5 家族
ローブを羽織り目元を隠し、口だけが見える状態で、皇子の前に現れる。
でも、声は変えない。
私は家族に気づいて欲しいのだろうか。
、、、よく、わからない。
「ようこそ、妖精の森へ」
「妖精の森?」
「あれ?知らない?なのに入ってきたの?呪いの森って呼ばれているのに?」
「ああ、君がこの森の主なのか?」
「うん、そうだよ、ここが私の家なの、この森を荒らす人間がいるって聞いて見に行ったの」
「それは、悪い」
「皇帝の命令?」
「ああ、」
「そう、でも何で、今更この森を。」
「父上はこの森が嫌いなんだ。」
「嫌い?何で?」
「父は聖女にことが本当に好きだった、皇后がいるから、側妃だったけど。
だから、聖女の子の性別がどちらであろうと、皇位を父が継がせようとするかもしれないと思って、焦った第一皇子派の人間が聖女を殺したんだ。
暗殺者を捕まえて、尋問したら、聖女は出産していて、聖女の遺体と一緒に、聖女の子、、俺の家族を捨ててきたってことがわかった」
「そう、でも何で捜索隊出さなかったの?」
「?」
「??」
皇子が不思議そうな表情をする、何かおかしなを言っただろうか?
「?、何かおかしなことを言った?」
「いや、何でもない」
「それより、結局、何で捜索隊出さなかったの?聖女は死んでいたかもしれないけど、聖女の娘は生きていたかもしれないでしょ?」
「ああ、だが捜索隊は出したぞ?」
「は?捜索隊なんて来てないけど?」
「そんなはずはないはずだ。」
「少なくとも、私が知る限り、捜査隊は来てないけど。」
はて?おかしい、話が食い違ってる。
「いや、来たはずだ、だって、公爵が」
「ああ、なるほど。」
「何がなるほどなんだ?」
裏切り者の公爵、皇帝は知らなかったわけだ。
皇帝の忠臣である、公爵が聖女を好きだったということを。
公爵は聖女が好きで、聖女は皇帝が、皇帝は聖女が好きだった。
公爵は異常だ。
公爵は聖女の遺体が皇帝の手に渡ってほしくなかったのであろう。
本当に気持ちがわからない。
だから、ウソをついた、くだらない。
「知ってた?公爵は聖女が好きだったんだよ?だからいつも、聖女と皇帝が会うのを邪魔していたの、でも皇帝は公爵を信用していて、公爵はとても優秀だった、だから、聖女は公爵のことを追求しなかった、皇帝のために、ね、」
「!!」
「じゃ、そういうことだから、聖女の遺体は、、、
遺体は面倒いから持ってこなかったけど、遺髪ならあるよ?いる?」
ウソだ、聖女の遺体、お母様の遺体は家の近くに埋めてある。
少しでも近くにいて欲しくて、遺髪は持ち歩いていた。
正直言ってあげたくもない、でも、母を愛していたのは本当だと思うから。
「いいのか?!」
「うん」
遺髪を渡す。
「ありがとう」
「そ、じゃあね」
転移魔法を発動させる。
「ちょっ、ま、、、」
ああ、バカみたい。
手で目を覆う、こんなもの欲しくなかった。
宝石眼なんて。
宝石眼を持つのは、皇族のみ、宝石眼が濃ければ濃いほど、皇族の血が濃いことを表す。
そして、宝石眼を持っていれば、皇位継承権を持つことができる。
双子の第二皇子と第三皇子は第一皇子よりも宝石眼が薄いらしい。
そのおかげでか表立って第二皇子や第三皇子を皇帝にしようとする奴らはいないらしい。
でも、私はみんなの話だと現皇帝よりも、第一皇子よりも宝石眼が濃い。
、、、つまり、私が皇位を継ぐことが可能なのだ。
何より、今までの歴史上基本的に、皇位を注いでいるのは男女関係なく、宝石眼が濃い人間のことが多い。
女性であろうとも皇位を継げてしまうのは本当に困る。
面倒だ、はぁ、。
「バイバイ、お兄様」
小さく呟く、返事は帰ってはこなかった。