振り返ればヤツがいる
考えてばかりでは何も前に進まない。
そういうのは私の主義に反する。
まずは『勇者』──エドワードのことを調べてみよう。
幸い、しばらくはこの街に滞在するらしいし。
嫌味王子がなんで『勇者』になのか。
『聖剣』とはどういう物なのか。
スキルニールさんの話では本物の『勇者』は虹色の光を纏うらしい。
もしかしたら、人間たちが勝手に『勇者』ということにしただけで、実際はただの人間なのかもしれない。
そんなわけで、今日も元気にマトゥーカさんのお店で働くのだった。
「パスタあがったよ。外の客に持ってっとくれ」
「はいはーい! 私が行きまーす!」
美味しそうに湯気をたてるニンニクとブロッコリーと塩漬け肉のパスタをかっさらい、私はテラス席に向かった。
別にサボろうとかそういうんじゃないからね。
これを注文した人にちょっと話を聞きたいだけなのだ。
「ジェドさーん、おまたせー」
「あ、アリスちゃん……! ぼ、僕のこと覚えてくれたんだ……」
私が料理を持っていくとジェドさんは驚いた様子で立ち上がった。
ジェドさんは、嫌味王子が引き連れてきた部隊の人だ。
まだ少年っぽさの残るような風貌だけど、『勇者』が率いる部隊に最年少で配属されるくらいだから実力か家柄、もしくはその両方に恵まれているのだろう。
『勇者』がこの街に逗留を始めてからこっち、毎日のようにマトゥーカさんのお店の通ってくれている。
「すっかり常連さんね。よっぽどマトゥーカさんの料理が気に入ったんだ」
「う、うん。もちろんそれもあるけど……」
なんだかソワソワしているジェドさん。
は……!
この反応、もしやアン、リズ、メイの給仕三人娘の誰かがお目当てなんじゃ!?
やっぱり一番人気のメイか、意外とリズのようなスレンダーもありえる。
アンだった場合は……うん。がんばれ。
そんな青春してるジェドさんには申し訳ないが、今日は私の相手をしてもらおう。
今度、そっちの恋愛相談にものってあげるから。
「ねえねえ、ジェドさんって『勇者』様の部隊にいるのよね」
「そうだけど……アリスちゃんって、エドワード様に興味あるの……?」
「いや、王子様は別にどーでもいいわ。どっちかって言うと聞きたいのは『勇者』と『聖剣』のことかな」
「そ、そうなんだ……!」
ジェドさんはなんだかホッとしていた。
そっか。いきなり王子のこと探りを入れたら警戒されるのは当然だよね。
王子様の護衛も大変だなー。
「たとえば、勇者の苦手なものとか寝る時は『聖剣』をどこにしまってるだとか。そういうのを聞かせて」
「なんでそんなことを……本当に殿下に興味ないの?」
「ないない。あんな偉そうで感じ悪いやつ。どうせお屋敷でもえばり散らかしてるんでしょ? 食事が不味いとか部屋が狭いとか枕はふかふかじゃないと嫌だとか文句ばっかつけて周りを困らせてるに決まってるわ。私にはわかるのよ」
「ほう、ずいぶん俺について詳しいようだな」
振り返ると、そこに嫌味王子がいた。
いくぜベタ展開……!




