第24話 兄の許しと祝福
春の柔らかな風が、庭園の花々を優しく揺らしていた。
療養中のアメリアは、セイランの勧めで久々に外に出ていた。
ベンチに腰をかけ、頬に風を受けながら目を細めていると――
「……だいぶ顔色が戻ったな」
懐かしい声が背後から届いた。
「兄様」
アメリアの兄のジークリフトが少し気恥ずかしそうに歩み寄ってくる。
アメリアは自然と笑みを浮かべ、横にスペースを空けた。
「セイランから聞いたよ。兄様、婚約者ができそうって。」
その言葉に、ジークは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに咳払いをして顔を背ける。
「……あいつ、余計なことを」
「ふふ。でも、よかった。私はすごく嬉しい」
アメリアの言葉に、ジークは肩の力を抜いて腰を下ろす。
「まあ、そろそろ妹離れの時期だろうとは思ってたさ。」
彼はどこか寂しげに空を仰ぎながら続ける。
「だけど、実際にお前がセイランの隣に立つ姿を見ると、……やっぱり少し、複雑だな。」
アメリアは小さく微笑む。
「兄様、私、ちゃんと自分で選んだの。セイランが好き。……これからは、私自身の人生を歩きたい。」
その言葉に、ジークは目を細め、ふっと笑った。
「セイランの筋肉が気に入ったのか?」
「ち、違うよ! ……たしかに、ちょっと素敵だけど……っ!」
頬を染めてうろたえる妹の姿に、ジークはつい吹き出した。
「……いいじゃないか。それでいい。」
そして、真剣な眼差しで彼女を見つめ直す。
「……アメリア。これから何があっても、お前が自分で決めた道なら、俺はずっと味方だ。……セイランも、ちゃんと見てるよ。アメリアの筋肉も、人柄も。」
「うん。ありがとう、兄様。」
アメリアはその手を握り、心からの笑みを浮かべた。
遠くからそれを見ていたセイランも、そっと頷く。
こうして、兄の許しと祝福が、二人の未来に温かい追い風を与えてくれた。