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正しい勇者の倒し方  作者: 冷田和布
人間の世界へ
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意外な協力者

「ふひー、なんとか間に合ったわね」


 店と魔法の樽を直しおえたところでマトゥーカさんが起きてきそうな気配があったので慌てて逃げてきた。

 ひと言、挨拶くらいした方がよかったかもしれない。

 だけど顔を合わせちゃうとお別れがつらくなっちゃうから。


「わざわざ街に戻って何をするかと思えば。片付けとは……」


 すっかり黒ナマコの姿に戻ったりっくんがカバンの中から顔を出した。

 だいぶ呆れてるみたいだ。


「いいじゃん。“立つ鳥跡を濁さず”って言うでしょ」

「なんじゃそれは」

「私が元いた世界の言葉よ。それより、また龍に変身してよ。そんでササッと聖王国まで乗せてって」

「嫌じゃ」


 あっさり断られた。


「えー、今朝は乗せてくれたじゃない」

「あれは特別じゃ。人間どもが恐怖に狼狽える姿を見られると思ったからのう。いや、実に愉快じゃったわ」

「嫌な趣味ねぇ」


 りっくんに乗せてもらえないということなら、ひとまず大きな街まで行くしかない。

 そこで運良く聖王国まで行く商隊なんかに潜り込めたら御の字。

 無理ならイルランドの王都まで行って、乗り合い馬車を探すしかない。

 長い道のりになりそうだ。


「とにかく、早めにこの街を出ないとねー」


 エドワードたちはまだ砦の方にいるだろうけど、戻って来たら厄介なことになりそうだ。

 そう思っていると、路地の先に兵士たちの姿が見えた。


「お前たち、この人相書きの娘を見なかったか」


 何やら街の人たちに話を聞いてまわっているようだ。

 誰か探しているのだろうか?


「なんでもいい! この娘の情報があれば我らに申し出よ! 昨夜、街の留置所から脱走し教会を完膚なきまでに破壊した大罪人だ!」


 探してるの私じゃん!!!!

 しかも大罪人って! 

 いや、確かに全部身に覚えがあるけど!


「あばばばば!? ど、どうしようりっくん!?」

「知らん。自分でなんとかせい。妾は寝る」


 りっくんからは実に薄情な言葉を残してカバンの中に引っ込んでしまう。


「と、とにかく見つからないようにしなきゃ。そんで一刻も早く街を出よう!」


 独り言ちると、私は路地の奥へと引っ返す。

 裏道を通って兵士たちの目をかいくぐり、なんとか街の入り口近くまでやってくる。

 だけど、そこで身動きがとれなくなってしまった。

 街の入り口にはいつもより厳重な警備体制がしかれていた。

 昨日、あんな騒ぎがあったんだから当たり前といえば当たり前の対応だ。


「まいったわね。これじゃ街から出られないわ……」


 屋根伝いに城壁を飛び越える?

 できなくはないけど、日があるうちは余計に目立ちそうだ。

 どっちにしろ今は動けない。


「姫様……どうぞこちらへ」


 そうやって考えをめぐらしていた私の耳元に声が聞こえてくる。

 間違いなく魔法を使って声を飛ばしている。

 しかも私のことを『姫様』と呼んでいた。

 私をそう呼ぶのは魔族しかいない。


「もしかして、ケンネルさんの部下? もしかして私を逃がしてくれるの?」

「こちらへ」


 “声”はふたたび繰り返した。

 ちょっと怪しい気もしたが、無視するのもどうかと思ったので私は声に従うことにした。

 細い路地を進むと、一際奥まった場所で誰かが私を待っていた。

 暗い路地裏に佇む人影。

 見覚えのあるメイド服。

 それは、なんとローガン家政婦長だった。


「お呼びだていたしまして申し訳ありません。アリステル様」


 そう言うと、ローガン家政婦長は跪いて《《魔族式》》の臣下の礼を執る。


「どうして家政婦長が……」


 どうして私の本名を知っているのか、なぜ魔族の礼をするのか。

 聞きたいことがいっぺんに頭に浮かぶ。

 それを察してか、ローガン家政婦長が口を開いた。


「姫様と知りながら長らくの不敬な振る舞い。お許しを。私のことはローガンとお呼びください」

「えっと、ローガンさんはもしかして魔族なの?」

「はい。この街にてケンネル様のお手伝いをさせていただいております」


 ってことはスパイみたいなものか。

 さすが草走族(アイーティ)だ。

 きっとローガンさんみたいなヒトが人間世界のあちこちに潜伏しているのだろう。


「さっそくではございますが、姫様はこの街をお出になりたいのではないでしょうか」

「うん。そうなの。でも、なぜか兵士の人たちが私を探しているみたいで……」

「それはランフォード卿の指示のようです」


 あいつか!

 おのれ陰険眼鏡! いつか仕返ししてやる!


「ご安心ください。安全に街を出る道がございます」

「ほんと!」

「ご案内いたします」

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