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正しい勇者の倒し方  作者: 冷田和布
人間の世界へ
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縦巻きロールの来訪

「やっぱり、お父様は来られなかったのね」


 迎えのキャリッジの中で、メリッサに尋ねた。


「はい。先日竣工した砦への視察に向かわれました」

「仕方ないわよね。人間側の動きも活発になってるし、各氏族に根回しもしとかなきゃいけないもの」


 申し訳なさそうなメリッサをフォローするつもりで私は答える。

 この七年で魔族と人間の関係は悪化の一途を辿っている。

 その原因の一端が聖王国を中心とする『サルラ同盟』にあるのは明白だった。

 表向きは人間たちが『国家間で協力して魔物の被害に取り組む』という名目だけど、同盟の名前にもつけられている主要国家首脳会議が行われた『サルラ』っていう村は七年前に飛空艇が墜落したすぐそばにあるのだ。

 誰がどう見ても人間たちが魔族に対抗するために結んだ新たな軍事同盟だ。

 実際、人間たちはギヨッド河の対岸に次々と砦を建設している。

 まあ、それは魔族側も同じなんだけど。

 これだけお互いに牽制しあっていて、それでもギリギリ戦争がはじまっていないのは、人間たちがギヨッド大橋からこっちには乗り込んできていないからだ。


「で、ですが陛下も卒業式に出席できないことをとても残念がっておいでした! このように、姫様の“写し絵”をたくさん撮ってくるようにと陛下から直々に命を受けましたから!」


 それで、バシャバシャ撮りまくってたのか。

 メリッサの個人的な趣味かと思っていた。

 ……いや、それもありそうだけど。


「あんまり気にしないでってお父様に伝えておいて」

「かしこまりました」


 聞き分けの良い娘をアピールしているうちにキャリッジは城に到着した。


「ずいぶんと遅かったですわねアリステルさん!」


 なぜかそこに、縦ロールが待ち構えていた。


「ドロシー、なんでいんの?」

「ふっ……そんなの決まっていますわ。あなたとの決着をつけるためですわ!」


 またそれか……。

 このドリフ(ドリルエルフの略)、相変わらず何かにつけては私に突っかかってくる。

 何度も返り討ちにあっているというのにまったく懲りないドリフである。

 しかし、ドロシーもこの七年で研鑽を重ねて魔法の腕は大人にも負けないものになっていて、早くも天才の名をほしいままにしているらしい。

 ついでに頭のドリル(縦ロール)も年を経るごとにどんどんゴージャスになっている。

 今や縦ロールなんだかライオンのたてがみなんだかわからん始末だ。


「勝負とかそういうのはいいから。ドロシーが城に来たってことはなんかあるんでしょ」

「わたくしの宣戦布告を軽く流さないでくださいませ!」


 うーん、めんどくさい。

 こっちはこれからやることがたんまりあるのに。


「やっと帰ってきたね、姫様」


 とかなんとかやってると、ドロシーの背後からもう一人の幼馴染みが現れる。


「セイヤ……なんであんたまでいるのよ」

「あはぁ! 相変わらずつれないなぁ、ボクのクロユリちゃんは」


 誰がクロユリちゃんだ。

 この、妙にナルシーなやつは豚鼻族(イディク)の氏族長の息子だ。

 ちなみに豚鼻族(イディク)は女子が生まれにくいため、他氏族から嫁をもらうことが多い。

 そのために女性を喜ばせるありとあらゆる技術を磨き上げてきた種族だ。

 だからなのか、みーんなホストみたいなヒトばかりなのだ。


「ていうか、クロユリの花言葉は『呪い』でしょーが。ぶっ飛ばすわよ」

「おっと、怖い怖い。でも、怒った顔もキュートだネ」


 やかましいわ。

 ご覧の通りの調子で、ドロシーとセイヤには初等学院時代にずーっと付きまとわれてきた。

 まあ、私は三年で飛び級してさっさといなくなっちゃったんだけど。

 それでも何かにつけては私に会いに来る。幼馴染みというか腐れ縁だ。


「で、ほんとに何しに来たわけ?」

「もちろん卒業のお祝いを言いに来たのさ」

「ふん。わたくしは違いますけど!」


 なーんだ。そういうことだったのか。

 二人とも氏族長の子供だから何かと忙しいはずなのに、わざわざ会いに来てくれるなんて……うん。ちょっと嬉しいじゃないか。

 それに、良いことを思いついちゃった。


「いいわ。お茶くらいご馳走してあげる」

「魔界のプリンセス直々のご招待とは、光栄だネ」

「わ、わたくしは別に嬉しくなんか……」


 はいはいツンデレツンデレ。

ちなみに、セイヤくんはドロシーのことを「マーガレットちゃん」と呼びます。

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