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正しい勇者の倒し方  作者: 冷田和布
人間の世界へ
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魔王がもたらすもの

「うわ……ちょっとこれえげつない威力だわ……」


 私は今さらながらドン引きしていた。

 ご先祖様の手記に触れる前、独自に開発してた時とは威力が雲泥の差だった。

 橋はおろか、周囲が球状にえぐり取られて地形が変わってしまっている。


「たった()()でこの威力かー。こりゃそうそう使えないわね。もうちょっと改良しないと。ねえ、何か良い方法ある?」


 “彼女”にそう呼びかけてみる。

 だけど返答はなかった。

 どうやら接続が切れてしまったようだ。

 それとも、最初から私の妄想だったのかも。


「そなた、こんなものを妾の眠っておった場所にぶちこんだのかや」


 すると、りっくんがわりとドン引きした顔で私を視ていた。


「い、いや、あの時は私もまさかこんなとんでもない威力とは思わなくて! ていうか、さすがの私もこれはしばらく封印するわ。こんなのチートどころか完全なバグ技よ。ゲームだったら即日修正パッチだわ」

「しゅうせいぱっち……?」

「いいの。気にしないで」


 どうせ、りっくんに説明してもわからないし。


「にしてもなんじゃ? あの“正しい勇者の倒し方(ヒーロー・バスター)”とかいうのは。もっとマシなのは思いつかなかったのかや」

「逆にこのくらい直球なのがカッコイイのよ。あと、私の意気込みもこめての技名なんだからこれでいいの!」


 りっくんはわかってないのだ。

 決して私のネーミングセンスに問題があるわけではない。


「これで戦争なんてバカなこと考える人は減るだろうけど、一応ダメ押しもしておこうかな」


 りっくんにお願いして、もう一度ジェイムソン将軍たちのところまで行ってもらった。

 私が降り立つと、さっきは敵意バリバリだった兵士たちが今度は怯えた表情で武器を構えていた。

 うーん、ちょっと傷つく。


「我が力、その目に焼き付けたか」


 私が口を開くと兵士たちが思わず身構える。

 気丈にしているのはジェイムソン将軍くらいのものだ。


「誰にそそのかされたか知らんが、安易に戦を起こそうなどとせぬ方が身のためだ。次は女神の社にあれが落ちるやもしれぬぞ」


 ジェイムソン将軍を焚きつけていた兵士に視線を向ける。

 私の釘刺しにビクッと反応したところをみると、やっぱり教会の信者か何かっぽいな。

 

「お、おのれ魔族め……!」


 振り返ると、おじいちゃん将軍(ジェイムソン)が私に剣を向けていた。

 さっきのを見てまだ私とやる気なんて根性があるというか無謀というか……。


「エドワード殿下の仇! たとえ敵わずともせめて一太刀くれてやる!」

「いや、だからアイツは生きてるって──」

「剣を収めよ、ジェイムソン!」


 私がおじいちゃんを説得しようとしたその時だった。

 エドワードたちがやってきたのは。


「で、殿下!? 亡くなられたとばかり……!?」 

「勝手に殺すな。この通り、俺は生きている」


 溜息をこぼしながら馬を下りてきたエドワードに駆け寄るジェイムソン将軍。


「おお……ご無事で……よかった。本当によかった……」

「すまん。心配をかけた」


 跪き涙を流す将軍の肩にエドワードは優しく触れる。

 七年前の事故でフランツ王が亡くなって、今はジェイムソン将軍がおじいちゃんみたいな感じなのかもしれない。

 誤解もとけたし、後のことはエドワードに任せて私は退散しよう。

 勇者なんだからそのくらいの仕事はしてもらおうじゃないか。


「ツノ女!」


 背を向け立ち去ろうとしていた私は、その声に思わず足を止めた。


「やはり、お前なんだな」


 何かを確かめるようにエドワードは私に呼びかけてくる。

 毎日のように顔を合わせていた相手なのに、その呼び方につい懐かしさが込み上げてきた。

 だから、私は振り返らなかった。

 龍のはばたきが巻き起こす強い風に、その場にいた者たちが視界を奪われている間に私はふたたびりっくんの背に飛び乗ってその場を飛び立った。


「声くらいかけてやればよかったじゃろう。あの王子、ずいぶん物欲しそうな顔しておったぞ」

「物欲しそうってなによそれ。ていうか、話なんてしたら“アリス”の方の正体がバレるかもしれないじゃない」

「鈍いやつめ」


 そうぼやいて、りっくんは謎の溜息をつく。

 わけわからん。


「それより、早く街に向かってよ」

「街に戻るのかや? このまま行ってしまった方がいろいろ面倒が省けてよいじゃろうて」

「そりゃ、今さらみんなにお別れの挨拶なんてできないけどね。でもやっておきたいことがあるの」


 魔法のことがバレてしまった以上、もう街には留まれない。

 マトゥーカさんには直接お別れを言いたかったけど仕方ない。

 その代わりというわけじゃないけど、最後に少しだけ恩返しをしておこうと思う。

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