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正しい勇者の倒し方  作者: 冷田和布
人間の世界へ
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異世界料理革命と言えば

 〜前回までのあらすじ〜


 お昼ご飯を作れと言われて厨房に来てみたら、食材がなんもなかった。





「いやいや! どういうことなのよこれは!」


 思わずその場でツッコミを入れた私の耳に、クスクスという笑い声が聞こえてくる

 見れば厨房の入り口あたりに数人のメイドたちがたむろしていた。

 

 ……なるほど、ね。


 どうやらこれは彼女たちの仕業らしい。

 薄々わかっていたことだけど、私はやはり歓迎されていないらしい。 

 それも当然か。

 給仕三人娘の反応から察するに、ここのメイドたちも「屋敷に勇者様がやってくる! 上手くすれば人生一発逆転!」なんてことを考えていたのだろう。

 ところが、その勇者様はどこの誰ともわからない下町の娘を外から連れてきたわけだ。

 気に入らないと感じる人がいてもおかしくない。


「とにかく、なんとかあるものをかき集めないと」


 よくよく保管庫を探してみると、傷んだレタスと形の歪なトマトを発見した。

 さすがに調味料は使い切れなくて残っていた。油もあった。

 思っていたよりいろいろあるじゃないか。

 よーし、これで二人分の昼食を作って……。


「って、できるかー!」


 本日二度目のツッコミだった。


「うん。無理」


 そんなわけで私は早々に諦めた私はローガン家政婦長の元へ向かった。


「食材がない?」

「はい。見事なまでに空っぽでした。なのでお仕事ができません」


 他のメイドたちの嫌がらせにも屈せず、知恵と勇気で状況を打開できたのならドラマチックなのだろうけど、無いものは無いのだからどうにもできない。

 こういう時は余計なことは考えず、上司に報告するのが正しい社会人ってものだ。


「わかりました。着いてきなさい」


 さすがに「自分でなんとかしなさい」とは言われなかったか。

 ローガン家政婦長に着いて行った先は裏庭の鶏小屋だった。


「朝に一度、卵を採りましたがまだいくらかは残っているはずです」


 貴族の屋敷で家畜が飼われているのはけっこうよくあることだ。

 とくに卵は貴族の食卓には欠かせないらしい。

 ポーチドエッグやオムレツ、あとはいわゆる茹で卵。

 エッグスタンドいう、ただ卵をお上品にセッティングするためだけアイテムに乗せられて食卓のど真ん中に置かれているのを見たことがある人もいるだろう。

 ほら、某三代目大泥棒のアニメで伯爵様が食べていたやつ。


 それはともかく、卵がいくつか手に入ったならアレが作れるじゃないか。

 異世界料理革命の定番マヨネーズだ。

 ビネガーも油も調味料の棚に置いてあったし、いやぁ、起こしちゃう? 革命ってやつを。


「他に何か必要なものはありますか? 今からでは市場も開いていませんから大したものは用意できないと思いますが」

「じゃあ、パンを。できれば柔らかくて細長いやつでお願いします」

「それでしたら当家でいつも出しているものでよいでしょう。あなたが使う分も焼いておくよう料理長に伝えておきます」

「ありがとうございます!」


 私は卵を抱えて厨房に戻った。

 まずはマヨネーズ作りだ。

 今さら解説する必要もないと思うけど、卵黄に塩と酢を入れてかき混ぜ、そこに油を少しずつ加えながらさらにかき混ぜていくと乳化してトロッと白っぽくなっていく。

 そうなればマヨネーズの完成だ。

 まあ言葉にすると簡単だけど、実際これがけっこうな重労働だった。


「う、腕が……」


 当然だけどハンドブレンダーなんてない世界なので、すべて手作業。

 かろうじて泡立て器があったのは救いだった。それでも腕が死んだけど。

 私が休憩していると、家政婦長がやってくる。


「燻し小屋からソーセージを持ってきました。これも使いなさい」

「いいんですか?」

「ご来客に粗末なものを出したとあっては家の名折れですから」


 あれ? もしかしてローガン家政婦長って思ってたより優しい?

 少なくとも他のメイドと違って私を嫌ってるとか意地悪してやろうとかって考えはないみたいだ。


「それはマヨネーズですか? 私が知っているものよりずいぶん黄色いですが……」


 作業台の上のボールに目を留めた家政婦長が感想をもらす。

 

 ……ん?


「マヨネーズ知ってるんですか!?」

「何を驚いているのですか」

「いや、だって……!」


 料理革命は!?

 あれ? 私またなんかやっちゃいました? ってドヤ顔で言う準備してたのに!

 この世界にはもうマヨネーズがあったのか……。

 考えてみたら、私やスキルニールさんみたいな転生者がいるんだからもっと昔に転生した人が一攫千金を狙ってマヨネーズを普及させていてもおかしくはなかった。


「マヨネーズソースは聖王国で古くから肉料理のソースとして食べられています。当家のものはここに」


 そう言って、ローガン家政婦長は厨房の隅にある分厚い扉を開いた。


「これ、もしかして冷蔵庫?」

「よく知っていますね。聖王国から取り寄せた魔導具です」


 魔導具。人間の世界で見たのはこれが二つ目か。

 意外とあるもんだなー。


「って、マヨネーズあったの!?」


 さっきまでの私の苦労はいったいなんだったんだ……。

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