いありませんか?」
「ふむ……この奇怪な服装には見覚えがある。確かに、王女殿下に無礼を働いた例の者で間違いあるまい」
誠治の牢屋の前には三人の男が立っていた。
いずれも鎧を纏って完全武装しており、うち二人は青いマントを背中に羽織っている。
青のマントはアルファーナ王国の近衛騎士を示す証だ。彼らはアルファーナ王国王女のシェリルを人質に取ったと疑いをかける誠治を取り調べるため、みずから牢獄に足を運んだのである。
しかし、そんな事情を今になるまで牢屋で放置されていた誠治が知る由もなく、突然現れた物騒な男達を前にただ警戒するより他になかった。
「すぐにでも取調べを行う必要がある。看守長、頼めるか?」
「わかりました。手枷をかけますので少々お待ちを…」
誠治が何事かと見届けるなか、格子の扉を開いた看守長が牢屋のなかにずかずかと侵入してくる。
怯えた誠治は腰を床につけたまま後退した。しかし、看守長がその逃避を許さない。
後ろに下がる誠治の腕を捕まえて、その手首に木盤の手枷を嵌める。
「取調べだ。ついてこい」
「はい!? いや、ちょっとま……って重ッ!?」
両手首に手枷を繋がれた挙句、その場で看守長に無理矢理立たされた誠治は、手枷のあまりの重さに耐え切れず前屈みのまま地面に突っ伏してしまう。
(ていうか重すぎだろ…!)
誠治がかけられた手枷というのは、金属で補強された四角の木の板に手首を嵌めるための穴が二つ空けられた大型のものだった。現代の警察が所持するスマートな手錠とは異なり、その仕様は囚人の自由を文字通り奪うのを目的に設計されているらしい。
誠治もゲーム内のイラストで似たような手枷を見たことはあったが、これ程までに重いものであるとは想定の範囲外であった。見た目に反して重い作りになっているのは、拘束者の逃亡を阻害するためなのだろうか。
そんな悠長な事を頭の中で推察する誠治であったが、とにかく手枷が重いので再び立ち上がれても歩くのが非常に困難だった。
看守長と近衛騎士に取り囲まれながら、誠治は重たい手枷を垂らして取調べ室へと連行される。
壁に取り付けられたカンテラの淡い光に照らされる騎士たちの顔はいずれも険しい。彼らにとって、一番守るべき人が汚されたのだと言っても過言ではないのだ。何処の馬の骨かもわからない人間である誠治をただの犯罪者として見逃せるはずもなかった。少なくとも、アルヴァーヴ王家を崇高する近衛騎士にとっては看過できる問題ではない。
「囚人番号110番。貴様に科せられた罪状の数々を問答する前に、まずはその姓名を問う。嘘を吐かず、正直に答えろ」
そう質問を投げかけたのは、誠治に手枷をはめた看守長だ。
油断なく誠治を見据える彼の利き手は腰に下げられた剣に添えられている。「少しでも怪しい行動を取れば、あるいは嘘の言動で誑かせばすぐにでも斬って捨てる」そんな物言わぬ覚悟を滲ませる様子だった。
「貴様、名はなんという?」
「高良 誠治。高良が姓で、誠治が名前……です」
こんなところで嘘を吐いても良いことなど何一つ無い。震えながらも誠治が正直に答えると、看守長は誠治が名乗った姓名を口元で繰り返しながら再び聞き返した。
「タカラセイジ……変わった名前だな。何処の出身か」
「日本です」
と、思わず素直に答えそうになり、しかし『日本』という国がこの世界の人にとってまったく馴染みのない国家であるのを誠治は思い出し、途端に口を閉ざした。
「…どうした? 何故口を閉ざす? 出身の国は何処かと聞いたぞ」
「あ~いや、その……多分皆さんにはあまり馴染みのない国なんじゃないかって……」
疑われて咄嗟に誤魔化したが、そんな曖昧な返答で見逃してくれるはずがないのは明らか。
