第27話 誓いのキス
午後の陽光が差し込む、王城のバルコニー。
小鳥のさえずりが遠くから聞こえる穏やかなひととき。
アメリアとセイランは、並んで外の景色を眺めていた。
事件はすべて終わり、エリシアの裁きも完了した。
ユリウスとも完全に決別し、過去は過去になった。
――今、二人の目の前にあるのは“未来”だけだ。
「アメリア」
隣に立つセイランが、ふと彼女を見つめた。
その眼差しは、どこまでもまっすぐで、あたたかかった。
「君と出会ってから、たくさんの時間を過ごしてきた。笑って、泣いて、傷ついて、支えあって……」
アメリアはそっと頷く。
その胸には、確かに積み重ねた日々の記憶があった。
「俺は君とずっと一緒にいたい。これから先、どんな時も、君を守り、支えたい。……アメリア、俺と結婚してくれないか?」
アメリアの瞳に涙が浮かぶ。
「……はい。私も、あなたと生きていきたい。何があっても、一緒に」
その瞬間、セイランはそっと彼女の頬に手を添え――
唇を重ねた。
柔らかく、あたたかく、すべてを包み込むようなキス。
お互いを愛し、信じ、これからを共に歩む“誓いのキス”だった。
離れた唇の間で、互いに微笑む。
「……あのときの筋トレが、まさかこんな未来に繋がるなんてね」
アメリアが小さく呟くと、セイランはいたずらっぽく笑った。
「筋肉は裏切らないからな」
「ふふっ、でも私の気持ちは、もっと強いよ」
二人は見つめ合い、もう一度静かに唇を重ねた。
王都に春の風が吹く。
アメリアの人生は、今まさに“真の始まり”を迎えていた。