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恋物語十人十色。

遠いココロ、近い声。

作者: 菜智

毎日の日課が、PCの前で唯一の人と話すこと。

でも、向こうは忙しいから何時帰ってくるかは聞いているけれどそれよりも遅れる事もしばしばある。

それでも、向こうと話せる唯一の手段だから私はずっと待っているけれど限界だってある。

でも……最近は全然話せていない。

声が聞けなくて、只でさえ広い家が更に広く感じられて

私はここに居てもいいのだろうか、という疑問まで。

もしかしてもういいのだろうか、とかそんな事ばかりが頭を駆け巡って…何時しか、私はPCの前に座らなくなった。

それがどれぐらい続いたのか分からなくなった頃。向こうから携帯に一つのメールが届いた。それは短い文章で。


最近、大丈夫か?


私は、どきり、とした。こんなにも不安定だって事がバレそうで、心配をかけてしまいそうで。

心配させたくない。

助けて欲しい。

そんな気持ちがぶつかり合って、メールを返信するのが遅くなってしまった。打った文は少し短く、気持ちを隠すように。


うん、大丈夫。私よりも自分を心配しなきゃ


送信ボタンを押す手が震える。心が私に問いかける。

本当に今のままでいいのか。と

私はその気持ちを閉まったままにボタンを押した。軽やかな音が送れた事を知らせてくれた。

私は手に持っていた携帯を床に落とした。持っていた手が震える。

返ってくるメールが怖い。

あんな文を打っておいて何を今更、と自嘲する。

でも、どれだけ時間が経っても返信メールが来ない。

代わりに来たのが一着の電話。一人の人にしか設定されていない着信音が怖い。無視すれば良かった。

でも、声が聞きたかった。

大きく深呼吸をすると、電話に出た。懐かしい声が耳に響く。


久しぶり。どうした?最近ログインもしてなかったし……


あ、うん。少し仕事が続いてて


何気ない雰囲気を出してみる。でも声は若干震えてるのかな?

電話越しの懐かしい声が心配するような、怒ったような声に変わる。


何が怖い?


唐突に聞かれて、私は心臓が跳ねた気がした。きっと声が震えていたから見抜かれたんだと思う。

いつも、私の事は何でも見抜いてしまう。

今だって、そう。


何が?何も怖いモノなんて………


声が途切れた。今まで溜まりに溜まっていた気持ちが溢れる。

きっと惨めに聞こえるのかもしれない。

でも、聞いて欲しかった。もっと居たいんだって、そんな事ばかりを只、喚くように、懇願するように。

それを全部吐いて。静かに聞いてくれた。


どうして。


そう、静かに言った。


どうして?だって、心配させてしまうかもしれなかったから


心配したら駄目なのか


私はその言葉を皮切りに、ボロボロと涙を零して嗚咽を漏らす。


「ったく………そんな事になるまで頑張るなよ」


声と共に、後ろから優しく抱き締められる。声はあの、懐かしい声。

突然の事に反応出来ていない私に、彼はこう言った。


「心配するな。これからはずっと傍に居てやるから」


私はその言葉に笑って、涙を流して。


「当たり前っ」

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