あまり時間をかけて返答を拒めば、「何か知られてはいけない事実を隠しているのでは?」と変な誤解さえ与えかねない。
ただでさえ誠治は誤解のせいで投獄されているのだ。これ以上他人の疑いを確定付けるような発言をすれば、誠治は今度こそ正真正銘本物の囚人に成り下がってしまうことだろう。
誠治の予想通り、看守長は口ごもる誠治に対して怪訝な表情を浮かべた。
「我々にとって馴染みのない国だと?」
「は、はい。実は、その……」
誠治は頭を回転させて必死に考えた。看守には嘘を吐くなと忠告されたが、正直に「日本だ」と答えたところで余計に疑われるのは明々白々。
しかし適当な国を申したところで、それを証明できる問題を提示されては誤魔化しきれそうにない。
となれば、“こちらが疑われずに済む、もっとも信憑性のある嘘”で乗り切るより他にないだろう。
(一か八か、言ってみるしかない…)
看守たちを信じさせる嘘。それが通用する『異界大陸シリーズ』の国といえば、
「龍海国……」
「なに?」
思わぬ国名が誠治の口から飛び出し、看守長は面食らった様子で聞き返した。
誠治はもう一度その国名を口にする。
「僕、ロンジャオの出身なんです。知りませんか? 極東の海洋国家」
異世界戦記をテーマとする『異界大陸シリーズ』だが、その世界観は現実にあった歴史上の国や地域を例にオマージュ化した仮想世界だ。
RPGの根底とも言うべき中世ヨーロッパの世界観を題材にしてあるのは勿論のこと、北の国であれば極寒のシベリアを、南の暑い国ならエジプトの砂漠等。場所や地域によってそれぞれ特有の文明が培われているというわけだ。
誠治が咄嗟に言ったこの『龍海国』という国も、日本と中国の特徴や文化が絶妙に入り混じって生まれた仮想国家として『異界大陸シリーズ』に登場している。製作者の解説によれば、そこの国に住まう人々はアジア人と同じく黒い髪と黒い瞳を持つ黄色人種であるらしいので、日本人である誠治の外見的特徴を相手に納得させる言い分としてはなかなか理に叶っているのではないだろうか。
看守長たち三人は、しばらく呆然と誠治の顔を見ながら何も言い返すことができなかった。
よく見ればその表情はどれも釈然としない感じで、誠治の言葉の意味を理解しかねているようでもある。
(あれ? もしかして“この世界”にロンジャオないとか…?)
誠治は焦った。
『異界大陸シリーズ』の世界に出てくる専門用語と同じ言葉を聞くものだから、てっきりここはゲームの中の世界だと思い込んでいたのだ。
誠治の自室のテレビに現れた女神は「ミズガルズに召還します」とは言ったが、そもそもこの世界が丸々ゲームの世界観を反映させているとは限らないではないか。
ロンジャオという国が本当に存在しないのか、あるいは既に国自体滅亡してしまっているのだとすれば、誠治の「ロンジャオ出身」という発言はそれこそ真実味のない虚言だ。
息を飲み恐る恐る見守る誠治の目の前で、騎士の篭手が勢いよくテーブルに叩きつけられた。
「嘘を吐くな! 何ゆえロンジャオの漁師民族がこんな内陸のアルファーナにいるのだ!」
騎士の激昂に今度は誠治が呆然とする番だった。
どうやらロンジャオという国は存在するようだ。しかし逆に、そのロンジャオ人がアルファーナ王国にいることに関して疑われてしまったようである。
「し、しかしヴァーノン閣下。この者はロンジャオ人特有の黒色の髪と目をしておりますが…」
そう思いも寄らぬ助け舟を出したのは看守長だった。彼は誠治のロンジャオ出身発言を信じたみたいだが……。
