1. 瑠璃色
“瑠璃色”は紫みを帯びた濃いめの青。落ち着いていて厳格な、ファンタジー向けの色ですね。補色は黄色〜オレンジ。
その色は明確に規定されているわけではないようですがカラーコードは#1e50a2, #3451a4, #434da2が瑠璃色とみなされているよう。正直なところ、調べればその度にちょいちょい違ったカラーコードが出てきます。宝石が元だとしたらひとつに決めきれないのも、また深いですね。でも僕にとっては全部確かに瑠璃色で、綺麗です。一応、明るい"スカイブルー“とは分けて進めます。
“瑠璃色”はとてつもなく深い歴史があり、数々の名画にも用いられ、時代によっては最高級顔料として用いられています。──というのも、瑠璃は鉱物の“ラピスラズリ”に由来しており、宝石で絵を描いているようなもので、めちゃくちゃ権力のある者に依頼されたりするらしくそんなん命令されたら絶対失敗出来ません。……デジタルのカラーパレットで使うのが恐れ多く思えてきます。
とりあえず名前の語源ですが、おおもとのラピスラズリ(lapis lazuli)……コレよくみるとその文字のなかには西洋で青を意味するアズールという言葉が含まれているんですね。拙著の『ヒトの骨格を持つ蝿の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記』にも技名にアズールが含まれる昼夜ログインしっぱなしの戦闘狂廃人プレイヤーみたいなキャラが出てくるのですが、正直アズールという言葉や色の意味はあまり理解しておらず、お恥ずかしい限りです。
ラピスラズリが伝わったルートはちょっと複雑で、中東の“アフガニスタンの鉱山の古い名前”が元々だったのが、アラビア語圏で外来語として取り入れられ、アラブ経由からヨーロッパへと伝わって認知されたようですね。だから、その顔料は中東から地中海を越えて伝わった青色”ウルトラマリン”とも呼ばれたりします。
そしてこの色が使われた作品ですが、皆さん大好きなヨハネス・フェルメールの超有名な『真珠の耳飾りの少女』が代表的な作品の一つだと思います。その青いターバンはふんだんにラピスラズリが用いられております。……そしてこのターバン、確かに瑠璃色なのですが、影と光の表現が美しく、実に様々な表情の瑠璃色をみることができます。語彙力ないですが、すげえとしか言いようがありません。
そしてもうひとつ例を、瑠璃色は西洋では聖母マリアのローブの色としても伝統的に用いられています。
僕がこれを書いているのは3月1日、ヴィーナスの誕生で有名なサンドロ・ボッティチェッリの誕生日なのですが、その有名作品のひとつ、“書物の聖母”のローブの色も美しい瑠璃色、ラピスラズリが用いられ、描かれています。
ボッティチェッリは皮なめし職人の4男として生まれ、少年期に病弱だったそうです。その影響も作品に表れているのか、物憂げでなんとも言えない聖母の表情が、濃い青色になんともマッチしています。陽キャ、隠キャだとかの概念を超越した、そんなん心にもって見るのは失礼だと思わせられる名画です。機会があれば是非ご覧になっていただくと良いかもしれません。
個人的にはローブの深い青色に金色がきらきらと散りばめられていてとても綺麗です。聖母の称号は『Stella Maris(海の星)』。つまり、瑠璃色は海と夜空、金色は星ととらえることができます。そこに込められた意味は地上と空を結びつけ、“航海でも迷わず導く存在”という意味があったようです。北極星が遭難者を助けた話は沢山ありますね。実際、ラピスラズリ自体はしばしば黄鉄鉱、方解石と呼ばれる真鍮色の粒を含んでおり、夜空のような輝きを放ちます。
つまり、瑠璃色と金色は人工のオサレではなく、自然に同居しているのです。そして白く流れる雲のような方解石が加わると、コレはもう、天然の絵画です。とても偶然とは思えない美しさ……たまに思うんですが、この世界も上手く出来すぎていて誰かが執筆しているんじゃないかしら。
瑠璃色のお話でした。
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