表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正しい勇者の倒し方  作者: 冷田和布
魔族のお姫様
32/131

幕間1-3 メリッサ先生の魔法講座(脱線編)

「ねえ、メリッサ。まほうのなまえってどうやって決めてるの?」

 

 私の胸にわいたそんな素朴な疑問を、何の気なしにメリッサに聞いてみた。

 するとメリッサは少し躊躇った後で


「一言で申しますと……“趣味”です」


 いや、趣味て……。

 思わずツッコミを入れたくなるのを私は我慢した。


「そんなきめかたでいいの……?」

「重要なのは構築や集中ですので、魔法の名前自体に制約はありません。しいて言えば使う本人が一番イメージしやすいものが良いでしょう」

「つまり、“かけごえ”みたいなものなわけね」

「そう言い切られると身も蓋もありませんが……おおむねその通りです」


 なるほど。

 通りで、魔法の名称に統一感がないわけだ。

 転生者で元日本人のスキルニールさんは<肉体操作(シェイプシフト)>なんていう割と硬派な名前だった。

 それに比べて、メリッサが使う魔法は<黒き巨人の剣(レーヴァテイン)>だとか<霜巨人(ベルゲミル)の足音(・スティンプ)>だとかおとぎ話の要素が含まれていることが多い。


「なるほど、メリッサのあれもしゅみってわけね」

「そ、そうではありません! ……いえ、確かに好んではいますが、名付けたのは私ではありません」


 そこから、話は魔法開発の歴史にシフトしていった。

 メリッサが言うには、まず『古来魔法』と呼ばれる一番最初に作られた魔法がすべての始まりだという。


「『古来魔法』は初代魔王アリカトルヤ様の時代に作られた最も古い魔法になります。当時の魔界は今とは比べものにならないくらい危険な土地で、加えて人間たちとの戦いも激化していました。そのため魔法も攻撃的かつ広範囲に影響を及ぼすものが多かったのです。しかし、時代が進むにつれ『古来魔法』の用途は少なくなっていきました」

「へいわになったってことね」

「その通りです。『古来魔法』は半ばその役目を終え、文献や一部の研究者のみに伝えられるものになっていきました。その代わりに増えたのが『生活魔法』や『構成魔法』です」


 生活魔法はなんとなくわかるけど、構成魔法ってなんだろ。

 そんな私の疑問を察してか、メリッサは続ける。


「生活魔法はご存じの通り、生活に役立つものです。<光源作成>や<蒸気>などですね。『構成魔法』とは、魔道具を作るための魔法です。銀盤や銅盤に刻む源理のルーンを構成するものでそれ自体はほとんど役に立ちません」


 電化製品の部品になって基板とかそういうものを作る魔法ってところか。


「とはいえ、戦闘に用いる魔法が完全に廃れたわけではありませんでした。魔物が絶えることはなく人間たちとの関係も決して良好とは言えません。魔族は常に戦いに備える必要がありました。そうして時代は『固有魔法』の時代に移り変わっていったのです!」


 なんかメリッサが興奮しはじめたんですけど!


「強力すぎる『古来魔法』を自分にとって使いやすいものにカスタマイズするのはもちろん、なにより魔法はその者を映す鏡。『固有魔法』によって“自分らしさ”を表現する時代がやってきたのす!」


 自分らしさを表現って……ファッション雑誌の謳い文句か。

 いや、でも確かに自己紹介する時に軽く魔法で演出するヒトを見かけたことはある。

 お城の中だと暗殺とかの危険があるので無闇に魔法を使うのは禁止されてるみたいだけど。


「『固有魔法』は、より個性に特化した魔法です。強力なものはその家系で脈々と受け継がれるようになったりもしました。いわゆる『伝統魔法』というものですね」

「あ、それならしってる」


 ニコラスの家系では代々<盾>に関する魔法を好んで使うって聞いたことがある。

 お母様の家系は確か<火>でいろんな武器を作るっていうのだったと思う。

 とんでもなく長い火の鞭で魔物の大群をなぎ払ったとかなんとか

 お母様の武器が『鞭』って……あまりにも似合い過ぎだろうと心の中でツッコミを入れた覚えがある。

 ついでに私は『鞭』は止めておこうとも心に誓った。


「『固有魔法』は今なお主流となっていますが、誰もが上手くカスタマイズできるわけではありません。そこで現れたのが『作魔家(コンポーザー)』という存在です」

「こんぽーざー?」

「個人の依頼でその人に合った魔法をカスタムしてくれるという仕事です。初期はお金持ちの家に専属の『作魔家』がついていたそうです。何代か前の魔王様は専属の『作魔家』を十五人も雇っていたとか」


 はー、魔法も外部委託する時代がやってきたってわけね。


「そうして次々に偉大な『作魔家』が現れましたが、やはり誰かの“専属”でしたので世に名を馳せるという者はほとんどいませんでした。そんな中、一風代わった『作魔家』が現れたのです。彼の名はシャルル・ワース。彼もまた当初は個人に雇われる『作魔家』でしたが、本来秘するのが常の『固有魔法』を大々的に世間に発表したのです。この行為は業界に革命をもたらしました」


 メリッサの解説にさらに熱が入る。

 ていうか魔法の『業界』ってなんだ。


「詩人でもあり芸術家でもあったシャルル・ワースのカスタマイズした魔法は人々を魅了しました。魔族たちはこぞって彼の魔法を真似するようになり、一大ブームを巻き起こしたのです。それに追随するかのように多くの『作魔家』たちが自らの魔法を世に発表していきました。されにシャルルは自ら工房を立ち上げ、次々に新作魔法や魔道具を発表するようになりました。これもまた他の『作魔家』たちが真似をするようになり多くの『魔法工房ブランド』が出現することになったのです」


 ブランドて……。

 さすがは魔法社会と関心するべきなんだろうか。


「ここで魔法の名称についての話に戻るのですが」

「そういえばそっからだったわね」


 メリッサの解説に熱が入りすぎて忘れてたけど。


「<霜巨人の足音>などは、もともとは<霜踏み>や<氷結>などシンプルな名称でしたがシャルル・ワースによって改良され発表される際にそう名付けられたそうです。シャルルは伝承や寓話から発想を得ることが多かったようですね」


 なるほど。だから“趣味”ってわけね。


「これらの“名付け”の影響は現在も残っており、主流の魔法はシャルルやその他の著名な工房が付けた名前がそのまま使われていたりします」

「そっか、つまりメリッサもそのシャルルってヒトのファンなわけね」

「い、いえ、私はただ卒業論文の研究課題がシャルル・ワースだっただけで……」


 とか言いつつ、いつもけっこうノリノリで口にしているのできっと相当なファンと見た。

 魔法の名前かぁ……。

 いつか私が独自の魔法を開発した時には思いっきりカッコイイのをつけよう。

 恥ずかしそうにモニョモニョするメリッサを横目に、そんなことを妄想するのだった。

第一章ひとまずここまでです。

なるべく早く二章をはじめたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