もしかすれば誤解が解けるかもしれない。誠治が期待するのもつかの間、再びマントの騎士が首を振ってそれを否定したため、誠治のそれは一瞬にして絶望へと突き落とされることになる。
「海を死地と定めるロンジャオ民族は、元来海岸のない地域に上がらない習慣があるそうな。それに、仮にこの者がアルファーナ人だとしても、王族関係者以外の立ち入りが許されていないパナジア神殿に勝手に侵入していた件はどう弁解するつもりか?」
「それは……」
女神イネスに召還されました、と説明して向こうが納得してくれるなら誠治はとっくに自由の身になっているだろう。それが叶わないから嘘まで吐いて罪を逃れようとしているのに……。
「神殿の無断侵入だけではないぞ。恐れ多くも、王女シェリア様のお身体に触れるなどという愚を犯したことも含め、貴様からは色々と動機の聴取をせねばなるまい」
まるでこちらが悪いような言い分に、黙って聞いていた誠治もさすがにカチンときた。
「そんなの言い掛かりだ! あの子が王女様か誰だか知らないけど、先に接触してきたのはあっちの方じゃないか! 僕を罪人と決め付ける前に、まずは証人を呼んで是非を問うべきじゃないんですか!」
「な、なんだと……ッ!」
声を震わせる騎士が、今にも誠治に突っかかりそうな怒りの形相を浮かべる。
「無礼者め! 道化の分際で王女殿下をそのような下劣な俗称で呼称するなど……謝罪しろ! 即刻に!」
「ふん……一方的に犯罪者扱い人に謝る義理はないよ。むしろ、僕が今こんな状態になってる原因の王女殿下に直接謝罪して欲しいくらいだ」
瞬間、椅子を蹴り上げた騎士が腰に帯びた剣から銀色にコーティングされた長剣を抜き放った。
王女を馬鹿にされた頭にきたのだろう。騎士の剣の刃が無防備な誠治の細い首筋に当てられる。
「次はないぞ? 謝罪か死か二つに一つ……貴様に選ばせてやる」
「………その青いマント、確かアルファーナ王国の近衛騎士の証だよな? 実質剛健を謳う騎士様が、拘束されて無防備な囚人を剣で脅してもいいのか…?」
「この……ッ…!」
痛いところを突かれ、騎士の怒りに燃える目が動揺で揺れ動く。
どうせ死ぬのなら、殺される相手に命一杯の恥をかかせて死んでやりたい。そんなある種の決死の覚悟を抱いたら、誠治は己の口から溢れ出る文句の数々を止めることができなかった。
両者の間に押し迫った緊張が走り抜ける。
もう一人の騎士がその対峙の行く末を黙って見守っていたが、囚人を管理する看守長としてはこのまま指を咥えて見ているわけにはいくまい。
近衛騎士に近づき、自重を促そうとした時だった。
「一体何の騒ぎですか」
張り詰めた空気の取調べ室に、女性の凛とした高い声が響き渡った。
突然の第三者の登場に、最初からその場にいた誠治たち四人は反射的に声のする方向へ頭を向ける。 その人物は取調べ室の入り口から堂々と姿を現したのですぐに確認することができた。
騎士たちを挟んで丁度誠治の向い側、格子がはめられた重厚な鉄の扉の前に重装鎧を纏った女性が立ってこちらを見回している。
初めて見る女性だ。少なくとも誠治にとって初対面だった。
だが看守長を含むその他の騎士たちにとってはどうやら面識がある人物であるらしい。鎧姿の女性を視界に収めた途端、その目を驚きに見張って身体を硬直させる。
「サ、サーフィア将軍!? な、何故貴女がここに……!」
その女性――ルナス・サーフィアはその問いには答えず、代わりにゆっくりと室内に足を踏み入れた。
彼女の視線は看守長、騎士、抜き身の剣と向けられ、最後に誠治のところで止まる。
「…………」
黄金色より鮮やかな琥珀色の瞳で見つめられ、誠治は場違いだと思いながらも恥ずかしさに顔を赤くした。
