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私の水着どこ?

作者: asklib
掲載日:2025/12/25

「私の水着どこだーーー!」


夏美は部屋中をひっくり返していた。クローゼットを開けては閉め、引き出しを次々と引っ張り出しては中身をぶちまける。勢い余って自分の足に引き出しをぶつけて「痛っ!」と叫びながらも、探索は続く。


「絶対にこの部屋のどこかにあるはずなんだけど……」


その時、部屋のドアが開いた。


「夏美ー、もう出発の時間だよ。みんな待ってるって……って、何この部屋!?」


親友の美咲が唖然とした顔で立っている。部屋はまるで爆発したかのような惨状だった。


「美咲! 大変なの、水着が見つからなくて!」


「え、マジで? それは困ったね……」


美咲は深刻そうに頷いて、一緒に探し始めた。クローゼットの奥を覗き込みながら、美咲が聞く。


「ねえ、どんな水着だっけ?」


「えっとね、青い水着! 新しく買ったやつ!」


「青かぁ。ビキニ? ワンピース?」


「ビキニ! 可愛いでしょ♪」


美咲は夏美の姿をチラリと見て、また探すフリを続ける。


「そっかぁ。他に特徴は?」


夏美はベッドの下を覗き込みながら答える。


「あ、胸のところにね、白い小さなリボンが付いてるの! 超お気に入り!」


「へぇ、リボン付きなんだ。可愛いじゃん」


美咲は少し笑いを堪えながら、引き出しを開けたり閉めたりしている。


「他には? 模様とか?」


「んー、無地だけど、肩紐のところがちょっとフリルになってるの! あ、あとね、サイドがちょっとハイレグっぽくなってて……」


「ふんふん、青くて、白いリボンで、フリルの肩紐で、ハイレグっぽいビキニね」


美咲は完全に笑いを堪えている。声が震えている。


「そうそう! 知ってる? 見なかった?」


夏美は必死にタンスの中を漁っている。


「あのさ、夏美……」


「ん? 何?」


「そのパンツの色は?」


「え? パンツ? あ、水着のボトムのこと? それも青だよ! サイドが紐で結ぶタイプになってて……あ! そうだ、お尻のとこにも小さいリボンが付いてるんだった! 可愛いでしょ♪」


「青いビキニで、胸に白いリボン、肩紐がフリル、ハイレグで、サイド紐で結ぶタイプで、お尻にもリボン……」


美咲は必死に笑いを堪えながら復唱する。


「そうそう! その水着! 本当にどこ行っちゃったんだろう……もしかして洗濯機?」


走って洗面所へ向かおうとして、散らかした服の山に足を取られて派手に転ぶ夏美。


「いたたた……」


美咲はもう限界だった。


「ね、ねえ夏美……その、なんていうか……」


「何? 早く探さないと!」


起き上がって洗濯機へ向かおうとする夏美の肩を、美咲が掴んだ。


「鏡。見て」


「え? 今そんな場合じゃ……」


「いいから! お願いだから見て!」


美咲の必死な様子に押されて、夏美は鏡の前に立った。


映っているのは、青いビキニの水着姿の自分。胸元には白い小さなリボン。肩紐はフリル付き。サイドは紐で結ぶタイプで、ちょっとハイレグ。振り返ればお尻にも小さなリボン。


「……」


「気づいた?」


「……え?」


「青いビキニ、白いリボン、フリルの肩紐、ハイレグ、サイド紐結び、お尻にもリボン……全部、今、あなたが着てる水着の特徴なんだけど」


「……あ」


夏美の顔が見る見るうちに真っ赤になる。


「……えっと」


「着てたね」


「……着てた」


「朝から」


「……朝から」


「で、その格好で部屋中探し回ってたね」


「……うん」


しばしの沈黙の後、美咲が噴き出した。


「あははは! もう、どうして気づかないの!? 説明聞きながら、全部今着てる水着のことじゃんって思いながら探してたんだよ私!」


「だ、だって! 朝着替えたの忘れちゃって……」


「ていうか、探してる間、自分の格好見なかったの!? 鏡の前も何回も通ったよね!?」


「あ、あれは、髪型気にしてただけで……」


「髪型は気にするのに服装は気にしないんだ!?」


「うぅ……」


完全にうなだれる夏美。でも、あまりにも可笑しくて、自分でも笑ってしまった。


「あはは……私、バカみたい……」


「バカみたいじゃなくて、バカなの」


「ひどい!」


二人で笑い転げながら、散らかった部屋を片付けて、三十分遅れで海へ。


待っていた他の友達には、美咲が嬉しそうに報告した。


「聞いて聞いて! 夏美ったら、水着着たまま水着探してたの! しかも私が『どんな水着?』って聞いたら、今着てる水着の特徴を全部教えてくれるっていう!」


「ええ!? それで気づかなかったの!?」


「全っ然! 青いビキニで、リボンついてて、フリルで、って全部説明してくれたのに!」


みんなに大爆笑される夏美。


「もう! 笑わないでよー!」


顔を真っ赤にして抗議するが、自分でも可笑しくなって一緒に笑ってしまった。


「でもさ、この水着、本当に可愛いよね」


友達の一人が言うと、夏美は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った。


「でしょ? お気に入りなの!」


夏美の伝説がまた一つ増えた、忘れられない夏の日だった。


<fin>

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