。はじまり、はじまり、
御伽噺には近い時分。近代では遥か遠く。
善き人を集めた善区と云う市街。
ぶっきらぼうに絡まり合い形成された金網が創る境界線。金網からの向こう側はどうなって居るのだろうか、獣の軌跡さへ見つけられず、荒涼とした景色はビタっと貼り附く書き割りのよう、陽がつくる影だけが悠々越える境界線。
消える日は暗渠に消え、繰り返される。
不幸がないのが一番の不幸だと狭い路地裏に貼られた紙がクシャっと笑う。
ビル風に押され緩りと進むような雲の影と建造物の影、脚を伸ばす街路灯、街路樹の影だけが通りを闊歩する。
そんな市街地を移動するドローンの僕。