背中まで届く銀髪が暗闇に映える、妙齢の美女である。清楚な雰囲気さえ感じさせるその落ち着いた佇まいは、聖堂で働くシスターたちより洗練されている気さえする。何か偉大な神事を成し遂げた聖女だと言われたら素直に信じるかもしれない。それほどまでに、ルナスの鮮麗な容姿はどこか神々しさを醸していた。
「ヴァーノン近衛副団長。これは一体どういうことです?」
ルナスの切れ長の目が誠治から隣の近衛騎士へと向けられる。
その質問は具体性のない曖昧なものだったが、このシチュエーションを見る限り問われている事態はただ一つしか考えられない。
「い、いえ将軍。これには理由がございまして…」
おずおずと言葉を紡ぐヴァーノンを、ルナスは強い口調で制する。
「まずは剣をお納めなさい。王家直属の誇りある近衛騎士とあろう者が、不用意に剣を抜くとは何たる怠慢ですか」
「は……ははッ!」
静かに叱咤されたヴァーノンは、すぐさま剣を鞘に戻した。その低頭たるや、先ほどまで誠治を威圧していた態度はまるで異なっている。
(ルナス・サーフィア……そういえば、アルファーナの武将にそういう名前の人がいたような)
アルファーナ王国軍を統率する六名の将軍。そのうちの一人がルナス・サーフィアという名前だったのを誠治は思い出した。ただ、あまり重要視されるキャラ付けでなかったこともあり、固有の顔グラフィックは用意されていなかったものと誠治は記憶している。
俗に言う“モブ武将”扱いだ。ルナスという将軍も、そんなポジションの登場人物であるはずなのだが……。
彼女から放たれるオーラは、主格となる大物武人のそれだった。
「私の目に狂いがなければ、貴殿はそこの少年に剣を突きつけているようにお見受けしましたが?」
「ええ。仰るとおりです、将軍。なにせこの者が、我らが主を侮辱したために――」
「侮辱されれば剣を抜くのですか? ならばその怒りは、殿下の愛する国を蹂躙するガルムンド軍五万にも共通することでしょう。連中はこのアルファーナを侵食することによって、その国土保有者である殿下の面目を貶めている。あなたはガルムンド軍を一人残らず殺し尽くしても、まだその怒りに剣を振るい続ける狂戦士であり続けるつもりですか」
その場限りの怒りに身を焦がしてはならない。そう遠回しに指摘するルナスの説教を、ヴァーノンは「自分が馬鹿にされた」と受け取ったようだ。
言い返そうと口を開く近衛騎士の副団長を、手で制したルナスはさらに言葉を加えた。
「そこの少年は無実なのですよ、副団長。ただちにこの少年を解放してこの場を退去なさい。彼にガルムンド軍のスパイ容疑はありません」
その無罪宣告に、当事者である誠治は勿論のこと、その場に揃う看守長や騎士たちまで驚きに声を詰まらせた。
「な、何を根拠にそんな事を」
「シェリル王女殿下直々のご命令です。この少年にかかったスパイ容疑ならび殿下の人質容疑、全ては近衛騎士団長ナハルシオン殿の思い違いであり、あらゆる罪状の一切に覚えはないと王女殿下は仰せなのです」
締め括りとばかりに、ルナスは懐から包まれた羊皮紙を取り出して看守長に手渡す。
「少年の釈放を承認する“王国審議会”の書状です。アルヴァーヴ王家の朱印もここに。一緒に確認を」
「……これは……確かに。間違いありません」
書状の内容に目を通した看守長は慎重に頷いて事の真偽を再確認した。
つまり、誠治にかけられたスパイ容疑は無実だと公的に認められたということだ。
ようやく無実が証明されて誠治は深々と安堵のため息を零す。対して、誠治をガルムンドのスパイと信じ切っていた近衛騎士たちは、目の前に差し出された覆しようの無い証拠を前に完全にうろたえていた。
