【最終話】
王都に朝の鐘が鳴り響く。
今日は“新たな公爵家の誕生”として、王国中の注目が集まる一日だった。
白い大聖堂には、各地から集まった貴族と市民たちの祝福の声が満ちている。
祭壇の前に立つのは、凛とした佇まいの美しい花嫁――アメリア・ヴァレンティナ。
隣に並ぶのは、王国第二王子であり、今日からライゼルト公爵となる男、セイラン・ライゼルト。
王太子が高らかに宣言する。
「ここに、ライゼルト公爵家の設立と、アメリア・ヴァレンティナとの婚姻を認め、王家として正式に祝福する」
王からも優しい眼差しで声がかかる。
「セイラン、お前の選んだ相手は立派だ。アメリア殿、どうか我が息子を頼んだよ」
「はい、陛下。必ず、共に歩んでまいります」
晴れやかなアメリアの声に、参列者たちは惜しみない拍手を贈った。
披露宴では、兄・ジークリフトが登場。
彼の隣にはすでに妻となった婚約者が寄り添い、腕の中には小さな赤子がいた。
「アメリア、セイラン。おめでとう。お前たちの門出を、心から祝福する」
「兄様……!」
アメリアの目に涙が浮かぶ。
「アメリア、おめでとう。幸せになれよ。アメリアは結婚しても俺の世界一可愛い妹だからな。何かあったらいつでも帰ってきなさい。」
「もう、兄様ったら……!」
その言葉に、セイランも肩を揺らして笑う。
やがて夜。王城の庭園でふたりきりになったアメリアとセイランは、静かに星を見上げていた。
「君とこうして過ごす未来が、いつか来ると信じてた。でも、想像以上に幸せだ」
「私も。こんなに笑える日が来るなんて、思ってなかった。……筋トレから始まった恋なのにね」
「それが、僕たちらしいってことで」
そう言って、セイランが彼女の肩を抱き寄せ、そっと唇を重ねた。
優しくて、あたたかくて、確かな“愛”の形。
「私、これからずっとあなたの隣にいたい。ライゼルト公爵夫人として、そして……あなたの妻として」
「それは……俺の夢だったよ。ありがとう、アメリア」
見上げた空には、流れ星が一つ。
静かに、けれど確かに――ふたりの願いを運んでいった。
笑って、泣いて、悩んで、乗り越えてきたすべての出来事が、今では大切な2人にとっての思い出だ。
アメリアとセイランの未来は、どこまでも晴れやかだった。
── 完 ──
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