言葉を失くしたその二人に向って、ルナスはとどめの忠告を言い放つ。
「これでもまだ反論の言い分があるのなら私が窺いましょう。ただしその場合、貴殿らの言は国の決定に歯向かったものとして、後々審議会に提訴させていただく事になります。無論、あなた方の管理元である団長もその責任の一端を背負われることになってしまうでしょう。この取調べの件、果たしてハルシオン殿は把握済みなのでしょうか」
王家の盾ともあろう騎士が、無実の少年に罪を着せたなどと周囲に広まればその面子は瞬く間に失墜するだろう。ましてや団長の了承がない部下の独断だと公にされては、近衛騎士の階級も没収されかねない。
(王女殿下に無礼を働いた罪は許せぬ。しかし、我を突き通して身分を剝奪されるのはそれ以上に)
ヴァーノンは瞬時に結論を出した。
所詮は何の力も持たない外国国籍の少年だ。そんな者を有罪にするために、己の身分が危うくなるのは好ましくない。
「わかりました。王国の決定だというのであれば、我々はもう何も言いますまい。出過ぎた真似をした事、どうかご容赦を……」
「近衛騎士団は王党派最後の防衛線です。今後は、“組織だった”適切な対応をお願いしますよ」
上の指示で動いていない近衛騎士の独断を遠回しに非難するルナスの台詞に、ヴァーノンは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
しかしこれ以上反論しても事態が好転しないと悟っていたのか、彼は無言のままルナスに小さく頭を下げると、同行者の部下を引き連れて足早に牢獄を去って行った。
「彼と少し話がしたい。看守長、しばらく退室を願えますか?」
「了解致しました。部屋の外にいますので、ご用が済みましたらお申し付けください」
ルナスの要望によって看守長も素直に従い取調べ室を後にする。
結果、室内に残ったのはルナスと誠治の二名のみとなった。
罪を無理矢理容認させようとしていた首謀者たちは退出したというのに、誠治の心は未だに募る不安で一杯だった。
というのも、ただ一人残った女将軍が誠治の事を険しい眼差しで見下ろしていたからだである。物言わず琥珀色の双眸で見つめられ、誠治の内心は看守長に身元聴取された時よりも激しい動揺に襲われた。
まだ疑惑は解消し切れていない。そう誠治が確信するよりも先に、沈黙していたルナスがようやく口を開いて言葉を紡いだ。
「……パナジア神殿で何をしていたのです?」
(やっぱりそれか……)
誠治は心底うんざりした気分になった。
スパイ疑惑は払拭できたとはいえ、根本的な問題として誠治が例のパナジア神殿とやらに居た正当な理由がまだはっきりしていない。
言い訳を導き出す気にもなれず黙っている誠治に、ルナスはさらに続けた。
「確かにあなたに対するスパイ容疑は晴れました。が、立ち入り禁止区域であるパナジア神殿に無断侵入していた容疑まで無罪放免になったとは一言も言っていません。犯罪者と、そうでない者をより厳格に裁くため、あなたにはあの場にいた経緯とその理由を正直に答えていただきます」
答えなければ釈放する気はないと言いたげに、ルナスは正面の椅子に座り誠治と向かい合う。
相手の言葉を待って沈黙するルナスを、誠治は遠慮がちに見つめた。
「・・・・正直に答えれば、納得してくれますか?」
「場合にもよります。もしあなたが窃盗目的で例の神殿に侵入していたなら、勿論刑罰化してこの牢獄に服役することになりますが……不可抗力だというのならまずは詳しい説明を」
どちらにせよ、答えなければ誠治に明るい未来がないのは確かだった。
決心して、誠治は真実を告げるために口を開く。
「実は――」